〈砂漠〉の中で生きるために
出版社: 法政大学出版局
- アーレント思想を「現れの空間」や「共通感覚」「世界への愛」の概念を中心にとらえ、政治的生の場所を現象学的に理解する。
- アーレント思想の独自性を「現れの空間」や「共通感覚」、「世界への愛」の概念を中心にとらえ、政治的生が可能となる世界の構造を現象学的に理解する気鋭の論考。
- ハンナ・アーレントの政治理論の根底にあり、その独自性を形づくっているのはどのような哲学的思考なのか。「現れの空間」としての「政治的生」を可能にする、私たちの日常世界の根本構造を現象学的にとらえ、「共通感覚」と「世界への愛」こそが、異質な人々の自由な語りと聴取による言論空間をひらくことを論証する。これまでのアーレント解釈を一歩進める気鋭の論考。
- 凡 例
はじめに
序 論
第一節 本書の目的
第二節 先行研究の現状と本書の立場
第三節 本書の考察方法
第四節 本書の構成および結論
第一章 「政治的生」の現象学的解釈──ビオスのリアリティの救済にむけて
第一節 「現れ」と「隠れ」の政治哲学
第二節 「現れの空間」としてのポリス
第三節 ゾーエーとビオスの混合──「政治的生」の喪失
第四節 同化と全体主義の暴力的構造
第五節 「政治的生」の空間はいかにして出現しうるか
第二章 「政治」の起源への探求
第一節 政治的自由の二重の意味──「構想力の自由」と「自発性」
第二節 「構想力の自由」と政治的共通感覚
第三節 「自発性」による世界への出生──政治的勇気と「世界への愛」
第四節 「共通感覚」と「世界への愛」の「共‐起源的」関係
第三章 「共通感覚」の現象学的解釈
第一節 「政治的生」の第一の条件──政治的共通感覚
第二節 独創性と公共性──「天才」と「趣味」の政治哲学的解釈
第三節 カントからアーレントへ
第四節 「行為者」と「注視者」の相互転換──ヴィラ説の検討
第五節 ドクサの真実性とリアリティ──オルコウスキー説の検討
第六節 政治的出来事の顕現と隠蔽
第四章 「世界への愛」の現象学的解釈
第一節 「政治的生」の第二の条件──「世界への愛」
第二節 アーレント研究史における「愛」概念
第三節 「世界への愛」と「政治的友情」の共通点
第四節 「距離」と「接近」のパラドクス──ボレン説の検討
第五節 「同胞愛」の排他的構造と「世界への愛」の意義
第五章 世界への「再出生」──「赦し」と「約束」の 〈反復〉 構造
第一節 「世界の破滅」の回避へ──政治的行為としての「赦し」と「約束」
第二節 「裁き」としての「赦し」──不可逆な過去からの自由
第三節 「方向づけ」としての「約束」──予測不可能な未来への自由
第四節 「共通感覚」と「世界への愛」──「赦し」と「約束」の源泉
第五節 「砂漠」に抗って生きていくために──「政治的生」の可能性
結 論
おわりに
初出一覧
参考文献一覧
事項索引
人名索引