子どもの貧困と地域の連携・協働
出版社: 明石書店
- 子どもの貧困問題を、〈学校とのつながり〉をキーワードに読み解く。関連する法制度や学校の体制、実証的に行われた調査結果、福祉・心理・教育の各現場からの実践報告を踏まえ、貧困を抱える子どもたちのために何が必要で何ができるのかを考える。
- はじめに
第Ⅰ部 子どもの貧困問題と法制度・学校の体制
第1章 社会・地域を変える生活困窮者自立支援法と子どもの貧困対策法を目指して[鈴木晶子]
1.成立の背景と貧困に関する理解
2.子どもの貧困対策法
3.生活困窮者自立支援法
4.おわりに
第2章 「チーム学校」は子どもの困難に向き合う学校をつくれるのか――子どもの権利条約の視点から考える[川口洋誉]
1.はじめに
2.学習支援で見られる子どもたちの困難
(1)学習教室ピースにおける「居場所づくり」から
(2)競争主義的環境と子どもの貧困
3.子どもの困難と向き合える学校をつくるきっかけと教師への期待
4.「チーム学校」は子どもの困難に向き合う学校をつくれるのか
(1)「チーム学校」の概要
(2)「チーム学校」の意義と限界
5.教師が子どもの困難に向き合える教育条件整備をめざして
第3章 就学援助制度の活用に向けて――お金の心配なく学校生活を送ってもらうために[小長井晶子]
1.はじめに
2.就学援助制度の定義と近年の動向
3.就学援助の認定
(1)認定基準
(2)認定までの流れと支給時期
4.給付内容
5.特別支援教育の就学奨励
6.就学援助制度の課題と運用の市町村格差
7.学校における就学援助の課題
(1)制度の周知徹底、そのための学校教職員の理解
(2)就学援助を受給する保護者・子どもへの配慮の必要性
(3)私費負担の抑制
8.おわりに
第Ⅱ部 調査研究
第4章 調査から見る子どもの貧困と学校の関係[加藤弘通]
1.はじめに
2.どのような調査か?
3.貧困は何に影響するのか?
4.生活の苦しさの認知が子どもに及ぼす影響
5.子どもの貧困と学校の関係
6.学校ができることとできていること
第5章 生活困窮世帯の子どもに見られる社会関係と心理面の特徴[吉住隆弘]
1.はじめに
2.方法
(1)調査対象者
(2)調査項目
3.結果
(1)生活面及び学習面の特徴
(2)ソーシャルサポートについて
(3)QOLの特徴
4.まとめ
(1)生活面及び学習面の特徴
(2)ソーシャルサポートの特徴
(3)QOLの特徴
第6章 学校教員から子どもの貧困はどう見えているのか(その1)――教員の貧困問題の認識、支援経験、法制度の理解度[吉住隆弘]
1.はじめに
2.方法
(1)調査対象者
(2)調査項目
3.結果
(1)教員から見た生活困窮世帯の子どもが抱える問題
(2)教員から見た生活困窮世帯の親が抱える問題
(3)教員の支援経験
(4)法制度の理解度
4.まとめ
(1)教員から見た生活困窮世帯の子ども及び親が抱える問題
(2)教員の支援経験
(3)法制度の理解度
第7章 学校教員から子どもの貧困はどう見えているのか(その2)――教員が感じている貧困の現状と支援の課題[吉住隆弘]
1.はじめに
2.方法
(1)インタビュイー
(2)調査方法
3.結果
(1)インタビュイーA(女性、30代、公立小学校・教諭)
(2)インタビュイーB(男性、30代、公立小学校・指導主事)
(3)インタビュイーC(男性、30代、公立小学校・教諭)
(4)インタビュイーD(男性、50代、公立中学校・教頭)
(5)インタビュイーE(女性、40代、公立中学校・養護教諭)
4.まとめ
(1)学校における貧困の現状
(2)学外機関・組織との関わり
(3)教員が抱える課題
(4)学校が抱える課題
第8章 学習支援と新自由主義教育政策[川口洋誉]
1.はじめに
2.学習支援の政策的拡大と教育福祉論の視点
(1)学習支援の政策的拡大
(2)教育福祉論の視点と学習支援の意義・限界
3.生活困窮者自立支援法にもとづく学習支援事業とその課題
(1)生活困窮者自立支援法にもとづく学習支援事業の概要
(2)学習支援の地域格差
4.学習支援と新自由主義教育政策
(1)生活困窮者自立支援法に見られる貧困離脱の自己責任化の構図
(2)学習支援と新自由主義教育政策
5.学習支援と「教育的価値」の実現
第Ⅲ部 現場からの実践報告
第9章 スクールソーシャルワーカーは子どもの貧困対策の切り札になるか?――活動実態と職務内容の検討を中心に[上原裕介]
1.はじめに――子どもに「おせっかい」を続ける地域をつくる
2.学校における子どもの貧困の見え方と支援の実際
3.スクールソーシャルワーカーの職務内容
4.子どもの権利を守る主体としてのスクールソーシャルワーカーを目指して
第10章 「子どもの貧困」と心理支援学校現場から[桧谷真美]
1.はじめに
2.経済的な困り感が見えにくかったケース
3.非行の背景に生活の困り感があったケース
4.不登校の背景に生活の困り感があったケース
5.SSWとの役割分担が機能したケース
6.親が「困った」と言えずにいたケース
7.子どもの貧困問題における「心の専門家」の役割
第11章 なごや子ども応援委員会の活動から見るチーム学校[𠮷田将也]
1.はじめに
2.応援委員会の概要
(1)構成
(2)相談状況
(3)援助活動
3.応援委員会の特色
(1)常勤化
(2)異なる職種によるチーム
4.事例
(1)事例概要
(2)見立て・支援計画
(3)小学校での支援経過
(4)中学校での支援経過
(5)成果と今後の方針
5.教員との連携について
(1)相互理解
(2)校内のシステム作り
6.おわりに
第12章 生活困窮者自立支援制度における現場での支援[大熊宗麿・柳田智美]
1.名古屋における生活困窮者自立支援の取り組み
2.相談の対象者及び相談内容
3.センターが行う支援
4.事例
(1)家族の家計管理が問題となったケース
(2)子どもの不登校から家庭の支援がスタートしたケース
(3)父親の病気を契機に支援が必要となったケース
5.支援において大切にしていること
6.学校との連携・協働について
第13章 生活困窮者支援としての学習支援とは[吉住隆弘・伊藤千津]
1.はじめに
2.学習支援の概要
3.活動内容
(1)学習支援
(2)居場所支援
(3)関連機関との連携・協働
4.事例
(1)学習支援に参加するまでの経緯
(2)学習支援での様子
(3)関連機関との関わり
(4)その後の経緯
(5)学習支援が果たした役割
5.おわりに
第14章 民間のフリースクール・通信制高校に期待される役割[中島靖博]
1.はじめに
2.不登校と私立通信制高校の現状
3.通信制高校における就学支援金支給額から見えてくる貧困問題
4.フリースクール・通信制高校サポート校の実際の様子
5.事例
(1)毎日フリースクールに通ってくる所在不明な中学生のケース
(2)通信制高校卒業後、親が自己破産したケース
(3)生活保護を受けている家庭の高校生のケース
6.おわりに
第15章 生きづらさを抱える生徒に寄り添う校内居場所カフェ[鈴木晶子]
1.はじめに
2.校内居場所カフェとは何か
3.校内居場所カフェと日常と貧困
4.校内居場所カフェの機能
5.校内居場所カフェの成果検証の困難性
6.現場の実感から生まれた成果指標の項目
7.実践への示唆
第16章 子どものくらしに対する教師の感度[曽和重雄]
1.私の経験
2.教師の感度
3.同僚の先生の経験
4.教師のジレンマ
5.学校は今
6.PDCAサイクルとカリキュラム・マネジメント
7.全国学力・学習状況調査による教育内容・指導方法のコントロール
8.子どもの困難にアクセスする回路
第Ⅳ部 学校とつながるために
第17章 学校とつながるために子どもと学校を中心にした地域づくり[吉住隆弘・川口洋誉・鈴木晶子]
1.はじめに
2.学校とのつながりを難しくしているもの
(1)問題の見えにくさ
(2)学校の特性
(3)学校と教員が置かれた状況
3.学校とつながるためにできること
(1)貧困を知る機会の提供
(2)学校・教員へのアプローチ
(3)個人情報保護と子どもの権利
4.よりよい学校とのつながりのために
(1)支援へのニーズ
(2)学校の持つ強み
(3)外部性の問題
(4)つながりの拡がり
5.おわりに
索引