戸籍と国籍の近現代史【第3版】

戸籍と国籍の近現代史【第3版】

出版社: 明石書店
著者: 遠藤 正敬
  • 日本国家は「民族」「血統」「日本人」といった概念を、戸籍と国籍を用いていかに操作してきたか。最新版ではセクシュアル・マイノリティ関連の記述等を改めて検討するとともに、直近の重要判例も付記。〈日本的差別〉の深層に迫るロングセラー第三版。
  •  はじめに
      「日本人」の証明とは?――国籍か、戸籍か?
      国家による国民登録――権力装置としての戸籍
      「世界に冠たる」戸籍?
      戸籍に生きる「家」の思想
      なぜ戸籍に「外国人」は載らないのか?
      「血統」とは何なのか?
      本書の課題と構成
    第1章 戸籍とは何か――「日本人」の身分証明
     1 戸籍が証明するもの
      戸籍に記載される「真実」とは
      戸籍の索引的機能
      「続柄」の特異性
      本籍の意味するもの
      届出の強制力――戸籍が承認する個人の存在
     2 監視する戸籍――個人情報の掌握
      戸籍による個人情報の渉猟
      戸籍による身許調査
      戸籍公開原則の問題性
     3 戸籍の「氏」が示すもの――「家名」に一元化された個人の名
      氏とはだれの名称か?
      苗字から氏へ――個人名から家名へ
      明治国家が創り出した「夫婦同姓」主義
      「家破れて氏あり」――戦後民主化からとり残された氏
     4 国籍証明としての戸籍――戸籍に載れば「日本人」?
      「帰化」という思想と戸籍
      なぜ戸籍が「日本人」の証明なのか?
      無戸籍と就籍
     5 戸籍は世界無二の制度――欧米、中国の身分登録との違い
      個人単位の国民登録
      「本籍」は日本独特のもの
      中国の戸口登記制度――日本の戸籍との違い
      戦後民主化と生き残った戸籍――精神革命としての「個人方式」化
    第2章 国籍という「国民」の資格――日本国籍と戸籍の密接性
     1 近代国家における国籍――忠誠義務から個人の権利へ
      近代国家の勃興と国籍――「臣民」から「国民」へ
      個人の権利としての国籍
      出生地主義と血統主義
      国籍決定における個人の自由――人は国家の従属物ではない
     2 日本の国籍法の誕生――血統主義の採用
      国籍法による「国民」画定の必要
      日本が血統主義を採用した理由とは
      明治国家における国籍法の成立
      帰化は「権利」にあらず、国家からの「恩恵」なり
     3 「家」に従属する国籍――家族に求められる「血」の同一性
      夫婦・家族国籍同一主義という思想
      国籍に対する家制度の制約――日本の家族国籍同一主義
      個人の国籍を左右する「家」
     4 戦後における国籍法の改正――民主化と「日本人」の範囲
      血統主義を維持する日本
      国籍法における男女平等――父母両系主義へ
    第3章 近代日本と戸籍――「日本人」を律する家
     1 近代以前の戸籍の変遷――封建社会の人民台帳
      古代日本と戸籍
      幕藩体制と戸籍――宗門人別帳
     2 明治国家形成における戸籍の意義――「元祖日本人」の画定
      明治維新と脱籍者
      明治維新における戸籍の理念――「臣民簿」としての戸籍
      壬申戸籍の成立――「元祖日本人」は「臣民」として始まる
      壬申戸籍のゆきづまり
      壬申戸籍改正の要請――兵役をめぐる家と国家の対立
      明治民法と戸籍法の成立
     3 戸籍とは「家」なり――家族と「国体」をつなぐ戸籍
      「家」とは何であったか
      祖先崇拝と家
      君臨する戸主――家の玄関番
      戸籍は「国体」といかに結びついたか
     4 戸籍の純血主義と家族主義――退けられた個人主義
      守るべき家の“純血”――戸籍法に明記された「排外主義」
      身分登記簿の挫折――個人主義と家族主義の衝突
     5 領土画定と「日本人」の拡大――戸籍による蝦夷地・琉球の「日本化」
      蝦夷地の「日本」編入――北海道への戸籍法実施
      アイヌの戸籍編入――「臣民」のなかの「旧土人」
      「琉球処分」と戸籍
      琉球人の「創氏」
    第4章 植民地と「日本人」――戸籍がつかさどる「民族」「国籍」「血統」
     1 植民地における「日本国籍」――国籍に表れた強者の論理
      植民地住民の「日本人」への編入――強者の思い描く「国籍」
      「日本人」として緊縛される朝鮮人――朝鮮への国籍法施行問題
     2 帝国における戸籍のモザイク――「日本人」のなかの「外地人」
      「外地」としての植民地
      朝鮮戸籍と「朝鮮人」
      樺太における戸籍――「原住民」のなかの差異
      台湾における戸籍制度の紆余曲折
      「台湾戸籍」としての完成
     3 「民族」を左右する戸籍――「血統」を食い破る家の原理
      「民族籍」の成立――「外地人」の発生
      本籍転属禁止の原則――家はあくまで不動
      「外地人」の兵役と参政権
      「血統」を食い破る「家」の原理
     4 越境する「帝国臣民」と戸籍――「日本人」を創出する戸籍の諸相
      「台湾籍民」という存在――名義上の「日本人」
      戸籍の活用による「台湾籍民」の創出――「日本人」としての利用価値
      「朝鮮人」の証明なき人々――無戸籍の朝鮮人
      満洲国における無戸籍朝鮮人対策――「戸籍啓蒙運動」としての就籍奨励
     5 満洲国の「国民」とは?――在満「日本人」の国籍と戸籍
      「満洲国国籍」は存在したのか?
      満洲国における「日本臣民」の戸籍
      満洲国の民籍制度――未完に終わった「国民証明」
     6 皇民化政策の急所であった戸籍問題――守るべきは内地戸籍
      「創氏改名」と朝鮮戸籍
      許されざる「民族の混淆」――内地転籍自由化を禁じた意味
    第5章 戦後「日本人」の再編――「帝国」解体と「帝国臣民」の戸籍と国籍
     1 旧植民地出身者の「外国人」化――内地戸籍が「日本人」の証し
      「解放民族」は引き続き「日本国籍」のまま
      外国人登録の出立――名目化された「日本国籍」
      朝鮮・台湾における「国民」の回収
      「帝国」解体後も生み出された「外地人」
      旧植民地出身者の日本国籍“喪失”
      一九六一年最高裁判決による“決着”
     2 戦後「日本人」の回収――引揚者と戸籍
      樺太引揚者の戸籍と国籍
      満洲国引揚者の戸籍と国籍
     3 戦後沖縄と戸籍――「日本人」への復帰と戸籍の再製
      異法領域としての戦後沖縄
      沖縄住民の日本国籍と「臨時戸籍」
      「琉球籍」としての沖縄戸籍
      「本土復帰運動」としての沖縄戸籍の再製
    第6章 戸籍と現実のねじれ――開かれた制度となるには
     1 戸籍の差別主義のゆくえ――外国人と婚外子に対する壁
      新たな外国人管理制度
      変わる家族関係と変わらない戸籍――性別変更と出生届の問題
     2 「国民」の資格をめぐる境界線――問われる日本の国籍政策
      求められる重国籍への寛容性――国籍選択制度のもつ意味
      重国籍者を監視する戸籍
      「日本人」の資格は開かれたのか――「血統」に固執する日本
     3 東アジアにおける戸籍の帰趨――韓国・台湾における身分登録制度の変革
      韓国における戸籍制度の廃止
      変容する台湾戸籍法――「生活者」単位の制度へ
     4 変わる現実と背反する法制度――「多様性の尊重」の時代に
      重国籍をめぐる相次ぐ争点
      進まぬ選択的夫婦別姓制度の導入――「姓」だけが家族の絆?
      同性婚に背を向ける日本――性のあり方をめぐって
      「内密出産」と法制度――「出自を知る権利」と戸籍
      戸籍のデジタル化――マイナンバーと繋がる意味
      戸籍がなくても生きられる社会へ――無戸籍問題への向き合い方
    おわりに――「民族」「血統」「国籍」というフィクション
      戸籍が創り出す「日本人」――「純血」という家の原理と擬制
      帝国日本における戸籍の役割――政治権力における「戸籍原理主義」
      デモクラシーと対峙する戸籍制度――戸籍という権力装置を乗り越えるには
     註
     初版あとがき
     新版あとがき
     第3版刊行にあたって
     索引

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