小山さんノート

小山さんノート

出版社: エトセトラブックス
著者: 小山さんノートワークショップ
  • 小山さんと呼ばれたホームレス女性が遺した、80冊超のノート。手記の抜粋と、8年かけて文字を起こした女性たちのエッセイ収録。
  • 時間の許される限り、私は私自身でありたいーー「小山さん」と呼ばれた、ホームレスの女性が遺した80冊を超えるノート。その手記の抜粋とともに、8年かけて文字を起こしたワークショップメンバーによるエッセイ収録。
  • 「小山さん」と呼ばれた、ホームレスの女性が遺したノート。
    時間の許される限り、私は私自身でありたいーー2013年に亡くなるまで公園で暮らし、膨大な文章を書きつづっていた小山さん。町を歩いて出会う物たち、喫茶店でノートを広げ書く時間、そして、頭のなかの思考や空想。満足していたわけではなくても、小山さんは生きるためにここにいた。
    80冊を超えるノートからの抜粋とともに、手書きのノートを8年かけて「文字起こし」したワークショップメンバーによるそれぞれのエッセイも収録。
    【小山さんのノートより】
    働きに行きたくない。仕事がかみあわない。もう誰にも言えない。私は私なりに精いっぱい生きた。(…)私にとって、大事なものは皆、無価値になって押し流されていく。(1991年11月7日)
    雨がやんでいたのに、またふってくる。もどろうか。もどるまい。黄色のカサが一本、公園のごみ捨て場に置いてあった。ぬれずにすんだ。ありがとう。今日の光のようだ。(2001年3月18日)
    駅近くに、百円ちょうど落ちていた。うれしい。内面で叫ぶ。八十円のコーヒーで二、三時間の夜の時間を保つことができる。ありがとう。イスにすわっていると、痛みがない。ノート、音楽と共にやりきれない淋しさを忘れている。(2001年5月7〜8日)
    五月二十日、夜九時過ぎ、つかれを回復して夜の森にもどる。 にぎやかな音楽に包まれ、心ゆったりと軽い食事をする。タコ、つけもの、紅のカブ、ビスケット、サラミ少々つまみながら、にぎやかな踊りをながめ、今日も終わる。夜空輝く星を見つめ、新たな意識回復に、十時過ぎまで自由な時間に遊ぶ。合計五百十六円拾う。(2001年5月20日)
    ほっと一人ゆったりと歩く。のどがかわいた。水かコーヒーを飲みたい。こんな活気のない金曜の夜、三百円もち、何も買えない。人間の人生は生きてる方が不思議なくらいだ。(2001年6月22日)
    一体、五十にもなって何をしているんだと、いい年をしてまだ本をもち、売れもしないもの書いて喫茶に通っているのか……と、怒り声が聞こえそうな時、私の体験の上、選んだ生き方だと、私の何ものかが怒る。(2001年6月14日)
    私、今日フランスに行ってくるわ。夜の時間をゆっくり使いたいの……。美しい夕陽を見送り、顔が今日の夕陽のように赤く燃えている。(2001年6月27日)
    2階カウンターの席にすわり、ノートと向かいあう。まるで飛行機に乗ったような空間。まだ3時過ぎだ。流れるメロディーに支えられ、フランスにいるような気持ちに意識を切り替える。(2002年2月21日)
    一時間、何もかも忘れのびのびと終わるまで踊ることができた。明るいライトに照らされた足元に、一本のビンがあった。冷たい酒が二合ばかり入っている。大事にかかえ、夜、野菜と共に夜明けまでゆっくりと飲み、食べる。(2002年9月28日)
    五時過ぎ、十八時間の飛行機に乗ったつもりで意識は日本を離れる。外出をやめ、強い風が吹き始めた天空、ゆらゆらゆれる大地、ビニールの音。 (2003年9月7〜9日)
  • 「はじめに――小山さんノートとワークショップ」登 久希子
    「小山さんが生きようとしたこと」いちむらみさこ
    小山さんノート
    序 章 1991年1月5日〜2001年1月31日
    第1章 2001年2月2日〜4月28日
    第2章 2001年5月7日〜8月21日
    第3章 2001年8月22日〜2002年1月30日
    第4章 「不思議なノート」 2002年9月3日〜10月4日
    第5章 2002年10月30日〜2003年3月16日
    第6章 2003年7月3日〜2004年10月12日
    小山さんノートワークショップエッセイ
    「小山さんとノートを通じて出会い直す」吉田亜矢子
    「決して自分を明け渡さない小山さん」さこうまさこ
    「『ルーラ』と踊ること」花崎 攝
    「小山さんの手書きの文字」藤本なほ子
    「沈黙しているとみなされる者たちの世界」申 知瑛

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