
頼もしき隣人 能勢克男
出版社: ヘウレーカ
- 反ファシズム新聞『土曜日』、生協運動、乳幼児保護雑誌等にかかわり、松川事件やわいせつ裁判の弁護を通じて“人民の弁護士”(羽仁五郎評)を貫いた能勢克男。その生涯の根底にある治安維持法との闘いを鮮明に探る力作。荻…
- 大学教授、反ファシズム新聞『土曜日』の発行・執筆者、生活協同組合のリーダー、弁護士など多くの顔をもつ能勢克男。戦前に治安維持法違反で有罪となり、服役。その経験から人民を苦しめた「悪法」は「いく度でも、くりかえし、おこってくる」と社会に警告し続けた。この危機感が法律家としての出発点となり、戦後は人権擁護と表現の自由を守る弁護活動に力を注ぐ一方、人々が支え合う「頼もしき隣人」となる社会を目指し、生協運動にも尽力した。様々な資料から彼の足跡を辿り、多岐に渡る活動とその根源にある思想を探る力作。荻野富士夫氏(小樽商科大学名誉教授。『検証 治安維持法』著者)推薦。
能勢克男プロフィール
のせ かつお(1894-1979)◆反ファシズム文化新聞『土曜日』の発行責任者、生活協同組合運動の先覚者、弁護士。◆宮城県生まれ。東京帝国大学法科大学(東京大学法学部)卒業。1922年同志社大学法学部講師、24年教授(民法・物権法)に。大学民主化運動を主唱し大学当局と対立。1929年に解職。◆同年京都家庭消費組合設立に関わり、翌年組合長に。班による共同購入や婦人会組織をすすめたが、1936年解散命令を受ける。●1930年京都小児保健協会発行の月刊誌『母性愛』編集に携わる。◆1936年斎藤雷太郎や中井正一らと『土曜日』を編集発行。1937年京都人民戦線事件により『土曜日』は44号で廃刊に。◆1938年治安維持法違反で検挙され、有罪。京都刑務所に服役。40年に出獄◆戦後は弁護士として、松川事件、「国貞」わいせつ裁判、「大逆事件」再審請求など多くの人権裁判に関わる。「悪法はいく度でも、くりかえし、おこって来る」と治安維持法のような法の暴力を自身の体験とともに亡くなるまで語り続けた。 - 序 章 能勢克男を追いかけて
1能勢克男と治安維持法一〇〇年 /2能勢克男について/3「田原和郎資料」「能勢克男関係資料」について/4各章について
第1章 民法物権論とゲノッセンシャフト
第1節 民法物権論の世界
1民法研究者として/2「共有」と「総有」/3ゲノッセンシャフトをめぐる師弟/4末弘厳太郎の農村法律問題/5「大学拡張運動」と「判例研究会」
第2節 ゲノッセンシャフト、または「榎」のその後
1ゲノッセンシャフト理論の矛盾と可能性/2『法律学辞典』と『法律学小辞典』/3「羽仁行」について/4能勢家の榎
●コラム 随想「父母の宗教とその感化」
第2章 下鴨五人娘
第1節 能勢道子を中心に
1妹・道子の視点 「小さき芽の会」/2林てるの死
第2節 「下鴨五人娘」の集結
1同志社消費組合から京都家庭消費組合へ/2村田たきの死/3「女子大的高踏」の限界から実践へ/4「六・二〇事件」/5その後の「下鴨五人娘」
●コラム 民芸のわかれ
第3章 京都家庭消費組合をめぐる諸相と能勢克男
第1節 田原和郎資料
1「市民生協の拠点を京都に」 /2安部磯雄から同志社労働者ミッションまで
第2節 同志社労働者ミッションをめぐる諸相
1同志社労働者ミッションと農民組合/2同志社消費組合の本質/3同志社と総同盟、社会民衆党の動き
第3節 田原和郎「更迭」事件
1配給員同盟の要求/2友と師の忠告/3田原―能勢往復書簡
第4節 四幹部「除名処分」と無産政党合同問題
1吉田文治の介入/2高橋貞三の苦悩と「友の会」の離反/3能勢克男の〈ホーム/家庭〉観
●コラム 頼もしき隣人たらん
第4章 『母性愛』をめぐる権利と尊厳 その1
第1節 『母性愛』とは
1忘れられた雑誌『母性愛』 /2『母性愛』の創刊/3西谷宗雄の「科学的育児法」と執筆陣/4初期『母性愛』を支えた京都家庭消費組合
第2節 「赤ん坊審査会」の明暗
1「赤ん坊審査会」の記述変遷/2川上貫一「もはや家庭のみに一任は不可能」
●コラム 映画と俳諧
第5章 『母性愛』をめぐる権利と尊厳 その2
第1節 非常時下の『母性愛』
1「非常時日本」の危機感/2伊福部敬子というアナキズム/3童映社の映画「育児読本」/4「所有ではなく組織へ」/5「ばらの花しんぶん」
第2節 『母性愛』から『土曜日』を読む
1読者離れ/2堕胎禁止法をめぐる攻防/3カメラにむけた「人民戦線」のポーズ/4伊福部敬子への批判/5中井正一の『母性愛』と『土曜日』
●コラム 『疏水』と『かぐや姫』
第6章 松川事件、「大逆事件」
第1節 松川事件裁判弁護団のひとりとして
1「嵐の中の港」/2「そもそも統一戦線とは」
第2節 「大逆事件」再審請求
1 謎の男性/2「大逆事件」五〇年/3「大逆紀行」/4森近運平への共感/5請求棄却、交通事故
第7章 「国貞」わいせつ裁判
第1節 「文藝」と「わいせつ」と「裁判」
1『文藝・わいせつ・裁判』の出版/2『チャタレー夫人の恋人』
第2節 「国貞」わいせつ裁判の意義
1「国貞」裁判の経過/2「わいせつ」と「表現の自由」/3「表現の自由」の弁護士たち/4「門戸は常に開かれねばならない」
●コラム 岡田正三と女性教養の会
第8章 能勢克男と京都プロレタリア文学運動史
第1節 プロレタリア文学時代
1「雑誌をつくりましょう」/2『(第二次)土よう日』/3「しんぶん 世間」/4科学の時代の『ゆらぎ』/5「下界の景色」の謎
第2節 『土曜日』の再出発
1第三次『土曜日』/2『新しい人』/3 京都プロレタリア文学運動史と能勢克男
●コラム 羽仁五郎と『東と西と』
第9章 「山科日記」の完成
第1節 治安維持法三部作
1「霖雨」と「地獄のさた」/2「山科日記」/3梯明秀『戦後精神の探究―告白の書』/4『暗い絵』を読む/5「山科日記」の完成
第2節 「表現の自由」がまもる人間の尊厳
1「枯れぬ雑誌」の系譜/2「現れたところがすべて」/3 反・転向声明書
終 章 隣人、能勢克男
あとがき
参考文献
