マテリアル・ガールズ

マテリアル・ガールズ

出版社: 慶應義塾大学出版会
著者: キャスリン・ストック、中里見博、千田有紀
  • ジェンダーアイデンティティとは何か
    混迷をきわめるジェンダー問題を分析し、 平等な社会のための現実的な解決策を提示する
    多様な「性」を尊重する社会づくりが世界的に進むなかで、それに合わせた法制度などが整備されつつある。その一方で、複雑化した「ジェンダー概念」への理解が追いつかず、社会的混乱を来してもいる。本書では、生物学的性別よりもジェンダーを優先する、いわゆる「ジェンダーアイデンティティ理論」が生まれた思想的背景を、ボーヴォワール、ジュディス・バトラーなどを振り返りながら丁寧に説明し、「ジェンダーアイデンティティ」とは何かを明らかにする。さらに、女性専用スペース、医療、政治、データ収集など、さまざまな文脈において生物学的性別の重要性を提示することを通して、「誰もが生きやすい社会」の実現に向けた現実的な解決を試みる。
  • 日本語版への序文
    序 章
    第1章 ジェンダーアイデンティティの簡潔な歴史
    局面1 ボーヴォワールが「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」と言った 
    局面2 マネーとストーラーが「ジェンダーアイデンティティ」概念を導入した
    局面3 アン・ファウスト=スターリングが、生物学的な性別は「連続体」だと主張した
    局面4 バトラーが「ジェンダーはパフォーマンスである」と説いた
    局面5 ジュリア・セラーノが「ジェンダーアイデンティティが人を女性や男性にする」と言った
    局面6 ジョグジャカルタ原則が、ジェンダーアイデンティティを人権として認めることを推奨した
    局面7 「ターフ」という概念が発明された
    局面8 アイデンティティの爆発的増殖
    「ジェンダー」の持つさまざまな意味
    議論を擁護するために
    第2章 性別とは何か
    性別とは何か
    普通、人の染色体が何なのか、外性器がどんな形をしているのかを知らない
    性分化が異なる人がいる
    性別は社会的に構築されている①
    性別は社会的に構築されている②
    性別は社会的に構築されている③
    「自然なもの」と「人工的なものとの対立は存在しない
    結 論

    第3章 なぜ性別が重要なのか
    医 療
    スポーツ
    性的指向
    異性愛の社会的影響
    競い合わせるべきではない
    第4章 ジェンダーアイデンティティとは何か
    ジェンダーアイデンティティとトランスでない人びと
     「スティック・オブ・ロック」モデル
    医療モデル
    クィア理論モデル
     「同一化(アイデンティフィケーション)」モデル
    同一化モデルのそのほかの帰結

    第5章 何が人を女性にするのか
    概念分析
    概念としての〈女性〉の機能
    ジェンダーアイデンティティとしての〈女性〉
    利益のヒエラルキー?
    社会的役割としての〈女性〉
    WASを支持する根拠の問題点
    WASに反対する追加的な論点
    第6章 フィクションへの没入
    法的フィクション
    フィクションと現実
    没入とは何か
    フィクションに没入することのメリット
    個人レベルでの没入のリスク
    制度レベルでの没入のリスクーー他人への没入の強制
    性別不合な言語がもたらすリスク
    私自身の代名詞の使い方

    第7章 なぜこんな事態にまで至ったのか
    ゲイやトランスへの偏見の歴史
    トランス活動家のプロパガンダとその効果
    客体化と「トランス女性は女性である」の関係
    客体化とオートガイネフィリア
    第8章 今後のよりよい運動に向けて
    もっと非二元的(ノンバイナリー)であれ
    運動の主題を変えるな
    よりインターセクショナルであれ
    アカデミックな(高踏)理論をより少なく、アカデミックなデータをより多く
    謝辞
    解説(千田有紀)
    訳者あとがき

    索引

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