シュレーディンガー詩集 恋する物理学者
出版社: 書肆侃侃房
- 静かに満たされて眼を閉じる
時は止まり、すべての願いは沈黙する
そして広大な静寂の空間に溶けてゆく
しかしあなたは、遥かなる境界に目をひらく
エルヴィン・シュレーディンガー(1887-1961, Austria)が詩集を一冊残していることを知ったのは、詩を書き始めた頃でした。波動力学をつくり上げ、ポール・ディラックとともにノーベル賞を受けた物理学者でありながら、詩集を一冊残しているという事実。濃いコーヒーやお酒を嗜むような心持ちで、彼の詩情を楽しむことができたように思います。二度の世界大戦を越え、激動の人生を歩んだシュレーディンガーの作品は、一篇のなかでさえ、起伏に富んでいます。
――訳者あとがきより - Ⅰ章
かくまわれて—Geborgen
若い愛—Junge Liebe
憧憬—Sehnsucht
影—Schatten
寓話あるいは放物線—Parabel
六月—Juni
恋のうた—Liebeslied
もうひとつの—Ein Anderes
第三の—Ein Drittes
蝶—Der Schmetterling
年月は去る—Die Jahre gehen
出会い—Begegnung
燃える灰—Glühende Asche
時と幸運—Zeit und Glück
なぜならば∵—An∵
仮面舞踏会—Kostümball
十月、メラーノにて—Oktober in Meran
失望—Der Enttäuschte
疑い—Der Zweifelnde
恋する詩人たち—Amantibus Poetis
あなたはわたしの全てを—Du hast mich ganz
忘我—Entrückung
チューリヒ—Zürich
白鳥—Schwäne
九月半ば—Mitte September
報われる—Lohn
予感—Ahnung
Ⅱ章 IN ENGLISCHER SPRACHE
恋する者の秘密—The lover in Search of a Confidant
祈り—Prayer
いつかきみは—I Wonder
愛のため息—A Love Sigh
いつかもしかしたら—Could it be?
海辺で—On the Shore
妖精—Faery
あとがき