
質的探究 法社会学
出版社: 北大路書房
- 法現象の単なる定性研究技法に留まらない「質的探究」の現在地と今後を指し示す論集。質的探究に関心のある研究者必携の書。
- 法現象の単なる定性研究技法ではなく,社会現象のゆたかな経験的文脈観察としての「質的探究」(Qualitative Inquiry)の指針化を企図した体系論文集。実際に研究実践ないし批判的考察をとおして,その理論的・方法論的意義を考察。質的探究領域の現在地と今後の可能性を指し示す研究者必携の書。
- 序─法の質的探究の目標・方法・理論(樫村志郎)
1 質的探究活動の目標としての「規則性」
2 対象の理解のための「規則性」の選択
3 「法実践」の方法
第1部 法の質的探究──その構築
質的探究の認識論的マッピング(和田仁孝)
§Ⅰ はじめに
§Ⅱ 埋め込まれた認識論と質的探究──類型1
§Ⅲ 認識論的ジレンマと質的探究──類型2
§Ⅳ 認識論的転回と質的探究──類型3
§Ⅴ おわりに
科学者の人間モデルと社会成員の人間モデル──EMCA研究は「用いられるべき理由」を語れるか(小宮友根)
§Ⅰ はじめに
§Ⅱ “Dope” 概念再訪
§Ⅲ 社会成員にとっての人間モデル
§Ⅳ 人間モデルとエスノメソドロジー的無関心
§Ⅴ おわりに
法の言説分析の可能性(仁木恒夫)
§Ⅰ はじめに
§Ⅱ 言説による社会の構築
§Ⅲ 法の言説実践への視角
§Ⅳ 言説空間の動態的分析
§Ⅴ おわりに
インタビュー・データの「質的」探究の可能性(山田恵子)
§Ⅰ はじめに
§Ⅱ 量的探究型/質的探究型インタビューにおけるデータの利用方法
§Ⅲ 検討
§Ⅳ おわりに
質的研究とドキュメント(土屋明広)
§Ⅰ はじめに
§Ⅱ ドキュメントに関する議論
§Ⅲ 性質条件について
§Ⅳ 解釈妥当性条件について
§Ⅴ おわりに
アフリカ民族誌を出来事の連なりで書く──願望と可能性を語る質的探究の試み(石田慎一郎)
§Ⅰ はじめに──現地の筋書きと論理で民族誌を書く
§Ⅱ フィールドワーク──筋書きを発見する8つの手法
§Ⅲ イゲンベ民族誌──出来事を意味づけ,未来に開く3つの論理
§Ⅳ おわりに──出来事が人間の願望と未来の可能性を語る
法社会学研究における参与観察の可能性と課題(吉岡すずか)
§Ⅰ はじめに
§Ⅱ 参与観察の独自性
§Ⅲ 参与観察に入るには
§Ⅳ あなたは何者なのか──参与度合とポジショナリティ
§Ⅴ フィールドノーツ──記述方法とその分析手法
§Ⅵ 参与観察研究をいかに産み出すか
規範,法,妥当──経験的研究のひとつのプログラム(高橋 裕)
§Ⅰ はじめに
§Ⅱ 法と規範の「多くの顔」
§Ⅲ 「法」の概念を検討する意味
§Ⅳ 規範の「妥当」
§Ⅴ 「法の妥当」の生成過程の経験的分析
§Ⅵ ヴェーバーに立ちかえって
§Ⅶ おわりに
第2部 法の質的探究──その実践
「エスノメソドロジー・会話分析」による「質的探究」──緊急通報における「法」の達成(北村隆憲)
§Ⅰ はじめに──本稿の目的
§Ⅱ エスノメソドロジーと会話分析
§Ⅲ エスノメソドロジーと会話分析による社会探究の考え方
§Ⅳ 緊急通報の相互行為における「法」の達成── 1つの例証として
§Ⅴ エスノメソドロジー・会話分析による「質的探究」
質問-応答連鎖を通した裁判員への知識提供──応答の宛先の選択に示された裁判官の指向の分析(森本郁代)
§Ⅰ はじめに
§Ⅱ エスノメソドロジー・会話分析研究と裁判員制度
§Ⅲ 分析データ
§Ⅳ 分析
§Ⅴ おわりに
当事者の働きかけに応じない調停戦略(李 英)
§Ⅰ はじめに
§Ⅱ 当事者の主張や要求に対する調停者の表現方法
§Ⅲ 模擬調停データの分析
§Ⅳ おわりに
コミュニケーション行為としての法情報──川島法学の受容研究からテクスト分析の価値を再考する(郭 薇)
§Ⅰ 法社会学におけるテクスト分析の現状整理──内容中心志向を超えて
§Ⅱ 川島研究におけるテクスト分析の現況──川島著作の「非一貫性」と読み手
§Ⅲ 書き手と読み手との相互作用──1950年代の『婦人公論』分析を例に
§Ⅳ 読み手の主体性──中国の学術文献を対象とする川島著作の引用分析
§Ⅴ まとめ
「実験臨床法社会学」を可能にするものとしてのエスノメソドロジー──たとえば,コミュニケーション・トラブルは,もっと詳細に,ローカルに,偶有的に記述されるべきである(樫田美雄)
§Ⅰ 21世紀には「実験臨床法社会学」が必要だし,私は目指している
§Ⅱ 「実験臨床法社会学」の例示──日常会話ルールの偶有的選択的適用
§Ⅲ まとめ
第3部 法の質的探究をめぐる省察
「法」の探究と「法則」の探究(阿部昌樹)
インタビュー調査とデータの基本的性質──「アカウントの社会学的解釈」論文から改めて考える(藤原信行)
社会運動のエスノメソドロジー──質的探究の展開へ向けて(大塚 浩)
量的研究にとっての質的研究の意義──「責任」をめぐる議論の検討を通して(上石圭一)
樫村法社会学にみる法現象の質的探究──コメントに代えて(中山和彦)
etic/emicという対概念はEMCAにとってどのような意味を持つか──「紛争行動と文化的説明──日本の労働争議における文化の使用法」をめぐって(西澤弘行)
編者あとがき
監修者/編者/執筆者紹介