障害の問題への「当事者性」を獲得する学び

障害の問題への「当事者性」を獲得する学び

出版社: 明石書店
著者: 橋田 慈子
  • 健常者が障害の問題を自らに関わる問題として認識する当事者性を獲得するための学びとは何か。知的障害児者に関わった人々が、学校教育での排除や卒業後の自立の問題に対していかに当事者性を獲得し問題解決への運動を展開したのかを日英の事例から探究する。
  •  はじめに
    序章 本書の問題設定と目的、課題
     第1節 問題の所在
     第2節 本書の目的と方法
      第1項 本書の目的
      第2項 本書における「当事者性」の定義
      第3項 研究方法
      第4項 研究対象
     第3節 本書の構成と検討課題
      第1項 第Ⅰ部における検討課題――学校教育を通した排除問題に対する「当事者性」の獲得
      第2項 第Ⅱ部における検討課題――学校卒業後の自立の問題に対する「当事者性」の獲得
      第3項 第Ⅲ部における検討課題――総合的考察
    第1章 障害の問題をめぐる研究上のアプローチ――先行研究の検討と本書の意義
     本章の目的
     第1節 障害児をめぐる教育学研究の到達点と課題
      第1項 日本における障害児教育の研究
      第2項 英国における障害児教育の研究
      第3項 障害児をめぐる教育学研究に残された課題
     第2節 障害者をめぐる社会教育・継続教育研究の到達点と課題
      第1項 日本における障害者をめぐる社会教育研究
      第2項 英国における障害者をめぐる継続教育・成人教育研究
      第3項 学校卒業後の障害者をめぐる社会教育・継続教育研究に残された課題
     第3節 障害学研究の到達点と課題
      第1項 障害学研究における議論
      第2項 障害学研究に残された課題
     第4節 本書に課せられた課題
     第5節 本書の特色と学術的意義
    第Ⅰ部 学校教育を通した排除問題に対する「当事者性」の獲得
    第2章 近現代日本における知的障害児の教育問題に対する「当事者性」の獲得と問題提起――第二次世界大戦以前の社会事業家と社会教育関係者を中心に
     本章の目的
     第1節 教育制度の対象外となる知的障害児とその処遇
      第1項 障害児に対する就学猶予・免除規定の登場
      第2項 「白痴」児童をめぐる監護義務とその処遇
     第2節 施設における「白痴」教育の進展
      第1項 石井亮一による「白痴」教育の萌芽
      第2項 精神薄弱児愛護協会の結成とネットワーキング
     第3節 社会教育行政における「白痴」児童の疎外と変容
      第1項 川本宇之介の特殊教育観に見る教育対象の線引き
      第2項 青木誠四郎の特殊教育観に見る教育対象の線引き
      第3項 教育科学研究会による建議運動への発展
     第4節 戦後教育改革が取り残した知的障害児の問題
      第1項 障害児をめぐる就学猶予・免除規定の存続
      第2項 知的障害児の存在を「隠す」親たち
     第5節 本章の結果と次章への課題
    第3章 知的障害児の教育問題をめぐる「当事者性」の獲得と権利保障に向かう運動――戦後日本における育成会・親の会参加者を事例として
     本章の目的
     第1節 特殊教育の振興過程に見る母親集団の組織化
      第1項 育成会結成の経緯――会を結成した母親たちの問題意識
      第2項 手記の刊行と母親たちの訴え
      第3項 文部行政への働きかけと特殊教育の施策化
     第2節 親の会参加者による不就学問題の提起
      第1項 親の会による運動の活性化
      第2項 母親による「就学猶予」問題の意識化
      第3項 未就学障害児を抱える他の母親とのネットワーキングと問題意識の共有
      第4項 「代弁者」としての役割意識
     第3節 親の会参加者と教員による共同の運動とその成果
      第1項 教員・議員の協力による行政職員との葛藤の克服
      第2項 希望者全員就学に向けた行政施策の変化
     第4節 養護学校教育の義務制実施と反対闘争
      第1項 養護学校教育の義務制の実施
      第2項 義務化反対闘争が提起した問題
     第5節 本章の結果と次章への課題
    第4章 障害児をめぐる隔離・排除に抗う親たちの「当事者性」の獲得と教育改革――英国における当事者運動との連帯の動きに着目して
     本章の目的
     第1節 英国における特殊教育の制度化と当事者運動の批判
      第1項 当事者による「隔離教育」批判
      第2項 統合教育改革への流れと課題
     第2節 統合教育を求める親の運動の活性化
      第1項 「普通の生活」を求める親たちのネットワーキングと学び
      第2項 教員集団との対立・葛藤
      第3項 「隔離教育」を経験した当事者との問題意識の共有――「アライ」としての役割意識の醸成
     第3節 親と当事者の参画を基盤にしたニューアム地区の教育改革
      第1項 特殊学校の閉校・再編過程における対立・葛藤とその克服
      第2項 通常学校と教育行政の機能及び教員の意識改革
     第4節 英国の障害児教育の変容――インクルーシブ教育の進展
      第1項 教育行政と親の対立・葛藤
      第2項 労働党政権におけるインクルージョンの進展――ニューアム地区への注目
      第3項 障害児教育の現状と「隔離教育」をめぐる課題
     第5節 本章の結果
     第Ⅰ部のまとめ
     第Ⅱ部への課題
    第Ⅱ部 学校卒業後の自立の問題に対する「当事者性」の獲得
    第5章 障害者の自立の問題に対する「当事者性」の獲得と教育実践の創出――日本の公民館職員と青年集団の活動を事例として
     本章の目的
     第1節 知的障害者の職場開拓に向かう親の運動と課題
     第2節 知的障害のある仲間の問題に向き合う青年集団の形成
      第1項 親の会による青年期教育の実施要求
      第2項 障害のある青年との仲間関係の形成――SCHの誕生と拡張要求
     第3節 仲間の暮らしを改善する連帯感の醸成
      第1項 障害者運動の関係者による問題提起――何のための仲間か
      第2項 障害者の暮らしの実態と希望を掴む調査の実施
     第4節 調査後の青年たちの活動の変化
      第1項 自立に対する問題意識の深まり
      第2項 自立の問題に取り組む障害者青年学級の組織化
      第3項 経済的自立を目指す喫茶コーナーの誕生
     第5節 社会教育実践の目標としての「自立」、親との葛藤
     第6節 本章の結果と次章への課題
    第6章 知的障害者の自立の問題に対する「当事者性」の獲得と支援アプローチの変化――当事者運動を支援する成人教育職員の実践に着目して
     本章の目的
     第1節 英国の継続教育政策に見る自立支援の方向性と課題
     第2節 「自立した考え方」を尊重する教育実践
      第1項 当事者とチューターの関係形成
      第2項 自立を妨げる障壁としての親
     第3節 親子関係の問題に取り組む職員集団の形成
      第1項 「自立した考え方」を組み込んだ研修機会の組織化
      第2項 親子の視点から問題の構造を把握する
      第3項 継続教育職員に対する問題提起
     第4節 継続教育における自立支援アプローチの変化
      第1項 国内外の要請とFEUの調査研究
      第2項 コミュニティ・ケア政策と親の役割意識
      第3項 家庭外の関係形成による自立支援
      第4項 1990年代後半以降の福祉政策の変化――自立生活を支える福祉へ
     第5節 本章の結果
     第Ⅱ部のまとめ
     第Ⅲ部への課題
    第Ⅲ部 総合的考察
    第7章 障害の問題に対する「当事者性」を獲得する学びと運動の理論
     本章の目的
     第1節 障害の問題に対する「当事者性」を獲得する学び
      第1項 継続的な関わりと問題の意識化
      第2項 ネットワークにおける学びと運動の展開
     第2節 運動の展開過程における対立・葛藤の克服
     第3節 障害をめぐる問題状況の変化
     第4節 「当事者性」の獲得を促す、社会教育実践・職員の可能性
     第5節 本章の結果と次章への課題
    補章 当事者と連帯するアライを育てる学び――通常学校における障害平等研修に着目して
     本章の目的
     第1節 当事者とアライの運動体の立ち上げ
      第1項 英国・ロンドンにおける障害児教育政策の変遷
      第2項 アライとの連帯可能性への気づき
      第3項 合同カンファレンス「今すぐ統合を」の開催
     第2節 教員や生徒をアライに変えるための学習機会の提供
      第1項 「統合教育アライアンス」におけるアライの位置付け
      第2項 教室における障害平等研修の実施
     第3節 当事者とアライによる運動の発展、今日的課題
      第1項 若者たちの運動と労働党政権における変化
      第2項 保守党政権下での揺り戻しとALLFIEの試み
     第4節 本章の結果
    終章 本書の結果と課題、今後の展望
     第1節 本書の要旨
     第2節 本書の成果と課題、今後の展望
      第1項 本書の成果
      第2項 残された課題と今後の展望
     引用・参考文献一覧
     図表一覧
     附録 インタビュー・ガイド
     おわりに
     索引

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