
目的をもたない意志 増補版
出版社: 筑摩書房
- 大江健三郎、アントニオーニ、若尾文子、東京、戦争、恋愛論…夭折の天才作家、唯一のエッセイ集。妻・山川みどりの回想などを増補。解説 高崎俊夫
- 「私はいまはっきりと『文学』の価値を信じている。『文学』は、おそらく、人間の尊厳の補償である」(「灰皿になれないということ」)
「一人きりの人間は、じつは『人間』ではない。人間を『人間』にする最小の単位は一人ではなく、二人である」(「正常という名の一つの狂気」)
「『文学』は私にとり、まず私の存在のしかたであり、態度なのだ」。大江健三郎、サルトル、石原慎太郎、若尾文子、日劇、『去年マリエンバートで』、『キングコング対ゴジラ』……文学はもちろん映画や自由、恋愛まで作家がクールな文体で語るエッセイ集。新たな7篇のほか、妻・山川みどりによる作家との出会いや夫婦の生活をめぐるエッセイ4篇を増補した決定版。 - 第一章 灰皿になれないということ
灰皿になれないということ
〝自由〟のイメージ
永井龍男氏の「一個」 ―― 〈作家論の試み〉
サルトルとの出逢い
早春の記憶 ―― グレアム・グリーンをめぐって
大江健三郎『われらの時代』
高橋和巳『悲の器』
村松剛『文学と詩精神』
獅子文六『町ッ子』
可笑しい奴 ―― 西島大君のこと
江藤淳氏について
中原弓彦氏について
『遠来の客たち』の頃 ―― 曾野綾子氏について
石原慎太郎氏について
第二章 わが町・東京
わが町・東京
神話
「日々の死」の銀座
正常という名の一つの狂気 ―― 「りゅうれんじん」〈仮題〉の原作者として
恋愛について
日劇 ―― 都会化のシンボル
麻美子と恵子と桐子の青春
海を見る
山を見る――ある心象風景として
「ザ・タリスマン」白書
半年の後……
わがままな由来 ―― ペンネーム誕生記
あの頃
一通行者の感慨
私の良妻論
第三章 目的をもたない意志 ―― 映画をめぐる断章
増村保造氏の個性とエロティシズム ―― 主に『妻は告白する』をめぐって
映画批評家への公開状
目的をもたない意志 ―― マルグリット・デュラスの個性
『情事』の観念性
中途半端な絶望 ―― アントニオーニの新作をめぐって
『二十歳の恋』
『去年マリエンバートで』への一つの疑問
『かくも長き不在』
『シルヴィ』の幻
『肉体市場』
『恋や恋なすな恋』
『オルフェの遺言』
『キングコング対ゴジラ』
付録 『山川方夫全集』月報より 山川みどり
なにもかも忽然と
最初で最後の夏
ようこそ、はるばる二宮へ
三十三年目の二宮
批評家・エッセイストとしての山川方夫 高崎俊夫
ちくま文庫版のための編者あとがき 高崎俊夫