自由民主主義とは何か

自由民主主義とは何か

出版社: 筑摩書房
著者: 田中 拓道
  • 個人の自由や多様性を尊重する自由民主主義は普遍的な原理か。揺らぐ思想の系譜を辿り、困難に直面する世界の見取り図を手に入れる。
  • 選挙で代表を選び、法や議会の下、個人の自由や多様性を尊重する自由民主主義。いま大きく揺らぐ思想の系譜を辿り、困難に直面する世界の見取り図を手に入れる。
  • リベラルデモクラシーは生き残れるか?
    経済格差の拡大、排外主義や権威主義の広がり、極右ポピュリズムの台頭──。西洋で生まれ、二〇世紀に日本を含め世界中に広がった自由民主主義の理念が、大きく揺らいでいる。選挙で代表を選び、法や議会の下、個人の自由や多様性を尊重するこの原理は、はたして普遍的か。リベラリズムとデモクラシーの起源から、世界大戦による破局を経て、新自由主義、代表制民主主義、フェミニズム、ケアの倫理まで。ときに矛盾を孕みながら世界を覆い、いま大きな苦境に陥る思想の系譜を問う。
  • まえがき
    序章 問いなおされる自由民主主義
    自由民主主義の苦境/普遍的な原理か?/本書の課題と方法/グローバル・ヒストリー
    Ⅰ 形成
    第1章 すべては国家から始まった
    1 なぜ近代西欧から始めるのか
    ヨーロッパの固有性/主権という概念
    2 中世的世界の解体
    中世ヨーロッパの特徴/トマス・アクィナスの思想/宗教改革
    3 ホッブズの主権論
    ピューリタン革命とホッブズ/機械としての人間/自然状態とホッブズ問題/主権の設立/絶対王政との関係
    4 現代と主権論
    シュミットの主権論/現代における主権
    第2章 自由主義の誕生──主権をいかに統制するか①
    1 市場という秩序
    自由主義の成立条件/市場の思想史的意味
    2 ロックにおける国家と社会
    名誉革命とロック/ロックの人間論/自然状態/政治社会の設立/法の支配と抵抗権/ロックの思想的影響
    3 スミスにおける国家と市場
    富と徳──一八世紀思想の文脈/商業社会と国家/市場の道徳的基礎──同感の原理
    4 自由主義の成立条件
    なぜ近代ヨーロッパで自由主義が成立したか/自由主義と植民地主義
    第3章 民主主義の萌芽――主権をいかに統制するか②
    1 公共とは何か
    正統性の源泉としての人民/公共という言葉
    2 ルソーの一般意志論
    独学者ルソー/自然状態からの堕落/文明社会の悲惨/一般意志の形成/一般意志にもとづく共和国/覚醒のシナリオ
    3 カントの共和国論
    学究の徒カント/人間の普遍的尊厳/目的の国としての共和国/覚醒のシナリオ──理性の公共的使用
    4 自由民主主義の誕生
    情念の力か、理性の力か/自由主義と民主主義の結合
    Ⅱ 危機と再生
    第4章 自由主義への批判
    1 一九世紀ヨーロッパの文脈
    フランス革命の衝撃/工業化と都市化
    2 ヘーゲルにおける市民社会と国家
    ヘーゲルの思想的課題/法・道徳・倫理/家族と市民社会/自由の実現としての国家/民族と世界史
    3 マルクスにおける資本主義と国家
    革命家マルクス/ヘーゲルへの批判/上部構造としての国家/資本主義の矛盾/マルクス以後の展開/二一世紀の資本主義
    第5章 民主主義への懐疑
    1 共和政と民主政
    民主政=衆愚政治という見方/一八世紀以降の変化
    2 民主的専政──トクヴィルの民主主義論①
    貴族の末裔トクヴィル/民主主義の再定義/多数者の暴政/民主的専政
    3 民主的専政を抑止する条件──トクヴィルの民主主義論②
    地方自治と自発的結社/言論の自由
    4 大衆民主主義とトクヴィル
    第6章 全体主義という破局
    1 破局の時代
    二つの世界大戦/全体主義という言葉
    2 全体主義の起源
    アレントの生涯/前史としての帝国主義/イデオロギーとテロル/大衆のメンタリティ
    3 公共世界の喪失
    三つの行為類型/公的領域の意味/近代世界と大衆の登場
    4 アレントと現代
    第7章 妥協の時代
    1 自由民主主義の「普遍化」
    西側諸国の体制イデオロギー/思想的な勝利か
    2 自由主義の修正
    戦間期の自由主義批判/イギリスのニュー・リベラリズム/ケインズとベヴァリッジ
    3 民主主義の再定義
    シュミットの議会主義論/シュンペーターの民主主義論
    4 第二次世界大戦後の妥協
    自由の意味変容/代表制民主主義への合意
    Ⅲ 分裂
    第8章 新自由主義──リベラリズムの再構成①
    1 一九七〇年代の転換
    妥協から分裂へ/グローバル化と産業構造の変化
    2 新自由主義の登場
    ハイエク『隷従への道』/フリードマンの自由論/政府の役割――競争的市場の維持
    3 自由の基底性
    自由と無知/自生的秩序としての市場/不平等の是正は必要か/抽象的なルールによる権力の制約
    4 新自由主義と現代
    新自由主義の広がり/歴史認識との関係
    第9章 ロールズの正義論──リベラリズムの再構成②
    1 ロールズの登場
    リベラリズムの哲学的基礎/規範理論の復権
    2 正義の二原理
    公正としての正義/原初状態という仮定/正義の導出/格差原理とマキシミン・ルール
    3 正義論の射程
    最大多数の最大幸福とロールズ/結果の平等を目指すべきか/機会均等とは何か/才能の格差は是正すべきか/財産所有の民主制/福祉国家との違い──「事前」の分配
    4 正義論以降の展開
    現代政治の対立軸/センのケイパビリティ・アプローチ/運の平等をめぐる論争
    第10章 普遍性と差異──アイデンティティをめぐる対立
    1 文化的対立の浮上
    文化的リベラルと保守/ロールズへの批判
    2 差異の承認①──コミュニタリアニズムと多文化主義
    サンデルの「負荷なき自己」批判/物語的探求としての生/正義にたいする善の優位/コミュニタリアンの政治像/多文化主義/コミュニタリアニズムの射程
    3 差異の承認②──フェミニズムの政治理論
    ジェンダー中立的な制度の限界/リベラリズムによる家族の軽視/公私区分の問いなおし/積極的差別是正/ケアの倫理/正義論の修正/ケアと民主主義
    4 差異をどこまで承認すべきか
    リベラリズム批判と差異の政治/立場の分岐/新しい民主主義の探求
    第11章 現代の民主主義論
    1 代表制民主主義への不信
    ポスト・デモクラシー/文化的保守とポピュリズム
    2 正統性の危機
    参加民主主義/ハーバーマスの「正統化の危機」論/生活世界の植民地化
    3 熟議民主主義
    二段階の民主主義/熟議とは何か/制度化の試み
    4 闘技民主主義
    ムフによる熟議民主主義批判/対抗性と左派ポピュリズム
    5 現代民主主義論の課題
    熟議と闘技の関係/分極化
    第12章 グローバル正義論
    1 自由民主主義の適用範囲
    国家を超える諸問題の噴出/ロールズによる正義論の再構成/グローバルな正義をめぐる論争
    2 普遍的正義としての人権
    普遍的な正義を語れるか/ポッゲの「グローバルな制度的秩序」批判/人権とグローバル資源配当
    3 諸人民の法
    正義論と諸人民の法/理想的理論/非理想的理論
    4 国民という共同体
    特別な関係としての国民/グローバルな救済責任
    5 自由民主主義は普遍的か
    終章 自由民主主義のゆくえ
    自由主義と民主主義の結合(第Ⅰ部)/危機と再生(第Ⅱ部)/分裂の時代(第Ⅲ部)/自由民主主義は生き残れるか/国家と市場の拮抗関係/多元性と公共性/歴史にもとづくパトリオティズム/欧米の経験を超えて
    あとがき
    参考文献

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