ナショナル韓流とトランスナショナル韓流

ナショナル韓流とトランスナショナル韓流

出版社: 博英社
著者: 辛 教燦
  • K-POPの現地化、無国籍化、ドラマジャンルの多様化のなかで、韓流はどのように変容していくのかを追っていきたいと考えている。
  • K-POPの現地化および無国籍化、ドラマジャンルの多様化、ストリーミング技術の進展といった動きのなかで、韓流はどのように変容していくのかを追っていきたいと考えている。
  • このテーマに向き合う背景には、現在という時代が抱える複雑な問題意識がある。世界各地でナショナリズムが台頭し、排他的な言説が力を持ち始めるなかで、国家や民族を越えて共有される文化の力に目を向けることの意味が、いっそう大きくなっていると感じた。
    かつてのH.O.Tや初期の韓国ドラマ、日本での『冬のソナタ』現象、そしてPsy の「江南スタイル」、BTSやBLACKPINKの世界的な人気、さらには『パラサイト』や『イカゲーム』といった作品の広がりに至るまで──韓流はかたちを変えながら、確かにその歩みを続けてきた。
    一方で、韓流をめぐる視線には、常に賛否が交錯してきた。『マンガ嫌韓流』や韓国に対するヘイトスピーチ、フジテレビへの抗議デモなど、否定的な声も決して少なくはなかった。韓国側においてもまた、韓流を「国家の誇り」として捉え、誇張された成功の物語へと還元しようとする姿勢が見受けられる。そうした両極の言説のあいだにあって、私はむしろ、韓流の本質がそうした「ナショナルな視点」では捉えきれない地点にあることを、繰り返し実感してきた。韓流のなかには、アメリカのヒップホップ、日本のアイドル文化、香港映画や欧米のドラマジャンルが溶け合い、混じり合いながら、新たな文化として形づくられている様子が見て取れる。それはもはや単一の国に帰属するものではなく、多様な文化が交錯する場としての広がりを持った現象であると言えるだろう。
    こうした観点から、私は韓流を「トランスナショナルな現象」として再定位する必要を感じた。本書はその試みの一端にすぎないが、今後さらに、K-POPの現地化および無国籍化、ドラマジャンルの多様化、ストリーミング技術の進展といった動きのなかで、韓流がどのように変容していくのかを追っていきたいと考えている。
    この執筆を通じて、私は文化とは常に混ざり合い、変化し続けるものであるということを、改めて実感した。国家や言語、民族を越えて共有される文化の力は、時に政治や経済をも凌駕する。韓流という現象は、その生きた証左である。本書が、韓流をただの一時的なブームとしてではなく、グローバル時代における文化の新しい在り方として捉える手がかりとなれば、著者としてこれ以上の喜びはない。
    [目次]
    第1章 韓流をどう読むか
    第2章 日本におけるナショナルな韓流
    第3章 韓国におけるナショナルな韓流
    第4章 トランスナショナルな表象としての韓流
    第5章 韓流は韓国だけの文化ではない

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