
デッサンモデル
出版社: ふらんす堂
- ◆史上初、リトアニアの長編小説を日本語訳
家族の呪縛を脱ぎ捨てよう。
世界を見つめて、筆を執ること。
それは、痛みと恐怖に引き裂かれた自己を統合する、
スリリングな実験なのだ。
帯:文月悠光(詩人)
◆自分の身体を、自分のものとして取り戻すまでの物語
美大生のV.は画家K.のデッサンモデルになるが、K.はモデルとして採用したV.を一切見ずに絵を描き続ける。
「見られない」という逆説的な体験のなかで、V.は自分の身体イメージへの葛藤がうまれ、さらにその根底にある母娘関係と正面から向き合っていくことになる。
K.はなぜV.を見ずに描くのか……その謎が解けるとき、V.とK.はそれぞれの呪縛からも解き放たれる――。
[装幀画]ミカロユス・コンスタンティナス・チュルリョーニス
[装幀]三橋光太郎
◆作品一部紹介
私はV.と書く、その方が楽だから。下向きにシュッ、上向きにシュッ、点。それでV.になる。痛くはない。(中略)私はK.とも書く、もうなぜなのかは説明しない。ただのK.、コンスタンティナスなどではない。一つの文字がどれほど多くを変えられるかは、驚くべきことだ。K.はK.であり、V.はV.だ。この世界には文脈はなく、青い花びらはなく、死を決意する者たちはなく、チュルリョーニスもなく、何もない。ただ文字と数字だ。こっちの方が早くて、簡単で、綺麗なのだから、そうしない理由はないはず。二人は人間でさえないかもしれない。
(「二〇二二年五月二十九日」より)
