
イスラームの慈善の論理と社会福祉
出版社: 明石書店
- 世界最大のムスリム人口を有するインドネシアで、ザカート(義務の喜捨)が活発に実践され、福祉に貢献している。本書はそこにいかなるイスラームの考えがあるのか、その論理と社会福祉を明らかにし、ザカートの法学的革新と地域の主体に着目して論じる。
- 序章
1.スヤティおばあさんとマイクロファイナンス
2.本書の主題と目的
3.先行研究の問題点
(1)ザカート概念の多義性の問題点
(2)イスラーム経済思想研究の軽視
(3)イスラーム的慈善という枠組みの問題点
4.研究上の問い
5.本書の利用資料と調査概要
6.本書の構成
第1章 インドネシアにおけるザカートの歴史的位相
はじめに
1-1.独立以前のザカート実践
(1)イスラーム受容初期からオランダ植民地時代
(2)日本統治時代からインドネシア独立戦争時代
1-2.独立インドネシアにおけるザカート実践
(1)スカルノ体制期
(2)スハルト体制期
(3)イスラーム復興の顕在化とザカート管理に関する各アクターの動向
1-3.民主化期
(1)ザカート管理法案の整備と行政化
(2)全国ザカート管理庁(BAZNAS)の制度的構造と実践体系
1-4.ザカート管理法の強化と各アクターの鼎立
(1)全国ザカート管理庁(BAZNAS)への一元化と反発
(2)民間ザカート管理団体(LAZ)の位置付けとその認可・選定方法
おわりに
第2章 ザカートの制度化:インドネシア・ムスリム知識人の法学見解とザカートをめぐる議論
はじめに
2-1.資産ザカートをめぐるファトワー
(1)インドネシア・ウラマー評議会の成立とファトワー
(2)「企業資産のザカート」に関する公的ファトワーとNGO、民間企業
(3)「収入のザカート」概念の創出
(4)インドネシアにおける「収入のザカート」
2-2.ザカートと税に関する議論の展開
(1)イスラーム国家とザカート徴収
(2)インドネシア・ムスリム知識人によるザカートの再解釈
(3)アミン・ライスによるザカート現代的解釈とビドア(逸脱)批判
(4)マスダル・F・マスウーディーによるザカートの再定義
2-3.BAZNAS初代会長ディディン・ハフィドゥッディンのザカート観
(1)インドネシアのザカート実務家/理論的バックボーンとしてのディディン・ハフィドゥッディン
(2)ディディン・ハフィドゥッディンのザカート観――主著『近代経済におけるザカート』から
おわりに
第3章 イスラーム経済の影響によるザカート分配のパラダイム転換
はじめに
3-1.イスラーム経済思想とザカートの合流
(1)スピリチュアル・エコノミーの出現
(2)イスラーム経済の台頭と「消費/生産」的ザカート
(3)投資のためのザカート運用
3-2.「ハッド・キファーヤ(イスラームにおける貧困線)」の法学的展開
(1)貧困の定量的基準
(2)貧困線(ハッド・キファーヤ)の語源と法学的展開
(3)貧困線(ハッド・キファーヤ)を規定する7項目とその考察
3-3.ザカート資金を融資に使用することへの法学的是非
(1)1982年ファトワー「生産的活動と公益のためにザカートを使用すること」
(2)ザカートの最適化と開発言説
(3)「生産的ザカート」に関するイスラーム法学的見解
(4)「生産的ザカート」の仕組みと運用方法
おわりに
第4章 マラン市におけるザカート管理団体の諸相
はじめに
4-1.調査地の概況
(1)マラン市
(2)ザカート管理団体の構成と概観
4-2.マラン市におけるザカート管理団体とその沿革・理念・活動
(1)公的ザカート管理団体(BAZ)
(2)民間ザカート管理団体(LAZ)
(3)草の根ザカート管理団体
4-3.ザカート管理団体と開発言説
4-4.マラン市におけるザカート管理団体の位相
おわりに
第5章 ザカートの融資を受ける人々の主体性:「消費から生産へ」の再構築と曖昧な助け合い
はじめに
5-1.マラン市における生産的ザカートの借り手たちとその実態把握
5-2.アンケート調査の概況
(1)調査団体の選定
(2)アンケート調査の結果
5-3.ザカート管理団体のマネージャーからの聞き取り
(1)サビーリッラーのマネージャーママド氏の生産的ザカートプログラムの中止例
(2)BMムルジョサリ地区のボランティアマネージャー
5-4.ザカート管理団体から融資を受けること
おわりに
終章
謝辞
参考文献
日本語文献
英語文献
アラビア語文献
インドネシア語文献
辞典類
年次レポート
オンライン文献
付録:アンケート調査質問票(インドネシア語)
索引