令和ファシズム論

令和ファシズム論

出版社: 筑摩書房
著者: 井手 英策
  • 極端な主張で人々を煽る〈身近な指導者〉たち。〈ぼんやりとした不安〉に襲われる私たち。〈ラディカルな中庸〉を提唱した希望の書!
  • 極端な主張で人々を引き寄せる〈身近な指導者〉たち。〈ぼんやりとした不安〉に襲われる私たち。最後の防波堤として〈ラディカルな中庸〉を提唱した希望の書!
  • 生活苦にあえぎ、〈ぼんやりとした不安〉におそわれる私たち。
    シンプルで極端な主張をSNSなどでくり広げ、
    人びとを煽り立てる〈身近な指導者〉たち。
    社会が分断され、民主主義が衰弱するなか、
    肯定的未来への道を切りひらく入魂の書!
    ===
    令和の日本社会をおおう〈ぼんやりとした不安〉。その輪郭を描き出すべく、
    「ファシズム前夜」を経験した、かつての日本とドイツに光を当て、
    両国がファシズムに屈した背景を、財政史という観点から分析。
    そこで得た基準をもちいて、現代日本の危機的状況を浮かび上がらせていく。
    多くの人が生活不安をかかえるなか、「人気取り」の政策案が打ち出され、
    「極端」な議論を展開する〈小さな権威主義〉が力を得ていく──。
    居場所を追われる「自由と民主主義」をまもるための立脚点を探求し、
    肯定的未来への道を切りひらく渾身の書!
  • はじめに 
    私だけが不安なのだろうか?/財政史というメスで社会を解剖する/「ポピュリズム」で終わらせない/日本社会は右傾化したのか/同時におきていた左傾化/評価するための基準を/伝統主義Aと伝統主義Bのたたかい/肯定的な未来に居場所を
    第一章 歴史の転換点ではなにがおきるのか?
    1 混同されるファシズムと全体主義
    ファシズムという言葉/混同されたファシズムと全体主義/異なるものを等しくあつかう/「あいつ」と「私たち」/現実味のないファシズム/すべてがかわってしまう/ファシズム的な状況について考える
    2 家族のふたつの顔――時代の方向感覚をもつ
    社会保障の発祥の国・アメリカ/国民の家・スウェーデン/もうひとつの顔/「私たちの必要」という財政の本質/どこにいるのか どこに向かうのか
    第二章 昭和恐慌からの脱出と高橋是清の苦闘
    1 昭和恐慌の衝撃と不安定化する社会
    蔵相・井上準之助の理論/不幸が重なった金解禁/疲弊した農村と都市の人びと/民主主義と社会主義への反動/陸軍青年将校たちの憤慨
    2 積極財政への転換
    高橋財政の独創性/財政と金融の一体化、錯綜する利害関係
    3 決定権限の集中と政局にあけくれる人びと
    日本財政の最後の守護者/政争を繰りかえした政友会と民政党/皇道派と統制派の対立/軍部の分断、政党との連携/内閣機能の強化/高橋のリーダーシップがまねいた軍部の怨念/ある政治家に任せる、ということ
    第三章ファシズムへの道程でなにがおきたのか?
    1 不安定化する経済、貧弱な生活保障
    井上はなぜ理論に固執したのか/高橋財政の評価/所得と地域間、ふたつの格差/人びとの生活をどのように保障するのか/日本社会の根底にあった「惰民観」
    2 民主主義の後退か? 不自由への逃避か?
    「呉越同舟」という分断の論理/社会保障をめぐる女性の運動/高橋と社大党の共通性/批判より対案、政策よりも権力/力を発揮した官製の国民運動/日本精神へと接続した共同体主義/都市部における労働運動の状況/「ファシズム前夜」におきていたこと
    第四章 ファシズムの条件をさぐる――ドイツとの対比から
    1 第一次世界大戦の敗北がもたらしたもの
    ヴェルサイユの屈辱とハイパーインフレーション/一党独裁を成し遂げたドイツ/一網打尽にされた中間団体
    2 雇用創出から軍備拡張へ
    恐慌からの脱出と緊縮財政/中央銀行にたよった複雑な財政運営/中央銀行への依存とその経済的、政治的、社会的合理性/財政の「質」から「量」への転換/充実していたドイツの社会保障/分断の道具としての財政
    3 憎しみが憎しみをよぶ呉越同舟の政治
    社会民主党と共産党の対立/ヒンデンブルクと大統領緊急令/シュライヒャーの暗躍/パーペンの意趣返し/ファシズムという均衡
    第五章 強まる将来不安、崩れ落ちる民主主義
    1 経済の衰退と社会の分断
    疲弊する中間層/「分断社会」という言葉の意味を考える/社会保障の根底にあった通俗道徳/つよまる憎しみと嫉妬
    2 崩壊する財政規律、よわりゆく予算統制
    中央銀行への依存/高橋財政と現代の決定的なちがい/防衛費とインフレ対策/普遍主義の広がりをどのように評価するか/「一〇三万円の壁」から本当の問いを透視する
    3 あとずさりする財政民主主義
    予備費を使いきり、穴うめする/見えない債務、見えない基金/やせおとろえていく「自治」/MMTが見落としているもの/誤解される財政民主主義
    4 混迷をふかめる政治と社会
    「野党共闘」が意味するもの/〈小さな権威主義〉の登場/内閣人事局と政治的リーダーシップ/参加と強制の分岐点/中庸の道をさがしつづける努力/問題の複合性と私たちの態度決定
    終章 エクストリーミズムをのりこえる
    「ファシズム前夜」からみた日本のいま/負の均衡としての〈ぼんやりとした不安〉/参加からつぶやきへ/広がるエクストリーミズム/ポピュリズムとエクストリーミズムの結合/自由と民主主義を調和させる/財政の危機、社会の危機/互酬と再分配からなる財政/なぜ税金は重要なのか/ライフセキュリティをなぜ提唱したのか/高橋是清の復活か、社会を成長させる公共性の再生か

    あとがき

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