
難民キャンプ駐在日記
出版社: 明石書店
- 1980年前後、UNHCR職員としてベトナム難民の援助にあたった著者の貴重な記録。ボートピープルの救出からキャンプの日常や難民の素顔まで、日本の「難民受け入れ元年」当時の実情を綴り、難民支援とは何かを見つめる。
- はしがき
プロローグ
1 赴任――国連職員として
赴任/当時の日記から
2 任地ソンクラー
ソンクラー難民キャンプ/キャンプの位置と建物/収容される人々/脱出した人々の移り変わり/難民船(ボート)・距離・季節風
第I部 インドシナ難民問題の発生と保護の国際的枠組み
1 難民と国際機関UNHCR
難民とは?/国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)/難民の保護/物質的援助/緊急援助/他の国連諸機関や民間ボランティア団体との提携
2 インドシナにおけるUNHCRの計画
3 タイ領内のインドシナ難民キャンプ
通常計画とカンボジア計画/インドシナ三国からの難民/トランジット・センター/リパトリエーション(本国帰還)キャンプ/静かなラオス人とカンボジア人のキャンプ、活発な動きがあるベトナム人キャンプ
4 ソンクラー以外のキャンプを訪ねて体験したこと
東北タイで見つけたラオスの難民少年/軽視される山地民難民の命
第Ⅱ部 震源地ベトナム
1 難民を生み出した、当時のベトナムという国
政治・軍事事情/経済事情/教育事情/宗教事情/華僑の事情
2 難民が語るベトナム事情
法の保護がない/徴兵拒否・脱走/仏教徒への迫害/カトリック教徒への迫害/悪化する経済情勢/混乱する農業/採算がとれない漁業/再教育キャンプ/学校は政治教育の場/追い出される華僑/他民族の脱出者/北ベトナム事情
第Ⅲ部 オデュッセイアの始まり
1 脱出行
海路での脱出/陸路での脱出/空路での脱出
2 死をもっても自由の海へ
脱出船の見つけ方/脱出の組織化/当局の罠わな/脱出失敗/脱出成功
3 海上での遭難と救出
海賊船/地獄の島/難民の証言/警備艇の提供/誘拐/国境なき医師団の医師/オイル・リグ(Oil Rig)
4 タイ漂着
上陸許可/マレーシアの強硬策とタイの不満/漂着するボートを求めて/バンコク宛の報告書/入国手続き/地方当局からの苦情と要請/海辺の災難/患者は病院へ/難民船の後始末
第Ⅳ部 キャンプ――各行為者が競うアリーナ
1 キャンプの内的な力学
主人と客人/UNHCRフィールド・オフィサー/リトル・ベトナム/キャンプ自治委員会と規則/UNHCRアシスタント/キャンプ自治委員会の組織/キャンプ・チーフの椅子をめぐって/共産主義者の割り出し/情報関係者の暗躍/汚職/ボランティア団体からの援助/トランジット的な性格
2 手ごわい県当局
県知事はキー・パーソン/非協力/滞る事務作業
3 アメリカ領事ヘンダーソン氏
気さくな同行者/難民は将来のアメリカ市民
4 口は禍のもと?――マス・メディアへの対応
白と黒の差/失敗
5 キャンプ警備詰所の警察官――治安と保護
朝市でのトラブル/キャンプ内のもめ事/粗末に扱われる難民の命/警察への「賄賂」/難民からのピンはね/難民と警官の友好関係
6 食料をめぐる攻防
コントラクターは本当に入札?/リィヤップおばさん/ブランク・ペーパー/念書/キャンプの中に貧富の格差はあまりない
7 民間ボランティア団体
民間ボランティア団体への事業の受け渡し/民間ボランティア団体の性格/望まれる、資金と専門性/ソンクラー・キャンプのボランティア団体/ボランティア活動の重複/新と旧のボラッグ/医療ボランティア団体は別格?/周辺住民とボランティア団体
8 日本人ボランティアとその独自性
JVCソンクラー支部/衛生問題での奮闘/多様なニーズ/ボランティアとは?
第Ⅴ部 不安と希望の再出発
1 定住の政策的意味
三つの解決法の適用/定住への準備作業/虚偽の申告と様々なトラブル/スポンサーシップ・ペーパー/各国代表団との面接/各国の許可規準/難民を運ぶ国際機関/出発前日の感謝パーティー/希望と不安への待合室――トランジット・センター
2 ベトナム難民のこころ
出発時の気持ち/海上での感情/第三国の定住先で/ベトナム、ベトナム
3 第三国での生活
受け入れたアメリカ社会の状況/日本での受け入れ状況/「難民問題」への指針
エピローグ
1 忘れ得ぬ人々とのこと
マスコミ関係者/アシスタントの重要性/UNHCRソンクラーのタイ人スタッフ/忙中閑あり/ナック・レンの家/うれしいこと/日本からの援助
2 難民と共に生きて――結語
あとがき
索引