
カントと二一世紀の平和論
出版社: 人文書院
- カントの永遠平和の思想は現代世界においていかなる意義をもつのか。カント哲学全体を平和論として読み解く可能性をも切り拓く。
- 哲学研究者と平和活動の現場にかかわる著者が、二一世紀の世界を見据え、カントの永遠平和論を論じつつ平和を考える。カント哲学全体を平和論として読み解く可能性をも切り拓く意欲的論文集。
- 平和論としてのカント哲学
カント生誕から三百年、いまだアクチュアリティを失わないその永遠平和の思想は現代世界においていかなる意義をもつのか。哲学研究者と平和活動の現場にかかわる著者が、二一世紀の世界を見据え、カントの永遠平和論を論じつつ平和を考える。カント哲学全体を平和論として読み解く可能性をも切り拓く意欲的論文集。
「『永遠平和論』は、当時の世界情勢を鋭く観察し、それに応答すべく書かれていることにはすでに触れた。だが、だからといって、たんなる時事的な評論に留まるわけではない。仮にそうだったとすれば、二百数十年たった現代において意義をもつはずがないだろう。副題の「哲学的構想」が示すように、『永遠平和論』は一つの哲学的著作であって、まずカントの実践哲学(道徳哲学、法哲学、政治哲学)に直接に接続し、さらにはカントの歴史哲学、宗教哲学に接続する。」(緒言より)
◎目次
緒言(寺田俊郎)
第一部
義務としての永遠平和(御子柴善之)
核兵器廃絶と国際法の課題(川崎哲)
国家、戦争、平和――機能主義的解釈から見たカント平和論(松元雅和)
カントに正戦論はあるのか(石田京子)
第二部
「カントとヒロシマ」はどのようにして可能か(西田雅弘)
非理想理論としての国際法の構想――「予備条項」の役割をめぐって(金慧)
カントの永遠平和論――政治と宗教の観点から(菅沢龍文)
〈法〉中心の自由論――「世界市民的意図における普遍史の構想」から『永遠平和論』への思想展開に基づくカント法・政治哲学の自由主義的解釈への批判(桐原隆弘)
なぜ貧困は解決されなければならないのか――カントとヘーゲルにおける貧困の問題(山蔦真之)
カント『判断力批判』における主観的に判断する権利――「監視資本主義」と「〈好き〉の哲学」(古川裕朗)
第三部
「人間の間の平和状態は自然状態ではない、それゆえそれは創設されなければならない」――今日のグローバルな紛争に臨むカント政治哲学(マティアス・ルッツ゠バッハマン)(菊地了訳) - 緒言(寺田俊郎)
第一部
義務としての永遠平和(御子柴善之)
はじめに
一 戦争禁止の定言的命令
二 戦争禁止命令からの遡行
三 政治と道徳の間の二律背反
四 永遠平和への途上における公法体制
おわりに
核兵器廃絶と国際法の課題(川崎哲)
一 「核廃絶は理想、でも現実には抑止力」?
二 条約の規範的効力
三 検証による安全保障
四 抑止論の無責任性
五 国際法の恣意的適用を超えて
国家、戦争、平和――機能主義的解釈から見たカント平和論(松元雅和)
一 国家論におけるカント
二 戦争論におけるカント
三 平和論におけるカント
カントに正戦論はあるのか(石田京子)
はじめに
一 『法論』における正戦論?
二 カントを正戦論者とみなす根拠
三 正戦論批判としての「国際法論」
四 『永遠平和のために』と『法論』の差異
おわりに
第二部
「カントとヒロシマ」はどのようにして可能か(西田雅弘)
はじめに
一 『平和論』(一七九五年)の検証─ 伏線としての「道徳性」
二 カントの歴史哲学─ 「開化」「市民化」「道徳化」
三 カントの歴史哲学から「ヒロシマ」へ
結び
非理想理論としての国際法の構想――「予備条項」の役割をめぐって(金慧)
一 問題の所在
二 国際法の複数の次元――理想理論と非理想理論
三 予備条項の課題――移行期の国際法
四 歴史的不正義と自由――許容法則をめぐって
五 結語
カントの永遠平和論――政治と宗教の観点から(菅沢龍文)
はじめに
一 『宗教論』における「政治的公共体」と「倫理的公共体」
二 『道徳形而上学』における「法義務」と「徳義務」
三 「政治的最高善」としての永遠平和と、「倫理的公共体」における永遠平和
四 「倫理的公共体」における永遠平和
〈法〉中心の自由論――「世界市民的意図における普遍史の構想」から『永遠平和論』への思想展開に基づくカント法・政治哲学の自由主義的解釈への批判(桐原隆弘)
はじめに
一 カントの一七八四年の歴史哲学における歴史進歩の〈法則〉性と市民的自由の概念
二 カントの一七九五年の法・政治哲学とマイケル・W・ドイルのデモクラシー平和論
三 平和連合の〈自由主義的〉解釈への批判
四 合理的エゴイズムと法治主義
おわりに
なぜ貧困は解決されなければならないのか――カントとヘーゲルにおける貧困の問題(山蔦真之)
はじめに
一 カントと国家による貧困の救済
二 ヘーゲルと「賤民」の問題
三 カントと「慈善行為」の問題
おわりに
カント『判断力批判』における主観的に判断する権利――「監視資本主義」と「〈好き〉の哲学」(古川裕朗)
一 〈好き〉の哲学
二 〈好き〉であることの自由
三 監視資本主義――人間の自動化と道具主義
四 ビッグ・アザーと主観性の「追放」
五 自由の危機とニューロテクノロジー
六 〈好き〉の自由の存在意義
七 民主主義の新たな危機
第三部
「人間の間の平和状態は自然状態ではない、それゆえそれは創設されなければならない」――今日のグローバルな紛争に臨むカント政治哲学(マティアス・ルッツ゠バッハマン)(菊地了訳)
第一部 平和は法によっていかに創設され、維持されうるか――イマヌエル・カントの政治哲学の基本線
第一節/第二節/第三節/第四節
第二部 今日のグローバルな紛争に直面し、法を通じて平和を確保しようとするカントの要求
あとがき