モヤモヤする正義 感情と理性の公共哲学

モヤモヤする正義 感情と理性の公共哲学

出版社: 晶文社
著者: ベンジャミン・クリッツァー
  • 正義にまつわるモヤモヤに「答え」を!気鋭の哲学者による、感情に流されない理性に基づく議論の必要性を説く政治哲学のテキスト。
  •  「表現の自由は大切だが、あまりに攻撃的な表現は許容すべきでない」「少数派や女性に対してより配慮すべきだが、多数派や男性のことが無視されるのもおかしい」
    ……意見が対立するさまざまな問題について、多くの人はどちらの「正義」にも同意や共感を示し揺れている。
    こうしたに正義まつわるモヤモヤに対し、どの意見が正しいのか、社会の規範はどうあるべきなのか、その「答え」を提示する政治哲学的論考。キャンセル・カルチャー、マイクロアグレッション、トーン・ポリシング、弱者男性論など重要な概念・議論を題材に、感情に流されない「公共的理性」による問題解決を試みる画期的なテキスト。
    「晶文社スクラップブック」の連載に大幅加筆・全面改稿した大ボリュームで!
    ■帯文/森本あんり、マライ・メントライン
    理性を公共的に使用せよ――これは多数者と少数者双方への挑戦である
    ──森本あんり
    時代を覆う「正義」と「権利」のインフレ、その核心を突く本書に刮目すべし!
    ──マライ・メントライン
    “世の中で起きている問題に向き合うときに、良さや正しさなど、規範に関する思考や感情を避けることはできない。/本書は「規範」を堂々と取り扱う。現状目立っている、「正義」の問題をあげつらったりイヤだと拒否したりすることで済ませるのではなく、認めるべきところは認め肯定すべきところは肯定しながら、それに代わる別の「正義」を提示していく。/わたしの目的は、すこしでも物事を正しくして社会を良くすることだ。読者の方々にも、本書を通じて「規範」について考えをめぐらし、自分でも「正義」をきちんと主張できるようになっていただければ幸いである。(「まえがき」より)”
    【目次】
    まえがき
    第一部 社会的批判と自由の問題
    第一章 キャンセル・カルチャーの問題はどこにある?
    第二章 「思想と討論の自由」が守られなければならない理由
    第二部 マイノリティとレトリックの問題
    第三章 「特権」について語ることに意味はあるのか?
    第四章 トーン・ポリシングと「からかいの政治」
    第五章 マイクロアグレッションと「被害者意識の文化」
    第三部 男性学と弱者男性の問題
    第六章 男性にも「ことば」が必要だ
    第七章 弱者男性のための正義論
    終章 これからの「公共性」のために
    あとがき
  • 【目次】
    まえがき
    ■第一部 社会的批判と自由の問題
    第一章 キャンセル・カルチャーの問題はどこにある?
    1 「キャンセル・カルチャー」が問題視されるようになった背景
    2 デュー・プロセスの侵害
    3 キャンセルをする人たちはどこが「おかしい」のか?
    第二章 「思想と討論の自由」が守られなければならない理由
    1 アカデミアでは「真実」よりも「社会正義」が重視されている?
    2 「思想と討論の自由」を擁護するJ・S・ミルの議論
    3 ロナルド・ドゥオーキンの「表現の自由」論
    4 ネットやマスメディア、書籍の議論があてにならない理由
    5 「言論の闘技場」としてのアカデミア
    ■第二部 マイノリティとレトリックの問題
    第三章 「特権」について語ることに意味はあるのか?
    1 特権理論とはなんだろうか
    2 レトリックとしての特権理論
    3 「物象化」された特権理論
    4 在日外国人の視点から「日本人特権」を考えてみる
    5 アイデンティティ・ポリティクスが引き起こす問題
    6 いまこそ「公共的理性」が必要だ
    第四章 トーン・ポリシングと「からかいの政治」
    1 「トーン・ポリシング」という概念とその問題
    2 「怒り」に関する哲学者たちの議論
    3 マジョリティは「理性的」であるか?
    4 公共的理性を毀損する「からかいの政治」
    5 「トーン・ポリシング」というレトリックがもたらす弊害
    第五章 マイクロアグレッションと「被害者意識の文化」
    1 「マイクロアグレッション」理論とはなにか
    2 「名誉の文化」「尊厳の文化」から「被害者意識の文化」へ
    3 「感情的推論」に対処するための認知行動療法とストア哲学
    4 在日アメリカ人の目から見たマイクロアグレッション
    ■第三部 男性学と弱者男性の問題
    第六章 男性にも「ことば」が必要だ
    1 男性の不利益や被害は社会から無視されている?
    2 ひとりの男性としての経験と感情
    3 なぜ現在の「男性学」は頼りにならないか
    4 「弱者男性論」の有害な影響
    5 男性のための「ことば」をどう語ればいいか
    第七章 弱者男性のための正義論
    1 「理念」に基づいた弱者男性論が必要な理由
    2 恋人がいないことや結婚できないことの不利益とはなにか?
    3 リベラリズムと弱者男性
    4 フェミニズムと「幸福度」と弱者男性
    5 潜在能力アプローチと弱者男性
    6 「あてがえ論」と「上昇婚」
    7 弱者男性の問題に社会はどのように対応できるか
    終章 これからの「公共性」のために
    1 「壁と卵」の倫理とその欠点
    2 インターネット/SNS時代の「公共性」という難問
    3 「理性的」で「中立的」な政治はあり得るのか?
    4 フランクフルト学派の批判理論
    5 討議、承認、自尊
    6 リベラリズムと理性の未来
    あとがき

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