自前の思想

自前の思想

出版社: 京都大学学術出版会
著者: 清水 展、飯嶋 秀治
  • 今こそ学問は、課題がある現場に身を置き、考え行動することが求められている。学問が社会に向きあう在り方を10人の先人から学ぶ。
  • 今,学問は科学は,社会と本当に向き合っているだろうか? 社会を解釈するに止まってはいないだろうか? グローバル化,ネオリベラル経済,AIシステムが暮らしの場に浸透する一方,地球環境問題は深刻化し災害やパンデミックが社会を脅かす。こうした状況がもたらす危機と可能性を前にして,我々には,課題がある現場に身を置き,そこから考え行動することが求められているのだ。時代の激動に思いがけず巻き込まれながら,時代と強く向き合った10人の先人――中村哲,波平恵美子,本多勝一,石牟礼道子,鶴見良行,中根千枝,梅棹忠夫,川喜田二郎,宮本常一,岡正雄――に学び,学問・科学の責務を問う。
  • はじめに―現場と社会のつなぎ方 [清水 展]
    私の経験から
    一〇人の先達
    時代の子として
    フィールドワークから自前の思想へ
    字義通りのフィールド=ワーカー
    1章 中村 哲 [清水 展]
    1 中村医師への畏敬
    2 「トウキョウ」を撃て
    3 野に身を置く文化人類学者として
    4 現場主義、あるいは現地の困窮者を最優先する応答の実践
    5 丸腰から放つ礫
    おわりに
    微笑み越しの覚悟と戦略
    2章 波平恵美子 [青木恵理子]
    1 曇りなきまなこで
    2 生まれ来たりし時より―原体験と立ち位置
    3 「今―ここ」を見据えた人類学
    4 再び、波平さんをめぐる私の原体験から
    5 応答する思想
    調査する側とされる側、観念的同一化と共感
    3章 本多勝一 [伊藤泰信]
    1 「アイヌネノアンアイヌ」(人間らしい人間)
    2 人類学へ/からの影響
    3 本多は「本」を書いていない―遡及的/同時代的評価
    4 立場のない報道はありえない
    5 調査される者の眼
    6 二分法と同一化
    おわりに
    「決して往生できない魂魄」を知の合わせ鏡として刻む
    4章 石牟礼道子 [飯嶋秀治]
    1 水俣での出遭い
    2 「決して往生できない魂魄」との出遭い
    3 『苦海浄土』はどう理解されたか
    4 覚悟と表現と距離と―石牟礼道子から学ぶもの
    うちなる壁の向こうへ―知米派知識人の「脱米入亜」
    5章 鶴見良行 [赤嶺 淳]
    1 知米派知識人・鶴見良行
    2 アジアを歩き、アジアを学ぶ
    3 『バナナと日本人』をめぐって
    4 点と点をつなぐ―マルチサイテッド・アプローチの可能性
    5 偶発性の絡まりあいを読み解く
    遠くから眺め、近寄って凝視し、比較して考える
    6章 中根千枝 [清水 展]
    1 日本社会を外から見る―社会人類学者・中根千枝の位置取りとスタイル
    2 個人的な思い出から
    3 華やかなデビューに至る道―フィールドワークと異文化体験
    4 ベストセラー『タテ社会の人間関係』のインパクト
    5 草の根の国際協力へのコミット―「協力隊を育てる会」の会長として
    6 結 語―精神の自由人
    「二番煎じは、くそくらえ、だ」
    7章 梅棹忠夫 [山本紀夫]
    1 「みんぱく」
    2 昆虫少年から探検家へ 
    3 ポナペ島調査
    4 大興安嶺探検
    5 モンゴルにて
    6 牧畜文化への目ざめ
    7 学問の横あるき
    8 雌伏の時代
    9 「旭日昇天教」
    10 名誉と挫折と
    11 漆黒の闇のなかで
    12 「月刊 うめさお」
    13 「二番せんじは、くそくらえ、だ」
    21世紀に届く文明論的・生命論的応答
    8章 川喜田二郎 [関根康正]
    1 不均衡な人類学的遺産
    2 川喜田二郎先生との出会い―近代西洋文明に抗する本物の学者の迫真性
    3 ヒマラヤ・チベット・ネパールでの民族誌的業績とその社会的共有
    4 KJ法・W型問題解決モデル・野外科学
    5 海外技術協力にみるアクション・リサーチ
    6 移動大学・参画社会・チベット文明
    7 応答の人類学への示唆
    ニヤッと笑って「いかがわしい奴っちゃのお」
    9章 宮本常一 [香月洋一郎]
    1 思想の核としての郷里
    2 二つの視座の交錯点から
    3 ある日の宮本常一
    4 「在野」という立ち位置
    5 歩き続け 書き続け そしてなによりも語り続けて
    6 深夜の研究会
    7 「みんなが助かるんじゃが」
    8 可能性としての民俗誌
    9 立ち戻り得る基点
    想外の挑戦―戦地の民族政策と民族研究所設立運動
    10章 岡 正雄 [清水昭俊]
    1 戦時の民族学、戦後の文化人類学
    2 民族学を志すまで
    3 文献研究から現実の民族へ、中欧バルカンを踏査
    4 民族研究所設立運動
    5 戦時の深み―踏み込みと抑制
    6 「時」に従う、に乗る、に逆らう、を越える―結語
    自前の思想の「向こう側」へ―おわりに [飯嶋秀治]
    1 遭遇―自前の思想は遭遇したものへの応答から「はじまる」
    2 動員―自前の思想の応答はあらゆるものを「資源化する」
    3 共鳴―自前の思想は「徒弟化しない」
    4 自前の思想の「向こう側」へ
    索 引

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