「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を目指して

「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を目指して

出版社: 北大路書房
著者: 奈須 正裕、伏木 久始、大豆生田 啓友、加藤 幸次、佐野 亮子、松村 暢隆、金田 裕子、白水 始、涌井 恵、宇佐見 香代、坂本 明美、堀 真一郎、浅野 大介、堀田 龍也、荒瀬 克己
  • 個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実とは。この問いに,当代きっての著者たちが,理論と実践の両側面から迫る。
  • 全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実とは。本書ではこの問いに迫るために,当代きっての著者たちが,現状において考えうる多様な回答を理論と実践の両側面から検討する。「一人一人の子供を主語にする学校教育」の実現に向けて,いま何ができるのか。その手がかりがここにある。
    理論的・実践的に知るべき最上の知見がここにある。
    本書は,今後の教育を構想するうえで必要不可欠なマップであり,羅針盤となるだろう。なにより「幼児教育」を個別・協働の始まりとすることで本書に大きな広がりが生まれたことに,私は大いに勇気づけられた。――無藤 隆(白梅学園大学名誉教授)
    うまく学べない子がいたとき,それはその子に障害があるからでも,資質・能力に劣るからでもない。子どもの違った姿を見たいなら読んでほしい。本書は教師・学校が変わるための精良な示唆に満ちている。――藤原さと(「こたえのない学校」代表)
    ■主な目次
    刊行に寄せて 【荒瀬克己】
    第1章 「令和の日本型学校教育」と一斉指導の原理的問題 【奈須正裕】
    第2章 多様性に正対し,自立した学習者を育む教育の創造 【奈須正裕】
    第3章 一体的な充実を実現する2つの在り方 【奈須正裕】
    第4章 互恵的に深化・発展する個別最適な学びと協働的な学び 【伏木久始】
    第5章 幼児教育から見た個別最適な学びと協働的な学び 【大豆生田啓友】
    第6章 個別化・個性化教育の推進 【加藤幸次】
    第7章 個が自律的に学ぶ授業づくり 【佐野亮子】
    第8章 才能・2E教育の観点からの個別最適な学びと協働的な学び 【松村暢隆】
    第9章 協同的な学習における子どもの学びと育ち 【金田裕子】
    第10章 協調学習とは何か 【白水 始】
    第11章 多様な学び方を許容できる協同学習 【涌井 恵】
    第12章 奈良の学習法に見る個別最適な学びと協働的な学び 【宇佐見香代】
    第13章 フレネ教育に見る個別的・個性的な学びと協同的な学び 【坂本明美】
    第14章 一人ひとりがみんなと自由に 【堀 真一郎】
    第15章 経済産業省「未来の教室」プロジェクトが目指してきたもの 【浅野大介】
    第16章 ICTが拓く個別最適な学びと協働的な学びの新たな地平 【堀田龍也】
  • はじめに  奈須正裕
    刊行に寄せて  荒瀬克己
    第1章
    「令和の日本型学校教育」と一斉指導の原理的問題  奈須正裕
    1 「令和の日本型学校教育」
    (1)「日本型学校教育」の成果と強み
    (2)社会構造の変化と「日本型学校教育」の問題
    (3)個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実
    (4)「令和の日本型学校教育」が求めるもの
    2 近代の発明品としての一斉指導
    (1)安上がりが最大のメリットである教育方法
    (2)雀の学校
    3 一斉指導の何がどう問題なのか
    (1)「まだ終わっていない人も鉛筆を置いて」
    (2)適性処遇交互作用
    (3)学習計画の立案に子どもが参画する
    (4)学習権・発達権の全面的な保障
    第2章
    多様性に正対し,自立した学習者を育む教育の創造  奈須正裕
    1 一人ひとりを大切に扱う教育への志向
    (1)コンピュータを介して熟達者の知識を学ぶ
    (2)ITSが得意なこと,苦手なこと
    3 学校教育のパラダイムシフト
    (1)「教える」システムから「学ぶ」システムへ
    (2)ゆるやかな協働と学校の民主化
    (3)GIGAスクール構想の真価
    (4)規律訓練との決別と環境による教育
    (5)文脈情報の開示
    4 デジタルを実装した環境による教育
    (1)環境による教育と「情報技術パラダイム」
    (2)非同期型コミュニケーション
    (3)空間的制約からの解放
    (4)「対面×非同期」の可能性
    5 多様性が互恵的に学びを深める教室
    (1)意図的に計画された協働的な学び
    (2)ジグソー学習
    (3)子どもの問いかけから生まれる協働的な学び
    (4)社会的に構成される意味としての知識
    6 子どもたちと教師の協働による学校の創造
    (1)子どもたちが進める授業
    (2)子どもたちだけでできること,難しいこと
    第3章
    一体的な充実を実現する2つの在り方  奈須正裕
    1 異なるアプローチであるがゆえに可能となる豊かさ
    2 学習過程上で経時的に組み合わせる
    (1)奈良の学習法
    (2)日本の授業の伝統としての個別最適な学び
    (3)家庭学習と授業の一体的な充実
    (4)授業支援クラウドの活用
    (5)単元で構想する
    (6)あらためて単元とは何か
    3 カリキュラム上で共時的にバランスよく配置する
    (1)カラフルなカリキュラム
    (2)自由と民主主義を大切にする教育
    (3)2割を変えると子どもが変わる
    (4)子どもと教師が共に学び育つ学校
    4 各学校ならではの最適解・納得解を求め続ける
    第4章
    互恵的に深化・発展する個別最適な学びと協働的な学び  伏木久始
    1 個の学びが求められる意味
    (1)「個別最適」という用語の受け止め
    (2)「個別最適な学び」が求められる背景
    2 自律的な学習と他律的な学習
    (1)自律的な学び
    (2)他律的な学び
    (3)自律的な学びと他律的な学びの関係性
    (4)自律的・他律的な指導と子ども観・人間観
    (5)個別最適な学びと協働的な学びの前提としての自律的な学び
    3 「一人学び」と「学び合い」
    (1)一斉画一的な学習指導の限界
    (2)“個に応じた教育”の実践
    (3)「個に応じる」ということ
    (4)個別学習と集団思考
    4 「ダイバーシティ」と「インクルージョン」
    (1)多様性=ダイバーシティ
    (2)包摂=インクルージョン
    (3)多様性と包摂を意識した個別最適な学びと協働的な学び
    5 一人ひとりの子どもが身につけ,発揮していく力
    第5章
    幼児教育から見た個別最適な学びと協働的な学び  大豆生田啓友
    1 わが国の幼児教育・保育の特色
    (1)日本の幼児教育の特色:環境による教育
    (2)幼児教育の歴史的系譜と協働的な学び
    2 個別性と協働性が一体化する幼児教育の実践
    (1)個別性重視が「育ち合い」の基盤
    (2)遊びによる探究的な学び
    (3)「対話」による市民性の教育
    3 小学校との連携の新たな時代へ
    第6章
    個別化・個性化教育の推進
     ―「個に応じた指導」のよりいっそうの充実を求めて  加藤幸次
    1 「一斉授業」体制から「個に応じた指導」体制へ
    2 「 個に応じた指導」体制づくりのための方略(1)
     ―誰がイニシアチブを握っているか
    3 「 個に応じた指導」体制づくりのための方略(2)
     ―個をどの方向に向かって育もうとするのか
    4 「 個に応じた指導」体制づくりのための方略(3)
     ―「指導の個別化」と「学習の個性化」
    5 「 個に応じた指導」のための10の多様な学習プログラムをつくる
    6  まとめに代えて―現代的課題に対応する“協働的な学び”
    第7章
    個が自律的に学ぶ授業づくり
     ―単元内自由進度学習における教師の準備  佐野亮子
    1 単元内自由進度学習とは何か
    2 単元内自由進度学習に求められる教師の準備
    (1)単元構想
    (2)学習材開発
    (3)学習環境整備
    3 単元内自由進度学習の特徴と成果
    第8章
    才能・2E教育の観点からの個別最適な学びと協働的な学び  松村暢隆
    1 個別最適な学びと協働的な学びのための「才能」の理解
    (1)中教審答申と特異な才能の議論
    (2)特異な才能のある子の「才能」とは
    (3)才能児はどれくらいの割合でいるのか
    (4)個別最適な学びと協働的な学びのための才能特性の把握
    2 アメリカの才能教育の多様な方法
    (1)才能教育の形態・方法
    (2)すべての子どもの才能を活かす拡充モデル
    (3)才能特性を活かす個別最適な学びと協働的な学びの集団づくり
    3 学習・社会情緒的困難を伴う才能のある子
    (1)2E と 2E 教育
    (2)不協和感をもつ才能のある子(GDF)
    (3)才能に起因する困難に応じる個別最適な学びと協働的な学び
    第9章
    協同的な学習における子どもの学びと育ち―学びの共同体の挑戦  金田裕子
    1 個の学びと協同的な学びの関係を問う
    2 対象世界・他者・自己との対話的実践としての学びの概念への転換
    3 協同的な学びのデザインから生まれる学びとは
    (1)協同的な学びをデザインする:5年生の体育「マット運動」
    (2)互いに信頼し合う子どもたちの学び
    4  教室の社会的な関係を編み直す教師―信頼の譲渡
    (1)対話の過程で関係を編み直す:リヴォイシング
    (2)教師のリヴォイシングに見る信頼の譲渡
    5  仲間に聴かれ,大切にされる一人ひとりの尊厳と個性―倫理的実践への編み直し
    第10 章
    協調学習とは何か  白水 始
    1 「協調学習」のねらいと概要
    2 協調学習の原理としての2つの相互作用理論
    3 建設的相互作用を引き起こす「知識構成型ジグソー法」
    4 「知識構成型ジグソー法」の実践例と子どもの対話
    (1)いつでも起きる内外相互作用:小学校理科授業を例に
    (2)学びを深める建設的相互作用:小学校算数授業を例に
    (3)協働のなかでの個の学び:中学校社会科授業を例に
    5 教育の未来のための協調学習
    (1)「知識構成型ジグソー法」の特徴
    (2)大人の協調学習としての授業研究
    第11章
    多様な学び方を許容できる協同学習  涌井 恵
    1 協同学習について
    2 協同学習がうまく成立するための6つの要素
    3 多様な子どもが活躍できる授業の実践例
    (1)学び方自己選択式協同学習による授業の流れ
    (2) 学び方自己選択式協同学習の実践例:小学1年生 国語科 物語文「スイミー」
    (3)その他の実践
    4  多様な子どもが参加する場合の工夫とインクルージョンへの視座
    第12章
    奈良の学習法に見る個別最適な学びと協働的な学び  宇佐見香代
    1 奈良の学習法の実践研究の展開
    (1)奈良の学習法の創始とその背景
    (2)奈良の学習法の実践研究から学ぶ
    2 清水甚吾の実践研究から学ぶ
    (1)独自学習とその指導について
    (2)相互学習とその指導について
    3 今井鑑三の実践研究から学ぶ
    (1)独自学習とその指導について
    (2)相互学習とその指導について
    4 奈良の学習法の今後の可能性と課題
    第13章
    フレネ教育に見る個別的・個性的な学びと協同的な学び  坂本明美
    1 「 フレネ教育」―「フレネ技術」と学習材
    2  フレネ教育における「個別的・個性的な学び」と「協同的な学び」の実践
    (1)個別学習
    (2)「仕事の計画(表)」:個人と共同体による評価
    (3)「自由テクスト」
    (4)「講演[自由研究の発表]」
    3  フレネにおける「共同体」・「学校共同体」
     ―「個人の個性的な学び」と「協同的な学び」をつなぐ概念
    4 「 個性的な学び」と「協同的な学び」の充実と,「共同体」の発展
    第14章
    一人ひとりがみんなと自由に
     ―きのくに子どもの村の体験学習のねらいと実際  堀 真一郎
    1  学習(授業)の質の転換が急務
     ―学校づくりのはじまり
    (1)学校でいちばん楽しいのは何か
    (2)学校づくりの基本方針
    (3)目標とする子ども像:自由な子ども
    2 新しい学校の基本原則とその展開
    (1)自己決定,個性化,体験学習
    (2)「プロジェクト」が中心
    3 実践例「道づくり」
    (1)テーマ設定の理由と活動のねらい
    (2)活動の経過
    (3)子どもたちの成長と学習の広がり
    4 体験学習の成果
    (1)子どもの村の学習は楽しい
    (2)体験学習と「学力」
    (3)体験学習と学習指導要領
    第15章
    経済産業省「未来の教室」プロジェクトが目指してきたもの  浅野大介
    1 経済産業省「未来の教室」プロジェクトの誕生
    (1)経済産業省「教育産業室」の発足(2017年)
    (2)「未来の教室」プロジェクトの誕生(2018年)
    2 「学びの自律化・個別最適化」事業群の振り返り
    (1)「麹町中モデル」:千代田区立麹町中学校×Qubena(COMPASS)
    (2)「大熊小中モデル」:大熊町立小中学校×Qubena(COMPASS)
    3 「学びの探究化・STEAM化」実証事業群の振り返り
    (1)「未来の地球学校」プロジェクト,「旅する高校」プロジェクト
    (2)「みんなのルールメイキング」プロジェクト
    (3)経済産業省STEAM ライブラリー
    4  プロジェクトから得た教訓
     ―「未来の教室」を支える数々の“インフラ”整備の必要性
    (1)「学び・シゴト・福祉」のピラミッド
    (2)GIGAスクール構想の「正常運転」:教育のデジタライゼーション
    (3) 学習環境を「組み合わせ自在」にする:
    教育のデジタル・トランスフォーメーション(DX)
    (4)校内研究を通じた「職員室の高信頼性組織化」 
    第16章
    ICTが拓く個別最適な学びと協働的な学びの新たな地平  堀田龍也
    1  これからの日本―主にデジタル化の視点から
    (1)VUCAの時代
    (2)人口減少社会
    (3)人生100年時代
    (4)日本の将来を見越した学習環境としてのGIGAスクール構想
    2 これから求められる資質・能力
    (1)「資質・能力の三つの柱」
    (2)GIGAスクール構想の本質
    (3)学習の基盤となる「情報活用能力」
    3 「個別最適な学び」とデジタル化
    (1)「誰が最適にするのか」という議論
    (2)自律した学習者同士の「協働的な学び」
    おわりに

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