肢体不自由者の自立と社会参加
出版社: 博英社
- 肢体不自由者7名のライフヒストリーを通じて、肢体不自由者にとって「自立」とは何か、という問いについて
- 本書の企画趣旨は、肢体不自由者7名のライフヒストリーを通じて、肢体不自由者にとって「自立」とは何か、すなわち「自立はどうあるべきか」という問いについて考えていただきたいという思いからです。
- 本書が出版されるまでには、さまざまな出来事がありました。中でも、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響は大きく、講演会やブックトークができない状況が続き、また出版社の変更などもあり、刊行が見送られました。著者の皆さまには2020年3月に初稿を提出していただき、同年秋の刊行を目指していましたが、最終的にCOVID-19の状況が緩和された4年後にようやく出版に至りました。著者の皆様には長らくお待たせしてしまい、心からお詫び申し上げます。また、これまで待ち続けてくださったことに深く感謝いたします。
本書は、肢体不自由者7名のライフヒストリーを通じて、肢体不自由者にとって「自立」とは何か、「自立はどうあるべきか」という問いについて、読者の皆さまにも考えていただきたいという思いから企画されました。
本書の構成は、第1章で「自立」の概念を説明し、第2章から第8章までは7名のライフヒストリーを紹介し、第9章では肢体不自由特別支援学校と共に取り組んでいた障害理解特別講座について紹介しています。この9章には、肢体不自由児の「自分の夢」に関する作文も収められています。
本書は、 第1章を基礎知識として読んだ後に7名のライフヒストリーを読むのも良いですし、まずは先に第2章から第8章までの7名のストーリーを読むのもいいと思います。各章の冒頭には著者についての紹介がありますので、自己紹介を確認し、興味のある著者から読んでみてください。また、第9章の障害理解特別講座は、肢体不自由児の成長と発達を支えている方々、特に親や教師の皆さまに読んでいただき、実際の指導に役立てていただければと思います。
第2章から第8章までを執筆した7名の著者は、個性豊かで素晴らしい方々であり、それぞれ異なる優れた点を持っています。肢体不自由児にとっては、彼らが人生のモデルとなる方々ですので、本書を「自己理解」や「キャリア教育」を考慮した授業の資料として活用していただければ幸いです。第1 章で述べていますが、私が自立生活運動の創始者であるエド・ロバーツ氏をモデルとして学んだことが多かったように、今の時代を生きる肢体不自由児にとって、本書の7名がそのような存在になることを願っています。また、肢体不自由者の教育や福祉、医療などに携わる方々にも本書を読んでいただき、「肢体不自由者の自立と社会参加」への理解を深めていただければと願っています。
最後に、本書はCOVID-19以前に執筆された原稿(2020年3月時点)をもとにしていますので、7名のライフヒストリーはCOVID-19の影響を受けていない状況で記されたものです。その点を考慮して読んでいただければ幸いです。また、COVID-19の時代を経験した肢体不自由者の方々についても、次の書籍でその生きざまを紹介できればと考えています。 - <目次>
第1章 「自立」とは何か(任 龍在)
第2章 能力主義からの脱却―見捨てられ不安を越えて―(川端 舞)
第3章 自分自身のことを、自分の言葉で伝える(庄田 亜季子)
第4章 生い立ち(宮内 康裕)
第5章 オプティミストが一人で生きるということについて考える(小野塚 航)
第6章 運命を切り拓く、今までもこれからも(周藤 穂香 ・ 周藤 美保)
第7章 チャレンジ精神を持って未来へ歩む(小川 晃生)
第8章 なぜロマンチックは大事なのか―私の記憶をめぐって―(愼 允翼)
第9章 障害理解特別講座「肢体不自由児の夢」