
消された作家カイ・フン
出版社: 松籟社
- 太平洋戦争期前後のベトナムで活躍しながらも、今日では忘れ去られている作家カイ・フン。その後期作品を中心に読解する。
- 太平洋戦争期前後のベトナムで健筆をふるい、ベトナムの近代化に小さくない役割を担った作家カイ・フン。今日では忘れ去られている彼の後期作品を精しくたどり、そこに書き込まれたベトナム近代の苦しみを読み解く。
- インドシナ戦争の開戦後ほどなく、ベトミンによって殺害された作家カイ・フン。ベトナムの近代化に小さくない役割を担った彼の存在は、しかし、今日不当に黙殺されている。
植民地主義への抵抗の声を上げ、同時にその声が狭隘な民族主義に回収されるのを拒む――そうした困難な道を歩んだ、ひとりの「消された」作家を蘇らせる試み。 - 序論にかえて ベトナムの植民地的近代を生きた作家カイ・フン
第一部 自力文団と文団を支えたカイ・フン
第一章 自力文団
第二章 「間(あいだ)」のひと、カイ・フン
第三章 カイ・フン文学に対する評価(一九三〇年代から二〇二〇年代)
第二部 カイ・フン後期作品を読む(1938-1946)
第四章 植民地主義/国民国家の幻想からの解脱──『ハィン』と『幼き日々』──
第五章 失われた「読み解き」の鍵──投獄経験から生まれた『清徳』──
第六章 全体主義への警告──日仏共同支配期の児童書『道士』を読む──
第七章 敵/味方の垣根を乗り越える(1)──植民者を描いた二作品──
第八章 敵/味方の垣根を乗り越える(2)──「内戦」を描いた「月光の下で」──
終 章 コロニアル状況におけるナショナルな苦悶
付録
付録1 ベトナムにおけるドストエフスキー受容
付録2 『清徳』梗概
付録3 『道士』梗概
付録4 「月光の下で」抄訳
付録5 年表
付録6 カイ・フン著作リスト
付録7 『ベトナム』『正義』に掲載されたカイ・フンの文学作品