
保育者論 実践力を育み専門性を培う
出版社: ななみ書房
- 保育者に求められるのは,保育者の役割・倫理の理解,制度的位置づけと専門性を把握すること,諸機関と連携・協働をすすめること,資質向上をめざすなど(厚労省教授科目「保育者論」)が示されている。こうした専門的知識・技能の修得は不可欠である。また,保育者をめざす者は,いわゆる「不適切な保育」を担う立場であってはならない。
では,保育者に求められる資質とは,どのような内容なのか。専門的知識・技能の修得とともに,保育者自身がたゆまぬ自己向上心をもつことが肝要である。その際,子ども・人間への深い洞察や学び続ける謙虚な姿勢を重視したい。本書で,保育者論の基盤となる法的・制度的理解や位置づけなど,必須事項を修得してほしい。また,先輩保育者がそれぞれの経験からを語っている「保育者論」も貴重な提言である。読み解き,対話も試みながら,どのような保育者をめざしたいのか,自分なりの将来像をもてるように思考し,深めていってほしい。保育者論の学びは,学生時代に完結することではなく,実践現場をはじめ社会人として生きる日々から,創造的に身につける課題であることを理解してほしい。 - (もくじ)
はじめに
序 章 今,求められる保育者像
第1章 保育者の基本的役割と倫理
第1講 保育者の役割
1.保育者とは何か
2.法律による資格・免許の取り消し
第2講 保育者の倫理
1.保育士倫理綱領
2.子どもの代弁者である保育者,権利の主体を育む保育
3.保育虐待にみる保育者の倫理
⃝私の保育者論 《中塚良子》
第2章 保育者の制度的位置づけ
第3講 保育者の資格と責務—保育士の一日にふれて—
1.保育者になるための資格
1 保育士の資格
1 保育士資格とは
2 保育士資格を取得する方法
3 保育士資格を失う場合
2 幼稚園教諭の資格
1 幼稚園教諭免許とは
2 幼稚園教諭免許を取得する方法
3 幼稚園教諭免許状を失う場合
3 保育教諭
1 保育教諭に必要な資格・免許とは
2 保育教諭に必要な資格・免許を取得する方法
2.第2節 保育士の一日と求められる責務
1 人権への配慮・人格の尊重
2 不適切保育にならない保育
3 地域との交流・連携
4 秘密保持
5 保護者・地域への説明
6 苦情の解決
第4講 保育における養護と教育
1.養護と教育を一体的に実践すること
1 保育所保育指針に明示されている養護と教育
2 事例から読み解く養護と教育の一体的な実践
1 健全な発達と養護としての子どもの安全教育
2 保育者集団が対話し検討した保育環境の総合性
3 保育者集団と保護者とのつながり方
2. 事例から読み解く幼稚園における教育
⃝私の保育者論 《源 証香》
⃝私の保育者論 《守隨 香》
第3章 保育者の専門性
第5講 保育者の資質と能力—幼稚園教諭の一日にふれて—
1.環境としての保育者
1 保育者が環境の一つであること
2 向上しようとする保育者の姿勢
2.保育者の一日と必要な資質・能力
1 前日の保育者
1 翌日の保育を構想する
2 教材研究をし,環境を構成する
2 登園前の保育者
1 環境を確認する
2 保育者自身の心身の有り様を意識する
3 登園時の保育者
4 保育中の保育者
1 遊びを豊かにする
2 一人一人と丁寧に関わる
3 人と人との関わりをつなぐ・支える
5 降園時の保育者
6 降園後の保育者
1 今日の環境を振り返る
2 記録し,今日の保育を振り返る
3.園の一員としての保育者
1 園の一員としての仕事を担う
2 保育に関わる連携をとる
1 他の保育者と関係をつくる
2 他の保育者と子ども理解を深める
3 他の保育者と研修をする
第6講 専門的知識・技術・判断
1.保育者の専門性
1 保育に関する専門性をもつこと
2 保育者の専門性を高めること
3 保育者の倫理観
2.保育者の「専門的知識・技術」
1 保育者の「専門的知識・技術」の実際
2 6つの「専門的知識・技術」
1 発達を援助する知識・技術
2 生活を援助する知識・技術
3 環境を構成する知識・技術
4 遊びを展開する知識・技術
5 関係を構築する知識・技術
6 相談・援助する知識・技術
3.保育者の「判断」
1 知識・技術と判断
2 保育者の「判断」の実際
1 子どもと関わる場面での「判断」
2 環境を構成する際の「判断」
3 保護者と関わる場面での「判断」
第7講 保育の実践と振り返り・評価—計画の意味を考える—
1.幼児の保育
1 循環的な保育の過程
1 循環的な過程として保育を捉えること
2 循環的な過程の全体像としての計画
2 保育の「計画」の意味
1 指導計画の種類
2 指導計画の作成と意味
3 「計画」に基づく保育の実践
4 実践の振り返り・評価に基づく「計画」
1 実践の記録と振り返り
2 評価から次の計画へのつながり
5 現代的な課題をふまえた保育の過程
1 社会に保育を開くこと
2 保育と小学校以降の教育との接続
2.乳児の保育 92
1 乳児の保育における計画などの特徴
1 個別の計画であること
2 月ごとの計画であること
3 乳児期の保育内容があること
4 保育を言語化すること
2 乳児の保育における計画の意味
1 複数の保育者による保育
2 家庭生活とつながる保育
3 育ちの過程が捉えにくい保育
第8講 家庭との連携と保護者への支援
1.家庭との連携の必要性
1 保育者の役割
2 家庭との連携・保護者の支援にあたって
2.家庭を取り巻く状況
1 共働き家庭の増加
2 子どもの貧困
3 外国にルーツをもつ子どもの増加
4 子どもの虐待の増加
3.家庭との連携・保護者への支援の実際
1 送迎時のコミュニケーション
2 連絡帳
3 園だより・クラスだより
4 保育参加・クラス懇談会
4.子どものプライバシーの尊重と保護者の苦情への対応
⃝私の保育者論 《小谷宜路》
第4章 保育の質的向上
第9講 保育の質の向上と評価
1.保育の量から質へ
2.保育の質とは
3.保育における構造の質
4.保育における関係性の質
1 保育者の人間性
2 実践における振り返り
5.保育の質の評価
1 評価スケールの活用
2 保育についての話し合い —保育カンファレンス
⃝私の保育者論 《小倉定枝》
第5章 保育の社会的役割と責任
第10講 園における協働と組織体制
1.園における協働とは
1 保護者との協働
2 保育者同士の協働
3 社会との協働
4 大学等研究機関との協働
2.質の高い保育を展開するための組織体制
1 チームワークとコミュニケーション
2 チームワークとチーム保育
1 保育者同士の連携コミュニケーション
2 子どもたちをどのように育てたいかという共通の認識
3 子どもの事故を防ぐために
4 子どもの発達をよりサポートできる
3 研修と保育カンファレンス
1 キャリアアップ制度
2 保育カンファレンスと専門性の向上
4 職員の専門性と組織
5 施設長の役割と職務
6 組織体制と規則・規程
7 処遇改善について
第11講 専門諸機関との連携
1.自治体や地域の関係機関との連携・協働が特に必要な場合の対応
1 子どもに障害や発達上の課題が見られる場合
1 関係機関に対するアプローチ
2 保護者へのアプローチ
2 医療的ケアの必要な子どもがいる場合
3 虐待などが疑われる場合や気になるケースを発見した場合
4 食中毒や感染症等の発生時
5 災害発生時
2.大学・研究機関との連携
第12講 保護者および地域社会との協働
1.保護者支援の必要性を多角的に考える
1 長時間労働と家事育児への女性の負担増
2 「男は仕事,女は家庭」―性別役割分業をどう考えるか
3 多様な背景をもつ家庭の増加—外国籍の子どもの保育
2.保育所と地域社会との協働を進めるために
1 地域における子育て支援の役割
2 市町村が行う地域子ども・子育て支援事業(13事業)
3 災害に関する地域との連携・協働
4 ユニークな保育実践—食農保育の取り組み
第13講 保育所・幼稚園・認定こども園と小学校との連携・協働
1.保育所・幼稚園・認定こども園—施設数と設置
1 公立施設数と私立施設数
2 地域における保育所・幼稚園・認定こども園の設置状況
3 都道府県別の5歳児の在籍・就園状況
2.幼児期の終わりまでに育ってほしい姿 (「10の姿」)
3.小学校との連携の基本
4.小学校との接続における課題
第14講 保育者の専門性の発達
1.保育者の専門性の意味すること
2.資質向上と研修の位置づけ
3.保育者の専門的成長とキャリアパス
4.リーダーの役割を考えるために
1 どのようにリーダーシップを発揮できるのか
5.時代を見つめ,保育の未来を創造する
—研修テーマを検討するために
⃝私の保育者論 《近藤幹生》
⃝私の保育者論 《倉田 新》
おわりに
さくいん
著者紹介
