日本の家族のすがた
出版社: 青弓社
- 日本で近代家族が普及した1950年代から70年代、それが成熟した80年代、そして大きな変革があった90年代以降――戦後日本の家族関係はどのように形成され維持されてきたのか。現在の日本で、家族生活はどのように営まれているのか。
本書では、日本家族社会学会が実施した大規模なインタビュー調査(NFRJ18質的調査)から得られた家族にまつわる豊富な語りやデータに基づき、日本の家族のすがたを多角的に浮かび上がらせる。
幅広い世代の語りを「結婚と離婚」「子育てと家事」「中高年期のライフステージ」という視点から丁寧に分析して、夫婦間の葛藤、離婚後の実際、子育ての関わり方、親やきょうだいとの距離感など、いまの家族生活のリアルを照らし出す。 - 序 章 NFRJ18質的調査と戦後日本の家族変動 木戸 功
1 研究プロジェクトと調査の概要
2 日本社会の家族変動
第1部 家族になる/家族と別れる
第1章 結婚の選択における親の影響 齋藤直子
1 親が結婚に「口をはさむ」ことは当たり前か
2 結婚における親の影響
3 親による結婚の期待
4 親や周囲が結婚のタイミングを後押しする
5 親とカップルの関係性のこじれ
6 男性の経済的不安定さに対する懸念
7 結婚差別
第2章 妊娠先行型結婚の語りにみる世代差 永田夏来
1 一九九〇年代から二〇〇〇年代初頭――妊娠先行型結婚の過渡期
2 二〇〇〇年以降――妊娠先行型結婚の安定期
第3章 離婚の語りにみる日本夫婦の親密性 大森美佐
1 調査協力者の紹介
2 離婚経験の語りと離婚への意味づけ
第4章 離別女性の生活再建――サポートネットワークを中心に 安藤 藍
1 離婚時に子どもはおらず、再婚していないケース
2 離婚時に子どもがいて、再婚していないケース
3 離婚時に子どもがいて、再婚したケース
第2部 子どもを育てる/家事をする
第5章 世代間比較の語りからみる親であるという経験 松木洋人
1 子どもの意思の尊重と親による教育的な関わり
2 教育費の支出と「ノーマルな子ども期」を提供する責任
第6章 夫の家事・子育てをめぐる妻のジレンマ 鈴木富美子
1 現状を受け入れて、何とかやっているケース
2 夫の関わり方を受け入れられず、夫への気持ちが冷めてしまったケース
3 家事・子育てをめぐる夫との関係性が変わる兆しがみえるケース
第7章 家事に向き合う男性の意識――損得や快苦や繁閑とは異なる家事の規定要因 須長史生
1 男性の家事参加をめぐる状況
2 インタビュー対象者について
3 インタビューの結果
4 思考の転換・きっかけのスイッチ
第8章 子育て主婦とキャリアの見通し――中断から再就職の間で 里村和歌子
1 そこそこ働く
2 家族プランの優先
3 仕事をしていないことの負い目
4 社会から取り残されていく感じ
5 パートという最適解
6 新自由主義と子育て主婦
第9章 家族は余暇をどう過ごしているのか――What game shall we play today? 戸江哲理
1 余暇から家族を考える
2 家族にとっての余暇の過ごし方の意義
3 家族の余暇を分類する
4 家族の年月とともに移ろう余暇の過ごし方
5 親子で受け継がれる余暇の過ごし方
6 人生を楽しむ・家族で楽しむ
第3部 家族と老いる/家族を思う
第10章 成人後の親子関係――実の親・義理の親と関係が「よくない」人の語りから 田中慶子
1 成人後の親子関係への注目
2 先行研究
3 成人子の語りから
4 親子関係が「よくない」ことを語ること
第11章 介護・相続にみる中年期以降のきょうだい関係とアンビバレンス 吉原千賀
1 アンビバレンスの顕在化と介護・相続
2 介護・相続のなかのアンビバレンスとその対処
3 次世代のきょうだい関係のために
第12章 「仕事を辞めること」の語りと夫婦関係 水嶋陽子
1 退職をめぐる相互作用過程へのアプローチ
2 「仕事を辞めること」をめぐる語り
3 退職後の活動からみた夫婦関係
第13章 高齢期の人生回顧――団塊世代は職業・家族をどのように振り返るのか 笠原良太
1 問題設定
2 分析視角・方法・データ
3 定年まで勤め上げた/勤め上げなかった経験の意味――団塊世代男性の人生回顧
4 専業主婦/就業継続の意味と夫婦での大病経験――団塊世代女性の人生回顧
結びにかえて 木戸 功/松木洋人/戸江哲理