
四季と機器
出版社: よはく舎
- 二子玉川へ移転した大学の霧信号所キャンパスは、ずっと霧に包まれている。灯子はスタッフや教員たちと、学生たちの学ぶ場が快適であるよう、日々その運営にあたっていた。
キャンパスには猫が闊歩しているが、黒猫を、一度に二匹以上見たことが無い。
そして、そこに「あるはずのないもの」が発見される。
猫は何匹いるのか。キャンパスは正常に運営できているのか?
予定外の出来事やプライベートでの変化があっても、続く日常。
デバイス、アプリ。21世紀のテクノロジーが当たり前のベースとなった私たちの社会で、新しくなったことと変わらない人の営みの細部を描き切った小説。
デビュー小説『フルトラッキング・プリンセサイザ』から重なる登場人物たちは、池谷作品が文学の王道でもあるサーガとして構築されていること、池谷氏が大きな構想をもった作家であることを証している。
喪失の痛み、もうひとつの声を軸にシンフォニックな世界を描いた池谷和浩の新境地であり、この新しさは世界に通じる文芸作品である。
装画 加藤オズワルド
装丁 図工ファイブ
