日本と西欧の五〇〇年史

日本と西欧の五〇〇年史

出版社: 筑摩書房
著者: 西尾 幹二
  • 西欧世界の東漸とアメリカの太平洋進出は、いかに進んだのか。近代における戦争の五〇〇年史を辿り、日本への衝撃の全貌を再考する。
  • 西欧世界とアメリカの世界進出は、いかに進んだのか。戦争五〇〇年史を遡及し、近代史の見取り図から見逃されてきたアジア、分けても日本の歴史を詳らかにする。
  • 西欧世界とアメリカの世界進出は、いかに進んだのか。戦争五〇〇年史を遡及し、近代史の見取り図から見逃されてきたアジア、分けても日本の歴史を詳らかにする。
    西欧の暴力・科学・信仰の一体化は
    どのように世界を拡大し、
    悲劇を生んだか
    日本が対峙させられた西欧精神の深層を
    500年の歴史から読み解く著者畢生の一冊
    西欧の歴史は休みない戦争の歴史であり、特に16-18世紀は「軍事革命」の300年だったと言える。西欧はそれを奇貨として、宗教改革によって強化されたキリスト教信仰と「新大陸幻想」に駆られて、新世界の発見・拡大に躍り出る。その歴史はスペインとポルトガルに始まり、オランダ、イギリスを経て、アメリカの「脱領土的世界支配」に至る。そして今日、中国の勃興を背景に流動化する国際秩序は、「新たな中世」の到来を告げているかのようだ。世界覇権をめぐる500年の争いを俯瞰し、日本が立ち向かうべき「現実」の正体に挑む著者渾身の一冊。
  • はじめに
    第一章 そも、アメリカとは何者か
    わずか三五〇年ほど前のことだった/新世界の「純潔」、旧世界の「頽廃」/アメリカは戦争するたびに姿を変える国である/昭和一八年を境に日米戦争はがらりと様相が変わった/アメリカの脱領土的世界支配――金融と制空権を手段として/「権力をつくる」政治と「つくられた権力」をめぐる政治の違い/アダム・スミスの「見えざる手」は余りに楽天的に過ぎないか/五〇〇年続いた「略奪資本主義」の行き詰まり/最初の帝国主義者、スワード米国務長官の未来予見/日本排除はアメリカ外交の基本方針だったのか/原則として拡大する必要のない国家アメリカの膨脹政策/EU統合からふり返って二〇〇年前の「アメリカ統合」を再考する/フランス革命をめぐるジェファーソンとハミルトンとの対立/奴隷解放は南北戦争の目的ではなかった/もしも北アメリカの一三州がヨーロッパのように複数の独立国のままだったら?/リンカーンは天才的な宗教家だった/戦後の日本人にアメリカ映画が与えた夢/世界を凌駕する大学文化/アメリカはまだ「中世」なのか、それともアメリカ史には「中世」がなかったのか/古代ギリシアでは奴隷の必要性の認識は動かない/弱者に対する自由という?き出しの生命のやり取り/競争の導入による自由の現代的よみがえり/「アメリカ独立宣言」に含まれなかった黒人とインディアン
    第二章 ヨーロッパ五〇〇年遡及史
    歴史をあえて逆読みする/世界帝国になったスペインとイギリス/始まりは二つの小国│――テューダー朝と、アラゴン・カスティーリャの連合王国/フェリペ二世に匹敵する豊臣秀吉の行動は日本「近代」の第一歩だった/オランダやフランスを手玉にとったイギリス外交のしたたかさ/大航海時代の朋友、ポルトガルとスペインの相違点/ヨーロッパの出口なき絶望の中で、ポルトガルの西海の一カ所にのみ開かれた地形/一五、一六世紀アフリカ東岸はイスラム商人たちが屯する「寛容の海」だった/モザンビークの暴行からカリカットの略奪へ/自由だったインド洋に「ポルトガルの鎖」という囲い込みが作られた/世界史に影響を与えたローマ法王の勅許「トルデシリャス条約」/中世末に正しい法理論争が起こらなかったのはなぜか/首のない人間とか犬の姿をした人間が生まれたなど、無知と迷信にとらわれた最初のヨーロッパ人/インディオは人間かを真剣に問うた「バリャドリッド大論戦」の科白を紹介する/当時の体制思想の代弁者セプールベダ/人類という近代的概念に囚われたビトリア/正しいのはどちらでもないとラス・カサスは叫びつづけた/コロンブスが発見し上陸した西インド諸島のその後/「エンコミエンダ」の撤廃のための孤独な戦い/実行家ラス・カサスによる魂ゆさぶる衝撃/異端と異教徒は別次元の存在/キリスト教的近代西洋の二つの大きな閉ざされた意識空間/ラス・カサス評価の浮き沈み
    第三章 近世ヨーロッパの新大陸幻想
    「海」から「陸」を抑えるイギリスの空間革命/イギリスが守った欧州二〇〇年の平和/北西航路か北東航路かのつば競り合いが始まった/アフリカの海では魚釣りのように気楽にニグロを捕まえる/アメリカ大陸が「島」に見えてくるまで眼を磨かなくてはならない/掠奪は当時の西欧の市民社会では日常の経済行動だった/他人の痛みに対する感覚が今とはまるで違っていた/「フロンドの乱」と秀吉の「刀狩り」/西欧内部の暴力はアジア、アフリカ、中東へ向かった/中世ヨーロッパの拡大意志から太平洋への侵略が始まる/宗教内乱を経験しなかった日本/キリスト教国でそもそも「世の終わり」とはいったい何か/前千年王国論、後千年王国論、無千年王国論/ピューリタン革命始末記/『ヨハネの黙示録』の一大波紋/カトリック教会の七つの「秘蹟」の矛盾から起こること/ドストエフスキーの「大審問官」/人間は無意識という幻の中を漂って生きている/ルター= エラスムス論争と私の青春/救いの根源は神の「選び」のみにある/ルターからカルヴァンに進む心の甘さの追放劇、これが西欧「近代」の門戸を開いた/宗教改革はもう一つの「十字軍」だったのか/今にして思えば西欧の誕生地は文化果てる野蛮な僻地だった/文明と野蛮の境い目を自由に跳び越えるモンテーニュ/モンテーニュの精神に近かったのは行動家ラス・カサスだった/裏目に出たグロティウスの「自然法」への依存/「人類のため」が他罰戦争の引き金になる/地球の分割占拠の遠因となったジョン・ロックとトマス・モア/科学革命と魔女裁判/コペルニクスやケプラーなどの天体科学者たちの仮説と中世の神学/科学思想の先駆者だった神学者カルヴァン/「魔女狩り」は「純粋」をめざす近代的現象だった/ガリレオ、デカルトの「自然の数学化」の見えない行方/「最後の魔女裁判」は一六九二年のアメリカ
    第四章 欧米の太平洋侵略と江戸時代の日本
    慌ただしくて余りに余裕がなかった日本の近代史/”明治日本を買い被るな”/イスラム世界の勢いと大きさに気付いていなかった日本人/アメリカ二大陸への魔力をみじんも感じなかった日本人の限界/急進的宗教家だったニュートンの意外な面/劣等人種の絶滅を叫ぶキリスト教徒/仏教は日本人の「無」の感覚にこの上なくフィットしている/呉善花氏がついに韓国人のホンネを明かした/一〇世紀唐の崩壊から明治維新まで日本は実質的な「鎖国」だった/武装しないでも安全だった「朱印船」の不思議/日本人に初めて地球が丸いことを教えたマテオ・リッチ/”未開の溟海”太平洋の向こう側は新井白石も考えようがなかった/地球の果てを見きわめようとする西洋人の情熱は並外れていた/マゼランとドレイクの世界周航/一六〇〇年代は”オランダの世紀”/アンボイナ事件と幕府の外交失敗/世界に一枚しかない年表をお見せする/マゼランVSドレイクの「世界一周探検」は民族対決だったのか/一八世紀後半に現われた本格的世界探検家ジェームズ・クック/世界に一枚しかない年表(二頁目)/英露「北西航路」を開く野心と戦争、両国は名誉を賭けて戦った/ベーリングの探検、千島にも及ぶ/ジェームズ・クックの第三次航海、初めて北太平洋に入った/クックに次いでフランスのラペルーズ隊がやって来る/「鎖国」をめぐる百論続出/国法としての「鎖国令」の真相/深い眠りに入っていた日本は思わず「鎖国」に嵌まり込んだのだ/鎖国の自覚すらない「鎖「ヨーロッパ圏」意識」の救い難さ/クックの死――崇敬化の極みに起こった自己破壊衝動/スリランカの一文化人類学者の反撃/天皇の人間宣言――同じ文明錯誤をここに見る/日本との”雙生児ハワイ”
    あとがき
    主な参考文献

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