19世紀日本における服従と反抗
出版社: 文学通信
- 150年前の幕末維新期、山形県庄内地方では、わずか数十年間に大きな集団抗議が四つも起こった。
これらは経済的貧困によって引き起こされた、単純な「百姓一揆」ではない。その抗議は正義と公平性を求める運動であり、高官の不正行為に立ち向かった戦略と戦術は、驚くほど高度であった。
日本の歴史学者とは違う視点から、米国の文化人類学者が資料を駆使して明らかにした、その全貌。原著出版から30年、ようやく日本語訳を刊行。
「三方領知替」反対闘争、「大山騒動」、「天狗騒動」、「ワッパ騒動」。
従来集団的行動の分析の定番的観点とされてきた共同体、階級、党派は、本書ではこの四つの集団抗議の説明には役立たないとする。では何が集団抗議となっていったのだろうか?
【この本に書かれている出来事は約150年前に起こったものですが、地元の記憶の中に生き続けることができれば、正義を主張する地元の集団行動の力についての重要な教訓となるでしょう。19世紀の庄内の人々は、自分たちの利益を守るためには自ら立ち上がらなければならず、団結すれば成功できることを理解していました。その時代に真実であったことは、現時点でも真実のままです。】……「日本語版まえがき」より - 日本語版まえがき
序 文
第1章 19世紀の集団抗議における階級、共同体および党派
富から資本へ、支配される民から参加する民へ
19世紀日本についての歴史研究
19世紀に断絶はあったのか
第2章 庄内と酒井藩
収益性と不安定性―富と債務超過の機能
抗議、危機、改革、1630年–1830年
貢納と商業の諸関係
第3章 見事な領民たち―1840–41年の転封反対運動―
飢饉と藩の秩序
「貧乏大名」庄内へ? 幕府の転封命令
嘆願、集会、祈願
成功
第4章 従わない人々―1844年大山騒動―
酒と幕政
第5章 庄内の明治維新
藩による締め付けの強化
戊辰戦争と庄内藩の終焉
3回目の転封反対運動
酒田県が直面した天狗騒動と関連する問題
狩川組
上余目組
第6章 進取性と惰性―第二次酒田県―
第7章 石代納、改革の抑制および歳出の偽装
初期の嘆願運動―1874(明治7)年の冬から春にかけて
石代会社 1874(明治7)年8–9月
黒川組
一斉検挙
社会変革ではなく税をめぐる県への反感
第8章 ワッパ騒動の新たな展開―地方から中央へ―
森藤右衛門
三島通庸新県令と従来からの抗議
嘆願から法廷へ
第9章 中央政府の出番―沼間の取り調べと児島の裁判―
庄内における地租調査
沼間の取り調べ
沼間の報告書
児島の裁判
地租調査の結果
鶴岡県の終わり
児島裁判の判決
第10章 その後の経過
最終判決
森と庄内の政党
地租改正と松方デフレ
帰ってきた菅
農業における資本主義
第11章 まとめ
付録 春一番の米価と庄内藩年貢率(免)1697–1862年
訳者参考資料
1.酒井家 庄内藩の歴代藩主(第2、3、4章関係)
2.庄内藩から山形県になるまでの行政区分の変遷(第5、6章関係)
3.庄内藩の行政区画(第5章関係)
訳者解題
訳者あとがき
参考文献
人名索引