近代アジアのユダヤ人社会
出版社: 明石書店
- 現在、アジアに居住するユダヤ人は、アジアの数10ヶ国、100ヶ所以上に分散しており、極めて多様性のある共同体を形成している。
本書は、19世紀以降のアジア地域のユダヤ人共同体がどのように形成、衰退、再生してきたかを、主に5つの地域に分け、ユダヤ人共同体の起源、成長、人口構成、文化的社会的側面、衰退、復活、ネットワーク、非ユダヤ人との関係といったテーマに基づき分析する。 - 近代アジアのユダヤ人社会
謝辞
日本の読者へ
第1章 近代アジアのユダヤ人社会――共同体成立の背景、特徴そして主な問題[ロテム・コーネル]
主な問題と調査手法
構成と中心テーマ
第1部 中央および北アジア――移動と文化生活
第2部 南アジア――英領および独立後のインドにおけるアイデンティティと文化
第3部 東南アジア――歴史上のさまざまな遺産と共同体の芽生え
第4部 東アジア――中華圏における共同体と政治活動
第5部 仮想のアジア――見えざる共同体と失われた部族
第1部 中央および北アジア――ロシアの影響圏内の新旧ユダヤ人共同体
第2章 “ユダヤトライアングル”の終焉――中央アジアの地理と流動性[トーマス・ロイ]
ジュディオ・ペルシア系共同体――帝国と国民国家
ユダヤトライアングル内外の行き来
中央アジアに生まれた新しい共同体――シェラバードの事例
ユダヤトライアングルの終焉
ソビエト中央アジアにおける生活
第3章 ソビエト中央アジアへの戦時疎開とユダヤ人――文化的出会いと文学[アンナ・P・ロネル]
疎開と中央アジアへの移動問題
都市の生活――都市部での共存モデルとしてのタシケント
農村地帯の経験――中央アジアの農場における厳しい生活
移動の結末
第4章 フロンティアのユダヤ人――シベリアの共同体とその建築[アンナ・ベレジン、ウラジミル・レヴィン]
帝政時代のシベリアにおけるユダヤ人の入植
シベリアのユダヤ人とその自画像
シベリアのシナゴーグとその建築様式
ソビエト時代とその余波
結び
第2部 南アジア――英領および独立後のインドにおけるアイデンティティと文化
第5章 インド亜大陸のユダヤ人共同体――インド民族主義とシオニズムの狭間[ナタン・カッツ、ジョアン・G・ローランド、イタマール・テオドル]
ユダヤ人共同体とインド民族主義運動
シオニズムのインパクト
インド・ユダヤ人の貢献
アイデンティティ紛争の帰結
第6章 インド亜大陸のユダヤ人軍人――アジアの特異な伝統[ラン・アミタイ]
イギリス東インド会社とそのユダヤ人セポイ
セポイの反乱(一八五七~五八年)とその後の改革
総力戦の時代と徴募の拡大――一九一四~四七年
独立インド国軍内のユダヤ人――一九四七年~現在
結び
第7章 アラビア海沿岸の文化交流と宗教指導者――インドとイエメンのユダヤ人[メナシェ・アンジー]
イエメンからインドへ
イエメンのベネ・イスラエル
インドのシャダリム――教宣募金の使節
結び
第3部 東南アジア――植民地主義の遺産と新興の共同体
第8章 シンガポールのユダヤ人――阿片取引のうえに築かれた共同体[ヨナタン・ゴールドシュタイン]
シンガポール・ユダヤ人共同体の起源
阿片取引に対する共同体の態度
日本の占領のトラウマ
共同体の戦後再建
第9章 植民地居住から新しい共同体認識へ――在インドネシア共同体の興亡と再建[レナード・クリソストモス・エパフラス、ロテム・コーネル]
共同体の誕生
崩壊――日本の占領とインドネシアの独立
アイデンティティを求めて――新しいユダヤ人集団の出現
結び
第10章 非植民地化とその余波――英領アジアにおけるバグダディ系離散民の運命[アモス・ウェイ・ワン・リム]
バグダディ系ユダヤ人ディアスポラ共同体
インド
ビルマ
シンガポール
非植民地化とバグダディのアジア・ディアスポラ共同体に与えた影響
結び
第4部 東アジア――中華圏の共同体と反目
第11章 上海のユダヤ人――東アジア最大のユダヤ人共同体の興亡と再生[ロテム・コーネル、シュ・シン]
共同体の出現――一八四〇年代~一九三〇年代
短い全盛期そして終焉――一九三八~四九年
ユダヤ人共同体の再生――一九八〇年代
結び
第12章 ハルビンのユダヤ人共同体――三帝国下でのはかなき興亡[ヨシュア・フォーゲル]
ハルビン市の創建
ハルビンにおけるユダヤ人の信仰と共同体生活
日本の占領と反ユダヤ主義の台頭
日本支配の全盛期と極東ユダヤ人会議
共同体の消滅
第13章 台湾――ルーツなき戦後のユダヤ人共同体[ドン・シャピロ]
合衆国軍の役割
共同体の正式発足
黄金時代
イスラエルの進出とハバッド派の来島
活性化する共同体
第14章 日本のユダヤ人――ビジネスコミュニティがたどる紆余曲折の道[ロテム・コーネル、ウィリアム・ジャーヴェイス・クラレンス=スミス]
戦前日本におけるユダヤ人共同体の生活
全面戦争時代の動静
戦後期の回復と成長
第5部 仮想のアジア――失われた十部族と隠れた共同体
第15章 アジアと失われた十部族――回復された事実の検証とシオニスト史の書き直し[ギデオン・エラザール]
一九世紀におけるユダヤ人のアジア探訪
シオニズムとメシアヨセフの息子
アジアで発見された失われたユダヤ人――ブネイ・メナシェ
イスラエルとアジアのユダヤ人
結び
総括
第16章 近代アジアのユダヤ人社会――共同体共通の性質、人口上の特徴と独自性[ロテム・コーネル]
起源と分離
共同体間の関係
初期の拡大
人口構成上の特徴
主要共同体
共同体間のネットワーク
文化と社会的側面
非ユダヤ人との接触と貢献
衰退
近年の復活
近代ユダヤ史に占めるアジアの位置
脚注
文献
索引