
立憲主義をめぐる東アジアと西欧の課題
出版社: 法政大学出版局
- 民主主義や法の支配、統治権力を統制する思想・制度としての立憲主義の現在ならびに今後の課題を、国際的な視座で考える指針となる書
- 民主主義や法の支配、統治権力を統制する思想・制度としての立憲主義を、仏英および国際人権保障のみならず多様な東アジア諸国の現代的課題として明らかにする。
- 現代世界において立憲主義とは何か。「民主主義」と「法の支配」、「憲法の規範性の保障」を通じて統治権力を統制する思想を核とする仏・英および国際人権保障の制度や、いまだ憲法政治の歴史が浅く政治体制の多様な東アジア諸国における現在の立憲主義の課題を、専門の研究者らが明らかにする。立憲主義の今後をグローバルに考えるための指針となる書。
- はしがき
第Ⅰ部 東アジア
第1章 韓国憲法裁判所の大統領弾劾審判にみる立憲主義と民主主義の関係 【國分典子】
はじめに
I 韓国憲法裁判所の権限と位置づけ
II 尹錫悦大統領弾劾事件
1 戒厳宣布に至るまでの大統領と野党中心の国会の間の攻防
2 非常戒厳宣布および大統領の弾劾・罷免の経緯
(1) 非常戒厳と弾劾訴追
(2) 大統領の談話
(3) 弾劾訴追理由
3 憲法裁判所の判断
III 弾劾審判における憲法裁判所の判断とその機能
1 大統領弾劾審判における判断基準
2 尹錫悦大統領弾劾事件で憲法裁判所が示した民主主義理解
おわりに
第2章 朝鮮民主主義人民共和国の「法治」と「人権」 【大内憲昭】
I 朝鮮の革命政権の樹立
II 朝鮮法、中国法における「立憲主義」
1 「立憲主義」の理解
2 朝鮮での「立憲君主制」の理解
III 朝鮮法における「法治」
1 法治国家説법치국가설
2 法の遵守と社会主義法務生活
IV 朝鮮憲法における人権規定
1 朝鮮憲法における人権規定
2 朝鮮憲法における「公民の基本的権利および義務」
V 朝鮮における「人権」論
1 朝鮮の「人権白書」
2 「人権報告書」における朝鮮の「人権」論
VI 党の政策の憲法化・規範化
1 「核武力建設」政策の憲法化・法律化
2 南北関係の憲法修正
第3章 中国憲法40年(1982年-2022年)とその「憲政」 【通山昭治】
I 序──1982年中国憲法40周年によせて
II 中国憲法40年における5回の一部改正について
1 「現行憲法の発展的実施の第1の10年」(1982年12月-1992年12月)
2 「現行憲法の発展的実施の第2の10年」(1992年12月-2002年12月)
3 「現行憲法の発展的実施の第3の10年」(2002年12月-2012年12月)
4 「現行憲法の発展的実施の第4の10年」(2012年12月-2022年12月)
III 中国「憲政」の2つの特徴について
1 中国における「議会制」の部分的な否定について
2 中国における「財政立憲主義」の事実上の「欠落」
IV 小結──1982年中国憲法のいっそうの「深化」によせて
1982年中国憲法のいっそうの「深化」の助走期間(2014年~2018年)について
2982年中国憲法の30周年と40周年のはざまで
第4章 「立憲主義」前夜としての「漢学脈」制度論 【濱野靖一郎】
はじめに
I 立憲主義への懸念
II 漢学における「法」
III 「名治論」の論理
IV 人と制度と
終わりに
第Ⅱ部 西欧
第5章 フランスにおける「死の支援を受ける権利」の合憲性と欧州人権条約適合性──法的立憲主義と人権保障の観点から 【建石真公子】
はじめに
I 「民主主義」と「人権保障」を要素とする立憲主義
1 法律に対する統制と民主主義
2 憲法的民主主義と法律の違憲審査
II 民主主義社会の保障と司法的統制
1 比例性審査──違憲審査及び条約適合性審査における具体的審査
2 欧州人権裁判所と国内裁判所における比例性審査における
立法的性質の役割
III 「死の支援を受ける権利」法案と憲法上の生命権
1 「死の支援を受ける権利法案」の登場
2 フランスにおける終末期の患者の権利に関する法とその課題
(1) 終末期の患者の権利に関する法の歴史と現行法
(2) 死の支援を受ける権利法案登場のプロセスと内容
(3) 「死の支援を受ける権利法案」の内容
3 死の支援を受ける権利の性質
IV 「死の支援を受ける権利」と憲法上の要件
1 安楽死の違憲審査から除外される憲法上の要件
(1) 生命権及び健康の保護
(2) 主観的権利としての尊厳を持って死ぬ権利及び自己決定権
2 死の支援を受ける権利の解釈として適用しうる憲法上の要件
(1) 人間の尊厳と平等
(2) 個人の自由及び思想、良心、宗教の自由
V フランスの終末期法制と欧州人権裁判所
1 フランスにおける欧州人権条約の法規範性
2 終末期の権利において適用されうる規定の課題
(1) 生命の権利の軽視
(2) 第三者に支援を求める権利としての個人の自律性
おわりに
第6章 現代立憲主義における社会権──フランスとの比較の観点から 【伊藤雅康】
はじめに
I フランスの人権論
1 公の自由から基本権へ
2 社会権というカテゴリー
II 欧州の人権諸条約と社会権
1 概観
2 欧州人権条約
3 欧州社会憲章
4 欧州連合基本権憲章
III 人権の多層的保障と社会権
1 国内裁判所
2 欧州司法裁判所
おわりに
第7章 イギリス「不文憲法」伝統と立憲主義──オースティンからダイシー・ジェニングスへ 【原田一明】
はじめに
I 古典的学説の再検討:オースティンからメイトランドへ
1 オースティンの主権論
2 オースティンの憲法概念に対するメイトランドの批判
II ダイシー・ジェニングス論争・再訪
1 ダイシー
2 I. ジェニングス
おわりに 不文伝統と立憲主義
第8章 立憲主義と伝統的価値観──国際人権法における食料の権利の十分性と個人の人権の保障 【土屋仁美】
はじめに
I 十分な食料への権利における十分性(adequate)の考慮
1 十分な食料への権利における十分性の位置づけ
2 食料安全保障における十分性の必要性
3 十分な食料への権利における国家の尊重義務の重要性
II 日本の食料安全保障における文化的価値への対応
1 国内法における食料への権利の具体化
2 日本の食料安全保障とFAO自主的ガイドラインとの乖離
3 食料安全保障における食料自給率の不十分性
III 日本の法制度における食文化の保護とその目的
1 日本の食料法分野における文化的価値への対応
2 食文化における伝統的価値の位置づけ
3 食の政治化・経済化による弊害──ガストロナショナリズム
4 「食文化」の経済化と「和食」の伝統的価値
IV 立法政策における伝統的価値観の考慮とその限界
1 米国における伝統的価値観の考慮の是非
2 米国における伝統的価値観の考慮とその限界
3 韓国憲法裁判所による伝統的価値観の考慮とその限界
おわりに
第9章 障害者権利条約の国際人権法としての特徴、その憲法・人権へのインパクトと実現課題──障害者権利条約の理念とそれに「調和させる」国内法化の取組み 【青木宏治】
I 障害者権利条約の採択とその意義
1 障害者権利条約の採択
2 障害者権利条約の国際人権法上の特徴
II 障害者権利条約の批准および国内法整備、そこでの障害人権の実現
1 権利条約による障害人権の実現の法的しくみ
2 国内法整備としての法改正など
3 批准に向けて新たに改正、整備された障害者関係法に関する疑問点
III 障害者権利委員会による第一回日本政府報告への総括所見
1 第一回日本政府への総括所見に至る経過
2 総括所見が指摘するいくつかの人権課題
