ロシアによる「抑止」の技法

ロシアによる「抑止」の技法

出版社: 芙蓉書房出版
著者: ドミトリー(ディマ)アダムスキー、岡田 美保
  • 西側の論理とは異なるロシア的抑止の特質を戦略文化を切口に明らかにし、ウクライナ戦争の事例にまで踏み込んで分析した研究書
  • シアは何を抑止し、いかに強制するのか―その鍵を握る戦略文化と抑止を解明しウクライナ戦争の前後を貫く行動の源泉を読み解く。更に戦略的抑止を核抑止だけでなく全領域的・ツール横断の発想として捉え直す内容となっている
  • ロシアは何を抑止し、いかに強制するのか――本書は、その鍵を握る「戦略文化」と「抑止」を正面から解き明かす一冊である。第一章では、戦略文化論と抑止論という二つの分析概念を定義し、研究動向を概観。以後の章で用いる用語と視座を提示し、読者が本書の主張を素早く把握できる設計となっている。
    本書の白眉は、ロシアの「強制」行動の系譜を辿り、その文化的・理念的・歴史的要因を掘り下げることで、ウクライナ戦争の前後を貫く行動の源泉を読み解く点にある。これにより、ロシア的抑止の理論と実践の今後の展開を見通すための思考枠組みが手に入る。
    さらに本書は、核抑止だけでなく、政治エリートから社会・価値観へと広がる「情報抑止」や「あらゆるものの抑止」といった近年の概念を射程に収め、ロシアの「戦略的抑止」を全領域的・ツール横断の発想として捉え直す。戦略環境の不確実性が増す現在、政策・安全保障・国際政治を学ぶ者にとって実務的示唆に富む内容である。
    国際政治・安全保障の基礎を学ぶ大学生から、政策立案に携わる実務家まで。ロシアをめぐる意思決定の「内側」を読み解くための、必携の一冊である。
    【目次】
    序章
     一 本書の主な議論
     二 本書の貢献
     三 構成
    第一章 戦略文化論と抑止論の研究動向
     一 戦略文化: 定義と適用
     二 概念の特性
     三 戦略文化の起源
     四 抑止研究と本書の位置づけ
    第二章 ロシア的抑止論の起源
     一 核及び通常戦力の側面におけるロシア的抑止
      (一)ソ連時代における抑止の否定
      (二)抑止と核による均衡への転換
      (三)戦略抑止の究極目標
     二 ロシア的な核及び通常抑止:そのメカニズムと独自性
      (一)語源的・論理的相違
      (二)より広い理論的基盤と適用範囲
      (三)さまざまな類型: 懲罰的・拒否的vs.武力による抑止と武力を用いない抑止
      (四)「注文仕立て」であること
      (五)領域横断性
     三 情報分野におけるロシア的抑止
      (一)はじめに
      (二)情報抑止: 概念的起源
      (三)情報抑止: メカニズムと独自性
    第三章 ロシア的抑止の文化的起源
     一 文化的要因の形跡
      (一)全体論弁証法認知スタイルと戦略へのアプローチ
      (二)理論と実践の分離
      (三)ロシアの戦争文化における士気及び心理的要因vs.物質的要因
     二 理念的要因の形跡
      (一)反射統制と認識操作
      (二)軍事的狡知と欺瞞
      (三)積極工作及び能動策
      (四)敵への持続的関与
     三 歴史的遺産の形跡
      (一)オガルコフの戦争観と軍事技術革命の伝承
      (二)合理的十分性の伝承
      (三)戦力と手段の相関性評価の手法の伝承
    第四章 批判的検討と限界点
      (一)強制作戦: 一般的モデル
      (二)シグナリングの課題
      (三)評価の課題
      (四)改善の見込みはあるのか?
    第五章 ウクライナでの戦争と今後の研究課題
     一 ウクライナでの戦争
     二 今後の研究課題
      (一)ロシアの戦略思想における予防
      (二)新興技術と化学兵器
      (三)情報強制の進化
      (四)宗教と強制
      (五)残虐性︑強制︑ロシア的な戦争態様
      (六)外国からの学習
      (七)抑止研究と文化横断的研究
    結論
     一 ロシア的抑止の起源
     二 戦略文化の影響
      (一)文化的要因
      (二)理念的起源
      (三)歴史的伝統
     三 批判的検討
     四 今後の研究の方向性
    訳者解説
    原注
  • 序章
     一 本書の主な議論
     二 本書の貢献
     三 構成
    第一章 戦略文化論と抑止論の研究動向
     一 戦略文化: 定義と適用
     二 概念の特性
     三 戦略文化の起源
     四 抑止研究と本書の位置づけ
    第二章 ロシア的抑止論の起源
     一 核及び通常戦力の側面におけるロシア的抑止
      (一)ソ連時代における抑止の否定
      (二)抑止と核による均衡への転換
      (三)戦略抑止の究極目標
     二 ロシア的な核及び通常抑止: そのメカニズムと独自性
      (一)語源的・論理的相違
      (二)より広い理論的基盤と適用範囲
      (三)さまざまな類型: 懲罰的・拒否的vs.武力による抑止と武力を用いない抑止
      (四)「注文仕立て」であること
      (五)領域横断性
     三 情報分野におけるロシア的抑止
      (一)はじめに
      (二)情報抑止: 概念的起源
      (三)情報抑止: メカニズムと独自性
    第三章 ロシア的抑止の文化的起源
     一 文化的要因の形跡
      (一)全体論弁証法認知スタイルと戦略へのアプローチ
      (二)理論と実践の分離
      (三)ロシアの戦争文化における士気及び心理的要因vs.物質的要因
     二 理念的要因の形跡
      (一)反射統制と認識操作
      (二)軍事的狡知と欺瞞
      (三)積極工作及び能動策
      (四)敵への持続的関与
     三 歴史的遺産の形跡
      (一)オガルコフの戦争観と軍事技術革命の伝承
      (二)合理的十分性の伝承
      (三)戦力と手段の相関性評価の手法の伝承
    第四章 批判的検討と限界点
      (一)強制作戦: 一般的モデル
      (二)シグナリングの課題
      (三)評価の課題
      (四)改善の見込みはあるのか?
    第五章 ウクライナでの戦争と今後の研究課題
     一 ウクライナでの戦争
     二 今後の研究課題
      (一)ロシアの戦略思想における予防
      (二)新興技術と化学兵器
      (三)情報強制の進化
      (四)宗教と強制
      (五)残虐性︑強制︑ロシア的な戦争態様
      (六)外国からの学習
      (七)抑止研究と文化横断的研究
    結論
     一 ロシア的抑止の起源
     二 戦略文化の影響
      (一)文化的要因
      (二)理念的起源
      (三)歴史的伝統
     三 批判的検討
     四 今後の研究の方向性

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