
イエメンを知るための63章
出版社: 明石書店
- アラビア半島南西端のイエメンは、悠久の歴史を有しながらも、近代化の遅れや冷戦下の国家分断を経験し、2015年には内戦状態に。かつて「幸福のアラビア」と称され、今も「貧しいけれど由緒正しきアラブ」との誇りを抱く国イエメンの本当の姿を知ってほしいという執筆陣が、平和への願いを込めて語り上げる。
- はじめに
イエメン共和国地図
1946年頃のサナア旧市街地図
Ⅰ 内戦のリアリティ
第1章 サナア旧市街の空爆――終わらない非日常
第2章 後回しにできない教育支援――子どもの暮らしと諦めない人々
第3章 人道援助の立場から見たイエメンの医療――紛争が蝕む医療の表と裏
第4章 イエメンの食料事情――紛争による「飢餓」ではない現実
第5章 水・衛生分野の緊急人道支援とその課題――世界最悪の人道危機のいま
【コラム1】銃と祝福が交錯する国
【コラム2】地雷――イエメンに刻まれる消えない傷
【コラム3】若者が武器を置き希望と歩むための日本のNGOの挑戦
Ⅱ 多彩な地形とまち
第6章 サナア旧市街の建築――塔状住宅が林立する特異な都市景観
第7章 国際協力によるサナア旧市街の保全活動――保全を支える、見える・見えない支援
第8章 サナア旧市街の仕組み――部族社会の中の自治空間
第9章 古の都と雲の上のまち――マーリブとサナアの西方を行く
第10章 サアダとその周辺――北部イエメンの宗教拠点
第11章 緑のイエメン――南部山岳地域を行く
第12章 ティハーマ――紅海沿岸部を行く
第13章 ランボーが愛したアデン――国際貿易都市の復興
第14章 ハドラマウト――インド洋海域の一地方
第15章 ソコトラ島――インド洋の彼方にて
【コラム4】「海のシルクロード ハッピーアラビア」――38年前のイエメン・ロケ
Ⅲ 歴史と誇り
第16章 古代のイエメン――最も華があった時代
第17章 イエメンの初期イスラーム史――多様なアクターが織りなすイスラームとの邂逅
第18章 ザイド派――9世紀に登場した北部山岳・高原地域の覇者
第19章 ラスール朝とインド洋貿易――南部山岳地域・ティハーマのスンナ派王朝
第20章 イエメンの「近世」――つながる世界のただなかで
第21章 南北イエメンの成立――大英帝国とオスマン帝国
第22章 ムタワッキル王国――鎖国と自由イエメン人運動
第23章 アデン保護領――英国保護下における近代化の試み
Ⅳ 社会構造
第24章 部族民はどこにいるのか――部族民とそれ以外の人々
第25章 アフダームあるいはムハンマシーン――イエメンの被差別層
第26章 祈りのかたち――イエメンの宗教・宗派
第27章 ユダヤ教徒――終わりつつある物語
第28章 曜日市――山岳地の知恵の集積
第29章 イエメン女子教育への挑戦――貧困と文化を越えて道を切り開く母と娘たち
第30章 みんなで断食、みんなで礼拝――サナアのラマダーン
第31章 結婚してすべてが始まる――人生の一大事
第32章 エチオピア、サウジアラビア、韓国へ――外国人労働者として、難民として
第33章 ハドラミー移民――域外とのつながりによって成り立つコミュニティ
【コラム5】アイブ――イエメンの「恥の文化」
Ⅴ 生活を取り囲むもの
第34章 コーヒー――モカをめぐって
第35章 女性の「外出着」と男性の阿洋折衷――サナアの男女の服装
第36章 食べる――皿の上のサナア
第37章 飲む――コップの中のイエメン
第38章 「カートを嚙もう」――万能な換金作物
第39章 銀製品・装飾品――全財産を身に着ける
第40章 移動のかたち――イエメンの交通手段
【コラム6】オンナ同士の裸の付き合い
【コラム7】イエメン女性のロールモデル
Ⅵ 産業となりわい
第41章 イエメンの水資源管理――増大する水需要と減りゆく地下資源
第42章 段々畑と農業――厳しい農作業が生む忍耐強いイエメン人
第43章 沿岸部の生活と漁業――活かされていない海の幸
第44章 イエメンの石油・ガス産業――ポテンシャルはあるが、内戦により生産は低迷
第45章 近代化と舗装道路――近代を運んできた黒い絨毯
第46章 密輸・密入国――イエメンを取り巻く海と陸のネクサス
第47章 財閥――どんなチャンスも逃さない人々
【コラム8】紛争と気候変動に苦しむ養蜂業
Ⅶ 近代化と政治
第48章 アデン保護領の終わり――国民国家の成立と、インド洋沿岸地域への移民の終わり
第49章 南北イエメンの展開――革命とその後の混乱
第50章 統一と民主化――選挙と民主主義の後退
第51章 「アラブの春」とイエメン若者革命――混乱の終わりと始まり
第52章 留学生が見たアラブの春――サナアでは何が起こっていたのか
【コラム9】観光ブームと人質事件
【コラム10】怪しい留学生
Ⅷ 内戦の舞台裏
第53章 ホーシー派――不撓の反乱軍から「事実上の国家」への躍進
第54章 南部問題と南部分離主義――イエメン政治を左右する「もう一つの内戦」
第55章 アルカーイダ――衰退傾向でも粘り腰を見せる過激派
第56章 イエメンにおける国連の役割――停戦調停から人道支援、タンカー調達まで
第57章 サウジアラビアとの関係――御しがたい隣国としてのイエメン
第58章 アラブ首長国連邦との関係――したたかな介入がもたらす内戦の複雑化
第59章 イランとの関係――「前方防衛」拠点化するイエメン
第60章 紅海問題――夕日に染まる熱い海
【コラム11】イエメンとスーダンの知られざる関係
Ⅸ イエメンと日本
第61章 日本とイエメンの往来史――究極のデスティネーション
第62章 日本の対イエメン援助――時代とともに多様化する援助のかたち
第63章 若者と日本――人種や宗教を越える関わり合い
【コラム12】地方給水あれこれ
【コラム13】日本に来たイエメン人
【コラム14】万博とイエメン
【コラム15】サナアの日本料理屋
イエメンを知るための参考文献