近代日本思想史大概
出版社: 法政大学出版局
- 近代化に向かう国家と思想の大きなうねりを捉える名講義を再現。丸山眞男の方法論と独自の社会・文明批評観で編み直す日本思想史
- 近代化に向かう国家と思想の大きなうねりを捉える名講義を再現。丸山眞男の方法論を継承しつつ独自の社会・文明批評観をもって編み直す日本思想史。
- 思想史とはすなわち時代精神の推移を見渡す仕事である。明治維新から自由民権運動、大正デモクラシー、戦争とファシズムの時代を経て戦後民主主義へ、福澤諭吉、中江兆民、高山樗牛、吉野作造らの著述を丹念に読み直し、近代化に向かう国家と思想の大きなうねりを捉えたかわさき市民アカデミーでの名講義を再現。丸山眞男の方法論を継承しつつ独自の社会・文明批評観をもって編み直す日本思想史。
- まえがき
第一回 日本近代思想史の方法と対象
一 私の知的関心の変遷──自己紹介を兼ねて
二 思想史の方法的軸(一)──「思想」とは何か、「構造軸」
三 思想史の方法的軸(二)──「時間軸」と「空間軸」
第二回 維新・啓蒙期の思想状況
一 明治維新認識の始まりと新しい世代の登場
二 明治維新をどう見るか?──竹越三叉の議論を手がかりに
三 さまざまなレベルの明治維新──民衆・為政者・知識人
第三回 福澤諭吉の思想
一 『近代日本の精神構造』──神島二郎の思想史学
二 福澤諭吉──「下から」の近代化の探求
三 福澤諭吉の思想形成
四 「一身独立して一国独立す」──福澤諭吉の日本近代化構想
第四回 自由民権運動期の思想状況
一 「脱亜論」と「日本国会縁起」──福澤諭吉についての補足
二 自由民権思想の二側面──「国権」と「民権」
第五回 中江兆民の思想
一 フランス留学までの中江兆民
二 帝国議会開設までの中江兆民
三 第一議会における中江兆民
四 中江兆民晩年の到達点
第六回 続・中江兆民の思想
一 日本近代化をめぐる路線闘争──明治十年代の思想状況
二 誰が憲法を作るのか?──「憲法制定権力」の問題
三 中江兆民の「憲法点閲」論──大日本帝国憲法体制との対決
四 『三酔人経綸問答』の世界
第七回 井上毅と近代天皇制国家の制作
一 「国家」の二側面──「共同体としての国家」と「機構としての国家」
二 国家における「制度」と「習俗」との連関
三 明治国家の「制作」と井上毅
四 大日本帝国憲法体制の「両義性」
五 「教育勅語」と井上毅
第八回 明治二十年代の思想──平民主義と国民主義
一 民友社と政教社──明治二十年代の時代的・精神的状況
二 新世代知識人の登場あるいは知識人の性格変化
三 「平民主義」と「国民主義」──その共通性と対立点
四 徳富蘇峰の「平民主義」
五 陸羯南の「国民主義」
第九回 日露戦後世代の登場と高山樗牛
一 〝明治ナショナリズム〟の終焉と新しい世代の登場
二 「文明批評家」の登場と生田長江の論──「対外的愛国心」を「根本動機」とする「国家至上主義」への「反動」としての「自我主義」の登場
三 土田杏村・山路愛山・三宅雪嶺の論
四 長谷川如是閑の回顧──明治三十年代青年の「三つの典型」
五 「樗牛問題」──〝絶えざる「転向」者〟?
六 「制度通過型インテリゲンチャ」最初の世代と〝センチメンタルな自我〟
七 「日本主義を賛す」と内村鑑三的キリスト教の排撃
八 露骨な「帝国主義」、反・民主主義、反・社会主義から「美的生活を論ず」へ
九 「日蓮上人と日本国」から「現世的国家主義の打破」へ
第十回 明治社会主義の思想
一 「明治社会主義」にあった二つの型
二 幸徳秋水と「志士仁人の社会主義」
三 片山潜と「労働と自治の社会主義」
第十一回 吉野作造の思想と大正デモクラシー
一 第一次世界大戦
二 吉野作造の生涯に沿って(一)
三 大正デモクラシー期の雰囲気
四 吉野作造の思想
五 吉野作造の生涯に沿って(二)
第十二回 昭和マルクス主義の思想 河上肇・三木清
一 「主義」の理念・制度・運動
二 マルクス主義 哲学と科学
三 ドストエフスキー──大審問官物語
四 ロシア革命の成功の中で
第十三回 昭和ファシズム期の思想
一 昭和初期──ファシズム期
二 日本ファシズムの特徴
三 日本ファシズムの時期区分
四 イタリア、ドイツとの違い
五 「天皇制」概念と「講座派」史観
六 現在の日本──「全体主義」の風潮
第十四回 戦後民主主義と高度成長以後の思想
一 丸山眞男にとっての「戦後」
二 丸山におけるその後の変化
三 高度成長以後──丸山の沈黙
四 最後に──高度成長以後は「自分史」として
あとがき
付・講座レジュメ(配布プリント)
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