感情をめぐる法哲学と法思想

感情をめぐる法哲学と法思想

出版社: 信山社出版
著者: 橋本 祐子、菅原 寧格
  • わが国気鋭の法哲学者が、法理論、思想源流、思想展開の3つの視覚をとおして法と感情との関わり合い、あり方を問う。
  • わが国気鋭の法哲学者が、法理論、思想源流、思想展開の3つの視覚をとおして法と感情との関わり合い、あり方を問う。
  • ◆「法と感情」研究の礎となる基本文献◆
    果たして、法と感情の関係をめぐる新たな解釈を示すことは可能なのか――。法・法学にとって感情は望ましくないもの、有害でさえあるものとの理解が存在する中、わが国気鋭の法哲学者が、法理論、思想源流、思想展開の3つの視覚をとおして法と感情との関わり合い、あり方を問う。2021年日本法哲学会学術大会での議論をベースとしつつ、新たな論考も加える。「法と感情」研究の礎となる基本文献。
  • 『感情をめぐる法哲学と法思想』
      橋本祐子(龍谷大学教授)・菅原寧格(北海学園大学教授) 編
    【目 次】
    ◆序 章 法と感情のあいだ──問題の所在〔菅原寧格〕
     一 問題の所在
     二 問題の枠組み
     三 本書における「法と感情」研究をめぐる展開
     四 再び問題の所在
    ◆第Ⅰ部 「法と感情」をめぐる法理論◆
    ◆第一章 「法と感情」研究に関する覚え書き〔橋本祐子〕
     一 はじめに
     二 「法と感情」研究とは何か
      1 「感情」について/2 「法と感情」研究の特徴/3 「法と感情」研究の動向/4 「法と感情」研究の分類/5 日本における「法と感情」研究の受容
     三 「法と感情」研究の法哲学的意義
     四 むすびにかえて
    ◆第二章 裁判を支える感情〔椎名智彦〕
     一 法における感情──課題の整理
      1 追放言説の虚実/2 本稿の課題/3 立場と構成
     二 裁判における感情
      1 〈裁判官の冷厳性〉論の射程/2 〈法の支配〉の条件としての感情
     三 感情応答言説の問題
      1 序/2 谷口『裁判について考える』(一九八九)/3 検 討
     四 結びにかえて
    ◆第三章 〝的はずれな妬み〟による差別・憎悪──と、切り捨てて済まない問題として〔吉岡剛彦〕
     一 はじめに──本稿の問題意識
     二 拡がるマイノリティ攻撃──在日コリアン・女性運動・障害者
      1 在日コリアンに対するヘイトスピーチ/2 女性運動に対するバックラッシュ/3 障害者に対するバッシング
     三 マイノリティの〝特権〟に対する〈妬み〉
      1 「在日特権」という悪意のフィクション/2 ハンセン病「黒川温泉事件」と税金をからめた特権視/3 マイノリティの〝特権〟に対する〈妬み〉/4 正確な事実認識にもとづかない〝的はずれな妬み〟
     四 名づけられていないマイノリティ性をどう手当てするか──「弱者の男性」論をめぐって
      1 〝女性専用車両は男性差別〟になんとなく共感する雰囲気/2 「弱者男性」論/3 〝的はずれ〟とばかりはいえない(むすびにかえて)
    ◆第四章 羨望と分配的正義についての序論的考察〔福原明雄〕
     一 はじめに──リバタリアニズムと感情の距離
     二 羨望とは何か
     三 「平等は羨望の隠れ蓑に過ぎない」をめぐって
     四 ロールズにおける羨望と対処策
     五 ロールズの対処は成功したのか
     六 多様化と分散の方向へ
     七 結びにかえて
    ◆第Ⅱ部 「法と感情」をめぐる思想源流◆
    ◆第五章 法律は感情を欠く知性である──アリストテレス『政治学』第三巻第十六章における「怒り」を素材にして〔松島裕一〕
     一 はじめに
     二 『政治学』第三巻第十六章のラテン語訳
     三 『ニコマコス倫理学』第二巻第五章のラテン語訳
     四 『政治学』第三巻第十六章のラテン語註解
     五 結びにかえて
    ◆第六章 法哲学における道徳感情論の意義──スコットランド啓蒙思想からのリーガルマインド批判〔中村隆文〕
     一 はじめに
     二 理性主義の歴史
     三 現代的な法哲学論争
     四 スコットランド法哲学の知的伝統
     五 正義と効用との両立可能性
     六 自然主義批判と道徳感情論
     七 共感の限界について
     八 市民感覚の導入とコンヴェンションの再生
    ◆第七章 スミスにおける「感情」と「正義」〔太子堂正称〕
     一 はじめに
     二 『道徳感情論』を巡る文脈
      1 「富と徳」問題/2 ハチスンの道徳感覚論/3 ヒュームのハチスン批判/4 スミスの独自の立場/5 フランス思想との関係
     三 『道徳感情論』とスミスにおける「正義」
      1 共感と公平な観察者/2 スミスの「正義」概念/3 ヒューム共感論との相違/4 文明社会(civilized society)の人間像
     四 スミスの『法学講義』
      1 『法学講義』の特徴/2 スミスの歴史法学の意義/3 「統治の原理」と「道徳感情の腐敗」への危惧
     五 終わりに
    ◆第八章 J・S・ミルと〈感情〉〔村林聖子〕
     一 〈感情〉との戦い
     二 思考枠組としての『論理学体系』
      1 事実と科学/2 社会状態と国民性格/3 ポリティカル・エソロジーと人為(アート)
     三 思考枠組と『女性の隷従』
     四 おわりに
    ◆第Ⅲ部 「法と感情」をめぐる思想展開◆
    ◆第九章 カントにおける法と感情──尊敬の感情と人間性の権利〔城下健太郎〕
     一 はじめに
     二 前批判期の道徳感情論と人間性の権利
      1 前批判期における道徳感情としての尊敬/2 前批判期における人間性の権利
     三 批判期実践哲学における尊敬の感情と人間性の尊厳
      1 「法則に対する尊敬」/2 人間性に対する尊敬
     四 『法論』における人間性の権利と法感情
      1 人間性の権利/2 家族感情/3 刑罰感情
     五 おわりに
    ◆第一〇章 自由法論と法感情〔菊池亨輔〕
     一 はじめに
     二 概念整理と背景
      1 法感情の概念/2 自由法論の基本的テーゼ/3 感情法学に対する批判
     三 自由法論者における法感情と感情
      1 カントロヴィッツ/2 エールリッヒ
     四 フックスにおける法感情と感情
      1 法感情への準拠/2 理想の裁判と三つの方法/3 感情法学・法感情・社会学的法学/4 感情へのまなざし
     五 法感情の時代
      1 概念法学批判の合言葉/2 「法と感情」研究の今後に向けて
    ◆第一一章 「法感情」論がもたらす視点〔菅原寧格〕
     一 はじめに
     二 「法感情」論としての『権利のための闘争』
     三 ラートブルフの「法感情」論
     四 「権利感覚」としての「法感情」と「良心」
     五 むすびに代えて
    ◆第一二章 アーレントにおける法と感情──憤りについて〔長谷川陽子〕
     一 はじめに
     二 感情とは何か
     三 革命と感情
     四 理性的な感情
     五 法と憤り
     六 おわりに
    ・あとがき

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