女の子のための西洋哲学入門
出版社: フィルムアート社
- これまでの「男性のための哲学」ではない、もうひとつの哲学へ。
「女の子」が成長し大人になっていく過程で考えるべき哲学の問いを解きほぐし、
「自由に思考を広げること」、そして「自分の力で考えながら生きること」の楽しさとかけがえのなさを説く。
女性哲学者たちがいざなう、かつてない哲学入門・画期的エンパワメントの書!
あなたは、哲学の歴史のなかで、女性の哲学者の名前を10人挙げられますか? 3人ならどうでしょう? ほとんどの人にとって、それはむずかしいことなのではないでしょうか。
女性は長い間、哲学の分野で疎外されてきました。なぜなら、彼女たちの貢献は歴史的に男性たちの業績として扱われたり、あたかも貢献など存在しないかのように葬り去られたりしてきたからです。
本書は、女性哲学者たちが「自分が18歳から20歳くらいだった頃を振り返り、自分自身の疑問を見つけ、知的に成長しつつあるその時期に、どんな本があったらよかったか、そしてその本にどんな章があったらよかったか」というテーマで執筆した、新しい「哲学への扉」とでもいうべき本です。
女の子や若い女性を哲学的な思考へと招き入れ、哲学的に物事を考えてみるよう勇気づけるものです。
哲学に触れ始めたばかりのひとにもおすすめできるこの本は、哲学的な問いとは何か、そしてそれが女の子や女性の生活や人生にどのように当てはまるのか、幅広い視点と思考を広げていくヒントを提供します。
本書では、哲学のおもな分野(形而上学、認識論、社会哲学・政治哲学、倫理学)が扱われます。どこからでも読める章立てなので、構える必要はありません。ジェンダーと哲学の交差点について興味のあるひとにとって必ず役立つ1冊となるでしょう。
例えば、アイデンティティや自律といった自己のあり方、科学や芸術や疑いといった知のあり方、人種やジェンダーといった社会構造や権力関係が私たちの現実をどのように形づくるのか、そして、怒りや共感や勇気などの感情と倫理の関わりを現実の問題の中でどのように考えていけるのか。
2020年代の今を生きる私たちにとっても切実で、好奇心を刺激する哲学的なテーマを、生き生きと魅力的な文体で、親しみやすく説いていきます。
いままさに女の子であるあなた、あの頃女の子だったあなた、これから女の子になっていくあなた、女の子と見なされたことのあるあなた、女の子のことをもっと理解したいあなたへ──すべてのひとを歓迎する、私たちのための哲学への招待です。 - 監訳者まえがき
謝辞
プロローグ ペルセポネー──あなたへの招待状 メリッサ・M・シュー/西條玲奈訳
はじめに メリッサ・M・シュー&キンバリー・K・ガーチャー/三木那由他訳
第Ⅰ部 自己
第1章 アイデンティティ(同一性)──世界内存在と生成 ミーナ・ダンダ/酒井麻依子訳
第2章 自律──自分に正直でいること セレン・J・カダー/筒井晴香訳
第3章 プライド──徳と悪徳の複雑さ クラウディア・ミルズ/飯塚理恵訳
第4章 問い──哲学の核心 メリッサ・M・シュー/横田祐美子訳
第5章 自己知──反省の重要性 カレン・ストール/安倍里美訳
第Ⅱ部 知ること
第6章 論理学──フェミニストアプローチ ジリアン・ラッセル/山森真衣子訳
第7章 疑い──認識と懐疑主義 ジュリアン・チャン/村上祐子訳
第8章 科学──客観性の正体を暴く サブリナ・E・スミス/村上祐子訳
第9章 技術──経験と媒介された現実 ロビン・L・ゼブロフスキー/西條玲奈訳
第10章 芸術──見ること、考えること、制作すること パトリシア・M・ロック/青田麻未訳
第Ⅲ部 社会構造と権力関係
第11章 信用性──疑いに抵抗し、知識を捉え直す モニカ・C・プール/木下頌子訳
第12章 言語──コミュニケーションでの集中攻撃(パワープレイ) エリザベス・キャンプ/三木那由他訳
第13章 人種──「人間」という概念に見られる存在論上の危険性 シャノン・ウィナブスト/権瞳訳
第14章 ジェンダー──二分法とその先に向けて シャーロット・ウィット/清水晶子訳
第15章 承認──クィア・エイリアン・ミックスの意識を生きる シャンティ・チュウ/清水晶子訳
第Ⅳ部 現実の中で考える
第16章 怒り──抵抗の身振りとしてメドゥーサ話法を利用する ミーシャ・チェリー/西條玲奈訳
第17章 コンシャスネス・レイジング(意識高揚)──社会集団と社会変革 タバサ・レゲット/木下頌子訳
第18章 ツェデク──なすべきことをする デヴォラ・シャピロ/鬼頭葉子訳
第19章 共感──人間と人間以外の動物との絡み合う関係性 ローリー・グルーエン/鬼頭葉子訳
第20章 勇気──作動する改善説 キンバリー・K・ガーチャー/酒井麻依子訳
監訳者あとがき
著者紹介
訳者紹介
索引