
書かずにいられない味がある
出版社: クオン
- 〈食〉は暮らしと文化の生命線
プルコギや冷麺がソウルで日常的に食べられるようになったのは、
今からたった約百年前のこと。
地方や海外の味が流入し、外食店が増え、
朝鮮半島の食文化が大きく変貌していった時代でもある。
当時の人々のいのちをつなぎ、生活を彩った〈食〉の数々が、
作家や記者らの筆によって臨場感をもって描かれる――。
どこから読んでも味のある、小説、エッセイ、ルポルタージュ40選。
●訳者解説より
すべての作品に共通する内容として、人々の食にかけるひたむきな姿勢があげられる。植民地下の厳しく、貧しかった時代、食べることは生きることと同義であった。大衆居酒屋でマッコリをあおる姿も、水っぽく薄い粟粥を懸命にすする姿も、病気の妻にソルロンタンを買って帰るため必死に働く姿も、日々を懸命に生きる人たちのリアルな日常である。そこには飽食の時代にあって、ついつい忘れがちな食への原初的な情熱が込められており、読めば読むほどに調理技術を超えた「味わい」が伝わってくる。
訳者としての立場ではあるが、一読者としても満腹度の高い一冊であった。
――コリアン・フード・コラムニスト 八田靖史 - はじめに
第1部 春は明月館の交子料理にあり
カレイ、ロバ/白石
柳京食譜/李孝石
明太/蔡萬植
エジョチム/蔡萬植
夏の味覚/桂鎔黙
スイカ/崔曙海
マクワウリ/薄田斬雲
青ブドウの思想/李孝石
山菜/蔡萬植
幽霊の鍾路/李泰俊
春を待つ気持ち/金尚鎔
愛酒記/金岸曙
店頭の牛頭骨/薄田斬雲
外国で思い出した朝鮮のもの/李晶燮
麵/白石
海苔/具本雄
第2部 食は小説になる
サンジョク/蔡萬植
冷麵/金浪雲
カルビをかじる犬/尹白南
餅/金裕貞
十月に咲くリンゴの花/李孝石
運のよい日/玄鎮健
第3部 チュタン店の下働きとして
チュタン店の下働きとして二日間の住み込み/B記者
冷麵配達夫に扮した記者 秘密家庭探訪記/夜光生
朝鮮料理店の始祖明月館
明月館と食道園の料理戦争
富豪の食事と極貧者の食事
菓子屋の人気がある理由 男女の恋愛のおかげ/京城探報軍
ピンス/方定煥
第4部 八道名物飲食礼賛
珍品中の珍品 神仙炉/牛歩生
全州名物 タッぺギクッ/多佳亭人
忠清道名物 鎮川メミルムク/朴瓚煕
慶尚道名物 晋州ビビンバ/飛鳳山人
無視するべからず ソウルのソルロンタン/牛耳生
天下の珍味 開城ピョンス/秦学圃
愛の餅、風流の餅 延白インジョルミ/長寿山人
四季の名物 平壌冷麵/金昭姐
大邱の自慢 大邱湯飯/達城人
京城名物料理
京城名物 野菜と果物
筆者紹介
訳者解説