サルトル 風通しのよい哲学
出版社: 大阪大学出版会
- 哲学者サルトルの前期思想における存在論を形而上学をキーワードに再検討し、新たなサルトル像の提示に挑戦する。
- フランスの哲学者サルトルの前期思想における存在論を形而上学をキーワードに再検討し、従来の解釈の刷新に挑戦。サルトル自身の人生と照合しながら、サルトル思想に「風通しの良い存在論」という新しい見方を提示する。
- ―サルトルの前期哲学を読み解く―
ひとが生きる、そのことのなかには思想としか言いようのないものが自ずから息づく。
これを本書ではサルトルの用法に倣って「形而上学」と呼び、議論の中心に据える。
(「まえがき」より)
本書は、20世紀フランスの哲学者ジャン= ポール・サルトルの思想について、特にその前期思想における存在論に焦点を当てて読み解く。サルトルは従来「実存主義」や「参加=アンガジュマン」という言葉と共に一種の重苦しさを持って語られ、その哲学は、後年構造主義に取って代わられた人間中心主義と見なされることも多い。
本書では「形而上学」と「存在論」という観点からサルトルの前期思想を再検討するとともに、主著『存在と無』を足がかりに書くこと(作家、作品)と存在、哲学と存在、現象学的存在論の読み直しやサルトル自身の前半生の軌跡との照合を通じて、新たなサルトル像の提示に挑戦する。
資料の丹念な読み直しと、同時期のハイデガーやメルロ=ポンティとの鮮やかな対比を通じて、サルトルの存在論が所与の現実に対してオルタナティブなものを生み出しながら営まれる人間の生の独自性に光を当てた存在論=「風通しのよい存在論」を提示していることを明らかにした画期的研究。 - 凡例
まえがき
序章
第一部 生・文学・哲学―形而上学の形成
第一章 作家と形而上学
第二章 無の理論から無の形而上学へ
第二部 存在論・形而上学・絶対的出来事―『存在と無』読解
第三章 形而上学と存在論
第四章 他者の出現と絶対的出来事
補 論 痛みを生き、病と付き合う
第三部 倫理への展開のまなざし
第五章 存在欲求・呼びかけ・承認
第六章 『文学とは何か』における承認論の意義
終章
あとがき
参考文献
人名索引