改元
出版社: 石原書房
- 「君は今回の譲位についてどう思うかね?」
「龍の話じゃありませんでしたか?」
「そうだよ」久間さんは目を細め暗い光を溜めた。「ずっと前から私はその話しかしていない」
… - 「君は今回の譲位についてどう思うかね?」
「龍の話じゃありませんでしたか?」
「そうだよ」久間さんは目を細め暗い光を溜めた。「ずっと前から私はその話しかしていない」
龍の夢が「私」を通過するとき、この国のもうひとつの姿があらわれる――
現代日本小説屈指の剛腕による、抵抗と革命の二篇。
改元の年の異動で山奥の町に着任した公務員「私」は、集落に伝わる惟喬親王が見たという龍の夢の伝説を追って、この国のもうひとつの姿を目撃する。(「改元」)
山あいの地主の一族に生まれた少年は、日猶同祖論を唱える父によって「世界の救い主」となるべく「十(じゅう)」と名付けられた。第二次世界大戦をまたいで繰り広げられる、めくるめく年代記。(「死者たち」) - 改元 003
死者たち 107