子どもはいかにして文字を習得するのか
出版社: 北大路書房
- 保育者と共に進めてきた実証研究から、幼児期における「遊び」と「対話」を通した「文字習得」の在りようとその意義を探る。
- 遊びと対話の相互的な発展の先に浮かび上がる,文字と子どもの新たな関係――子どもの「声」を聴き取る人として保育者を位置づけ,「社会的関係の中で立ち上がる言葉」という側面から「文字習得」を再定位する。保育者と共に進めてきた実証研究から,幼児期における「文字習得」の在りようとその意味を探る。
- はしがき
初出一覧
序章 なぜ,今,幼児期の「文字」と「保育」を扱うのか
第1節 幼児期から開始されている文字習得
1. 文字習得からリテラシーへ
2. 幼児期の文字習得を問うにあたって―問題の設定
第2 節 幼児期の文字習得はいかに支えられ,価値づけられているか
1. 幼児期の文字習得を支える―国際動向
2. 幼児期の文字習得を支える―国内の動向
第3 節 幼児期の文字習得を支える保育実践における研究上の論点と方法論
1. 文字習得を発達から捉える
2. 文字習得を社会的関係から捉える
3. 文字習得を研究する―方法論的特徴
第4 節 保育実践を介した幼児期の文字習得の検討に向けて
1. 本書は何を論じるか
2. 本書の構成と特色
第1章 幼児期の文字習得をどのように捉えるか
第1 節 幼児における文字習得の実態把握に向けて
1. 幼児にとって「文字」とは
2. 文字使用への着目
第2 節 幼児はどのように文字を用いるか―絵本づくり活動を通じて
1. 絵本づくりにおける「文字」―調査課題の設定
2. どんな絵本をつくり,どのように語ったか―調査結果
3. 文字を「書けること」「使えること」は同じではない
第3 節 幼児の文字使用を支えるものは
1. 文字使用・文字表現の背景―保護者への質問紙から
2. 文字使用の背景に見えてきたものは―調査結果
3. 文字使用までの多様な道すじ
第4 節 伝え合う道具としての文字習得の分析へ
第2章 保育における「文字指導」の現状と課題
第1節 保育における文字指導の実態把握に向けて
1. 指導観への着目―カリキュラムの分析を超えて
2. 文字指導観を捉えるために―検討すべき仮説
第2節 保育における文字指導観
1. 文字指導観を捉える―調査の方法
2. 保育における文字指導観―「文字」をどのように意識しているか
3. 保育者・小学校教諭の一般的指導観
第3節 保育における文字指導観を支えるものは
1. 保育者の文字指導観の背景―経験・役割との関連
2. 一般的指導観の背景―保育者と小学校教諭の比較
3. 指導観の共有―施設内類似性の検討
4. 指導観の分析から見えること
第4節 保育における多様な「文字指導」を生む背景
第3章 もう一つの「文字指導」の探求―初期リテラシー発達を促すイングランドの実践
第1節 もう一つの「文字指導」へ
1. 「文字指導」から初期リテラシーへ―イングランドへの着目
2. イングランドの保育・教育制度
第2 節 イングランドの保育・教育実践から
1. イングランドの保育・教育実践を捉える
2. イングランドの保育・教育実践で取り組まれていたこと
第3 節 イングランドの保育・教育実践を支えるものは
1. 初期リテラシー発達を促す保育・教育実践の背景を探る―実践者へのインタビューから
2. イングランドの保育・教育実践の背景に見えてきたものは
第4 節 対話を通じて保障される初期リテラシー発達
1. 初期リテラシー発達を促す保育実践とその背景
2. 初期リテラシー発達を促す保育実践の発展に向けて
第4 章 リテラシーを育む保育の試み―伝え合いたい関係を土台とする書き言葉へ
第1節 初期リテラシー発達を促す保育実践の検討
1. 保育実践を通じて書き言葉を支える
2. やりとりと書き言葉を支える保育実践―ぶんつうプロジェクト概要
第2節 初期リテラシー発達を促す保育実践から見えてきたこと
1. どのような手紙が,どれだけ交わされたか
2. 子どもたちが見せた姿から―事例の検討
第3節 伝え合いたい関係からめばえる書き言葉
1. 幼児の文字使用は促進されたか
2. 文字表現のレパートリーの発達
3. 幼児期の初期リテラシー発達を促す保育実践の成立要件
第5章 リテラシーと「遊び」の関係―日本の保育実践の文脈をふまえて
第1節 残された問題は何か―「遊び」の検討
第2節 初期リテラシーと「遊び」
1. 「遊びを通しての学び」とは
2. 2つの「学び」という視点
3. 初期リテラシー発達を促す「遊び」の役割
第3節 「遊び」の発展から初期リテラシー発達を促す
1. 「遊び」の発展を支える条件
2. 「遊び」の発展を支える方法
第6章 伝え合いたくなる機会をつくり,育む―遊びの発展を支える方法の探究
第1節 遊びの発展を支えるにあたって
第2節 写真を用いた記録と評価方法の試行―しんぶんプロジェクト概要
第3節 遊びの発展を支えることから何が見えてきたか
1. 「しんぶん」導入直後の変化
2. 「しんぶん」から遊びのつながりへ
3. 「しんぶん」から対話の発展へ
第4節 遊びの発展を支える方法の探究
1. 遊びの発展を支える「しんぶん」の機能
2. 保育者にとっての「しんぶん」の実行可能性
3. 「しんぶん」のもつ意味と残された課題
第7章 伝え合いたくなる機会を広げる―遊びの発展・共有から豊かになるリテラシー
第1節 遊びの発展・共有から初期リテラシー発達へ―保護者とつなげ,やりとりを広げる
第2節 遊びの記録を保護者と共有する―しんぶんプロジェクト・プラス
第3節 遊びの共有から何がめばえたか
1. 「しんぶん」を介したコミュニケーション
2. 「しんぶん」による保護者の変化
第4節 遊びの発展・共有から初期リテラシー発達へ
1. 「しんぶん」は保護者に何をもたらしたか
2. 「しんぶん」は初期リテラシー発達に何をもたらしたか
3. 初期リテラシー発達を促す保育実践を目指して
終章 保育における社会的関係から立ち上がる言葉―全ての子どもの「声」と権利の実現へ
第1節 幼児期の文字習得とは何か,保育者には何ができるか
1. 保育実践を介した幼児期の文字習得の検討結果
2. 本書を通じてわかったこと
第2節 何のため,誰のための文字習得か
1. 幼児期から学童期を経て,生涯発達へ―「声」を発する主体として
2. 幼児の文字習得を支える保育者の役割の変化
3. 本書の知見のもつ意義と結論
第3節 これからの取り組みに向けて
1. 残された課題
2. 子どもの「声」と権利の実現へ
文献
あとがき
索引