合意を生み出すEU

合意を生み出すEU

出版社: 明石書店
著者: 武田 健
  • EUにおいて交渉が難航した場合でも最終的に合意が成立することがある。その際に影響を与えるファクターを社会的アイデンティティの視点から分析。同調圧力、正当化される脅し、共感、社会的ジレンマという四つの場面に注目し、理論的・経験的に考察する。
  •  はしがき
    序章
     1.研究の目的
     2.分析の視点としての社会的アイデンティティ
     3.社会的アイデンティティは合意形成にどのように関わるのか
     (1)同調圧力
     (2)正当化される脅し
     (3)共感
     (4)社会的ジレンマ
     4.期待される貢献
     5.事例研究のために依拠した資料
     6.本書の構成
    第1章 EU内部の同調圧力
     1.はじめに
     2.社会的アイデンティティの共有と同調圧力
     3.分析枠組みと仮説
     (1)同調圧力をかける者
     (2)圧力のかけ方
     (3)同調圧力を受ける者
     (4)他のメンバーの立場
     4.リスボン条約の策定に至る過程
     (1)新条約に向かう経緯
     (2)同調圧力はどのようにかけられたのか
     (3)同調圧力の効果
     5.同調圧力がかかるための諸条件
     (1)圧力をかけた者はプロトタイプのリーダーか
     (2)圧力のかけ方はどうであったのか
     (3)圧力を受けた側
     (4)まわりのアクターの立場
     6.終わりに
    第2章 EUにおいて正当化される脅し
     1.はじめに
     2.EUにおいて使われる交渉戦術についての先行研究
     3.EUにおける脅しの特徴
     (1)脅しの形態
     (2)EUの制度環境を反映した脅し
     (3)脅す主体としての加盟国とEU諸機関
     (4)正当化される脅し
     4.脅しの効果についての仮説
     5.欧州委員数をめぐるニース条約交渉
     (1)交渉の経緯
     (2)EUアイデンティティ
     5.憲法条約交渉の中での特定多数決制をめぐる対立
     (1)交渉の経緯
     (2)信ぴょう性を持つ脅しと強まった孤独感
     6.ポーランドの法の支配をめぐる問題
     (1)司法の独立の侵食
     (2)制裁の脅し
     (3)ポーランド政府の抵抗
     (4)EUへの対抗意識
     7.終わりに
    第3章 共感に基づくEUの支援
     1.はじめに
     2.他者を助けたいという動機を生む共感
     3.共感の有無によって支援態度が形成される因果メカニズムと仮説
     (1)苦しんでいる者たちを仲間と認識しているか
     (2)助けることはフェアか
     4.分析の手法
     5.ユーロ危機における経済支援
     (1)「北」の諸国の支援への消極性
     (2)既存説明との関係性
     (3)ギリシャなどへの共感の低さ
     (4)ギリシャを仲間と捉える意識の後退とその理由
     (5)助けることはアンフェア
     (6)まとめ
     6.コロナ危機のもとでの経済支援
     (1)支援への積極性
     (2)既存研究に抜け落ちている視点
     (3)数々の共感の言葉
     (4)仲間意識の共有と支援への公平・公正感
     (5)まとめ
     7.2010年代からの移民・難民危機
     (1)当初の歓迎ムード
     (2)受け入れの抑制へ
     (3)既存研究の説明に共感の視点から追加できること
     (4)広がりに欠けた共感
     (5)共有されない仲間意識
     (6)不公平感の高まり
     (7)まとめ
     8.ウクライナからの避難民の支援
     (1)ウクライナ避難民の受け入れ
     (2)支援に積極的になった理由と共感の重要性
     (3)溢れ出た共感
     (4)共感が広がった理由
     9.終わりに
    第4章 社会的ジレンマとEUアイデンティティ
     1.はじめに
     2.社会的ジレンマからの協力
     (1)社会的ジレンマと公共財
     (2)公共財ゲームにおける協力
     3.協力を促すEUの制度環境
     (1)繰り返されるゲーム、コミュニケーション、約束
     (2)情報の共有
     (3)公平性の確保
     (4)監視と罰
     (5)評判
     4.EUアイデンティティによる合意促進の因果メカニズムと仮説
     5.事例の選択と分析手法
     6.デンマーク政府によるリスボン条約策定への自発的協力
     (1)協力行動の数々
     (2)政治指導者のEUアイデンティティの強さ
     (3)EU全体の利益と自国の利益を重ね合わせようとする認識
     7.リスボン条約へのチェコ政府・与党の一部の者たちの非協力的行動
     (1)非協力的な行動
     (2)クラウス大統領の社会的アイデンティティ
     (3)包摂されなかったチェコの政治家たち
     8.イギリスの憲法条約交渉での葛藤
     (1)ブレア首相のEUアイデンティティ
     (2)当初の建設的行動から非協力行動へ
     (3)ブレア政権を取り巻く状況
     (4)イギリスの非協力的行動の理由
     9.終わりに
    終章
     1.合意を生み出すEU
     (1)同調圧力
     (2)正当化される脅し
     (3)共感
     (4)社会的ジレンマ
     2.欧州統合理論への含意
     (1)新機能主義への含意
     (2)リベラル政府間主義への含意
     (3)ポスト機能主義への含意
     (4)構成主義との関係性
     3.限界と課題
     4.規範的な問いかけ
     (1)民主的な瞬間?
     (2)排除の問題
     (3)意識させられる不満
     5.結語
     文献一覧
     あとがき
     初出について
     索引

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