
古往今来 忘れられた名著を味わう
出版社: 笠間書院
- 林望先生が江戸から昭和の隠れたベストセラー作品など、いまだから読んでみたい「忘れられた名著たち」を紹介。
- "よく知られた文人の作品は手にしやすい書物になり読まれる機会も多いが、あまり目にする機会のない江戸から昭和の作品にも優れたものは多くある。本書は林望先生がいまだから読んでみたい「忘れられた名著たち」を紹介。…
- 夏目漱石や森鴎外などよく知られた文人の作品は、文庫などの手にしやすい書物になり、また教科書などにも掲載されて読まれる機会も多いが、
あまり目にする機会のない明治の文明開化期の作品にも、これらの文豪にも負けず劣らずの優れたものは多くある。
現代ではもう忘れ去られてしまっているが、明治期にはベストセラー作家であった人たちの本は、実はいま読んでみるとすこぶるおもしろい作品が多い。
文明開化期の、和装本から洋装本にきり変わっていく時期の過渡的な本のかたちを「ボール表紙本」と総称しますが、その内容は実録小説、人情小説、伝記、翻訳本、「刑法」といった法令書まで多彩なジャンルにわたっていて、実に多彩でおもしろいのです。
本書は林望先生が、ボール表紙本のものを中心に、いまだから読んでみたい「忘れられた名著たち」を厳選し、紹介しています。
出口の見えない経済不況、政治の混沌、世界を巻き込んだ大戦前のようなきな臭い世界情勢……こんな時代だからこそ、先人たちはどのようなことを考えていたのかを知るのもよし。江戸から昭和の隠れたベストセラーの一端を読んでみてはいかがでしょうか? - 【目 次】
まえがき 2
序章 書物への愛着
ヨム、ウタフ、ミル 10
第1章 文章の美しさ、面白さ、迫力
『遊仙窟』――旅と文献 20
『世事見聞録』――うるさ型の文学 24
『(新奇妙談)閻魔大王判決録』――ボール表紙本の愉快 28
『(拍手喝采)滑稽独演説』――骨皮道人という流行作家 32
『(維新大元勲)故陸軍大将西郷隆盛君幻奇談』――西郷の幻影 36
『自然と人生』――徳冨蘆花、その文章の美 40
『黄海々戦ニ於ケル松島艦内ノ状況』――松島艦の運命 44
『髯籠の話』――折口信夫・釈迢空と私の家 47
『茶話』の妙々 56
『随筆東京』――随筆の馥郁たる香気 60
『野の仏』ふたたび 64
『奥野信太郎随想全集』――三歳の童子にして 68
『祖母のものがたり』――寺子屋の面影 72
第2章 和歌の世界
『永福門院百番御自歌合』――永福門院のなつかしさ 78
『揺籃』の歌ども 82
『(評釈)平賀元義歌集』――尊王と色好みと 86
『秋風抄』――ある非売品の一冊 90
『定本古泉千樫全歌集』――近代の万葉びと 94
第3章 俳句の楽しさ
『川柳難句評釈』――笠森稲荷と土団子 100
『いなのめ集』――鄙の風流 103
『百鬼園俳句』のほのぼの 106
『句集 夏』――露臺風ありや 110
『新編山頭火全集』――どこかで出会っているような 114
第4章 詩に魅せられて
『句双紙』を逍遥する 120
『定本 野口雨情』――二十六詩 124
『青い夜道』『海の見える階段』――わが心の田中冬二 128
『山の消息』の哀訴を 151
『津軽の詩』――ゆっくりゆっくり、考え考え 157
『おかあさん』――ふと思い出す母のこと 162
『卓上の花』と河上肇 166
第5章 古き良き時代の面影
『京より江戸迄道中』『(新板改正)諸国道中記』――道中記を旅する 172
『明治中興雲台図録』――西郷どんの風貌 176
『東京新繁昌記』――異人館と船饅頭 180
『(奇思妙搆)色情哲学』――明治人の科学と道徳 184
『旅行とスケッチ』――明治時代の伊東 188
『I See All』――百聞は一見に如かず 192
『水木の雲り日』――無名の場所と独り吟行の楽しみ 196
『忘れられた日本人』――田植えの風雅 204
『みちのく実説・続よばい物語』――ほのぼのとした時代 208
第6章 永遠なる食への欲望
『料理三篇山家集』――ひしこ漬けの伝授 214
『飲膳摘要』――鼠を喰ったか 218
『四季漬物塩嘉言』――冬の楽しみ、沢庵漬 222
『江戸と北京』――猿を食う話 226
『東京新繁昌記』――牛肉事情 230
『東京新繁昌記』――洋食屋事情 234
『(重宝経済)最新野菜料理法』――「早くき」というもの 238
『味覚極楽』――どうしても試したくなる 242
『聞き書 鹿児島の食事』――薩摩よ、薩摩よ! 246