「ケアする大学」とは何か

「ケアする大学」とは何か

出版社: 青弓社
著者: 西本 佳代
  • 児童養護施設で育った子どもたちが、大学に進学し、1人で生活をしながらキャンパスライフを送る。施設を退所したあとは、それまでと同様の支援を受けられるとはかぎらない。大きな環境の変化のなかで、彼・彼女たちは大学でどのような困難を抱えるのか。大学側はその困難をどのようにサポートしているのか。
    児童養護施設での生活経験がある学生を対象に、入学前から在学中、卒業後まで、12年以上継続的にインタビューを重ねて、これまで語られてこなかったキャンパスライフの実情を明らかにする。そして、彼・彼女たちに対する大学の支援を浮き彫りにする。
    金銭面や人間関係の困難、就職への不安などを抱える学生もいれば、不登校を経験したり妊娠・出産したりして、退学の危機に直面する学生もいる。それに対して大学の教職員は、個々の事情に応じて、教育的な指導に加え福祉的な支援もおこなっている。
    福祉的な支援までもおこなう大学のあり方を「ケアする大学」として提起して、教職員の個々の努力に頼るのではなく、児童養護施設での生活経験がある学生に対する社会的な支援の必要性を描き出す。そして、彼・彼女たちにかぎらず、多様な学生を受け入れている現在の大学に必要なケアの考え方、支援のあり方を具体的に提言する。
  • はじめに
    序 章 なぜ、児童養護施設入所経験者のキャンパスライフを描くのか
     1 問題の所在
     2 先行研究の検討
     3 本書の概要
    第1章 児童養護施設入所経験者の大学進学の経緯
     1 問題の所在
     2 高校時代の学習状況
     3 進路決定時期と方法
     4 大学進学の理由
    第2章 直面する困難――児童養護施設入所経験者のキャンパスライフ:1
     1 問題の所在
     2 金銭面における困難
     3 人間関係における困難
     4 就職に対する不安
    第3章 困難の乗り越え方――児童養護施設入所経験者のキャンパスライフ:2
     1 問題の所在
     2 児童養護施設入所経験者からみたアフターケア
     3 退学の危機と乗り越え方
     4 支援者との物理的距離の近さ
    第4章 教職員による支援――児童養護施設入所経験者のキャンパスライフ:3
     1 問題の所在
     2 大学・短期大学における支援の現状
     3 支援を担う教職員の認識
     4 大学・短期大学における支援の課題
    第5章 ゆっくり大人になる――大学を卒業した児童養護施設入所経験者:1
     1 問題の所在
     2 茜さんのキャンパスライフ
     3 就職後の挫折と職業訓練校の役割
     4 卒業後も続く大学教職員のサポート
    第6章 相談できない「優等生」――大学を卒業した児童養護施設入所経験者:2
     1 問題の所在
     2 「優等生」としての育ちと後悔
     3 「高等教育機会の獲得による包摂」という支援政策の限界
     4 ケアの倫理で「自立」を問い直す
    終 章 児童養護施設入所経験者のキャンパスライフからわかったこと
     1 結果の要約
     2 本書のインプリケーション
     3 学術的示唆――「ケアする大学」とは何か
     4 実践的示唆――「ケアする大学」には何が必要か
     5 今後の課題
    初出一覧
    おわりに

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