私は本屋が好きでした

私は本屋が好きでした

出版社: 太郎次郎社エディタス
著者: 永江 朗
  • ヘイト本がつくりあげる〝憎悪の棚〟を直視し、熱くもなければ、かっこよくもない、書店と出版の仕事の実像を明らかにする。
  • 「ヘイト本」の15年は書店・出版業界のなにを象徴し、日本社会になにをもたらすのか。見て見ぬふりでつくり上げられてきた〝憎悪の棚〟を直視し、ごく〝普通〟で凡庸な人たちによる、書店と出版の仕事の実像を明らかにする。
  • 反日、卑劣、心がない。平気でウソをつき、そして儒教に支配された人びと。かかわるべきではないけれど、ギャフンと言わせて、黙らせないといけない。なぜなら○○人は世界から尊敬される国・日本の支配をひそかに進めているのだから。ああ〇〇人に生まれなくてよかったなあ……。
    だれもが楽しみと知恵を求めて足を運べるはずの本屋にいつしか、だれかを拒絶するメッセージを発するコーナーが堂々とつくられるようになった。そしてそれはいま、当たりまえの風景になった──。
    「ヘイト本」隆盛の理由を求めて書き手、出版社、取次、書店へ取材。そこから見えてきた核心は出版産業のしくみにあった。「ああいう本は問題だよね」「あれがダメならこれもダメなのでは」「読者のもとめに応じただけ」と、他人事のような批評に興じるだけで、無為無策のまま放置された「ヘイト本」の15年は書店・出版業界のなにを象徴し、日本社会になにをもたらすのか。
    書店・出版業界の大半が見て見ぬふりでつくりあげてきた〝憎悪の棚〟を直視し、熱くもなければ、かっこよくもない、ごく〝普通〟で凡庸な人たちによる、書店と出版の仕事の実像を明らかにする。
  • ◎すこし長いまえがき─不愉快な旅だちのまえに 
    本屋はただそこにあるだけで影響力がある/モラルハザードが起きやすい流通システム/「返品しない」のも判断/書店員も組織の一員/どんどんネトウヨが喜ぶ社会に/ヘイト本を「ヘイト本」と呼ぶのは適切か/インターネットが生んだ出版トレンド/雑誌・ムックから書籍・新書へ/ヘイト本とポルノの類似性
    1◎ヘイト本が読者に届くまで
    ■町の本屋のリアル─書店経営者座談会
    「こういう本を望んでいたんだよ」/女性が『WiLL』を買うのを見たことがない/反対する本は、どれもこれも売れそうにない/中高年男性の癒しとファンタジー/どの店でも売れるわけではなかった/新書はブームのきっかけになりやすい/中韓経済崩壊本は『ムー』と読者が重なる/買う・買わないはお客さんが判断すること/いちど出版しておいて、引っこめるのはおかしい/女性客が多い店で「成人向け」は置けない/営業に支障が出るのは怖い/店が小さくったって、間口は狭めちゃだめ
    ■チェーン書店─ 個人の意思だけでは決められない
    すべてがオートマチック─ 某大手チェーン本部の場合/どう扱うかは各店にまかされる─あゆみBOOKSの場合/書店人としての意見を旗幟鮮明にする─ジュンク堂書店・福嶋聡の場合/クレームへの対応─「アリーナとしての書店」の困難①/「書店員の仕事」ができない─「アリーナとしての書店」の困難②/どんな本も積極的に排除はしない─某大手書店の場合
    ■出版取次─まったくの透明な装置
    出版社と書店のあいだを〝取り次ぐ〞会社/「出版社がつくった初版部数を基本、信頼はする」/「そもそも、ヘイト本のブームなんてありましたっけ?」/担当書店の返品率をいかに下げるか/ヘイト本ブームとPOSは無関係?/たんに入荷したから並べているだけ
    ■出版社─「売れるから」と「売れなくても」
    ちょっと新しい見方の本/売れたジャンルをイナゴのように食いつくす/歴史に名を残す出版社の〝大転回〞/パワハラとヘイト本/ひと炎上三万部/〝自己実現〞のための本づくり
    ■編集者─かなりの部分、仕事だからやっている
    インターネットが重要な供給源/編集者は仕事だからやっている/青林堂で〝ピンチヒッター〟/読むのは意外と〝知識層〟/『マンガ嫌韓流』刊行の立役者もあの人?/保守系の本をつくる人にはバランス感覚が必要
    ■ライター─願望をなぞり、陰謀をほのめかす
    「こんなの読むのはバカだよね」/ヘイト本の読者はネット右翼ではない/ネット右翼誕生の伏流、『戦争論』/保守デフレ時代を生きのこる「経済右翼」/ネットと無知の融合が生んだ都市伝説/民主化以前の韓国をみんな知らない/自信がないから日本自賛本を読む/ヘイト本ブームが去っても
    2◎ヘイト本の現場を読み解く
    ■川上から川下まで─ 出版界はアイヒマンか
    ヘイト本はポルノとは違う/ホロコーストも、こんなふうに
    ■書店への幻想─書店員は本を選べない
    セレクト書店はヘイト本を選ばない/「書店=アリーナ」論は有効か/本屋大賞の成功と「カリスマ書店員」と/ひろがる誤解、ふくらむ幻想/選ばないのか、選べないのか
    ■取次の岐路─いまのままでは維持できない
    POSデータが生んだ画一化とランキング依存/出版業界の外から迫る危機
    ■出版社の欺瞞─だれも責任をとらない
    不本意な仕事の結果にも責任がある/本当は出してはいけないものを知っている/編集者の名を本に明記するべき
    ■ネットと本とマスメディア─ 刷りこまれる嫌悪感
    「ヘイト本を買うのは普通のこと」/マスメディアによる日常的な刷りこみ/自分の店にマイノリティが来ると思っていない/現代でも人間は簡単に扇動される/マスメディアへの不満のはけ口/わたしたちになにができるか
    ◎すこし長いあとがき─変わらなければ、滅ぶだけ 
    この難題とどう向きあえるか/答えは出ているのに変われない現状/日本の出版産業の欠陥のあらわれ/〝人〟が働く本屋をとりもどすには/パターン配本と委託制をやめなければ変われない/ヘイト本が客を遠ざけてはいないか/魅力のない本屋は滅びるのだから

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