メメントラブドール
出版社: 筑摩書房
- 私には幾つか顔がある。裏アカ男子、男の娘キャスト、院卒若手正社員――新宿区在住20代♂の令和五年。第40回太宰治賞受賞作。
- 私には幾つか顔がある。裏アカ男子、男の娘キャスト、院卒若手正社員――ペルソナたちがハレーションする新宿区在住20代♂の令和五年。第40回太宰治賞受賞。
- 新宿区在住●20代●裏アカ男子♂の令和五年
形のない「私」を言葉で照らし出す著者の狂いのなさに、
読む者は狂い出しそうになるだろう。
事件は起こらない。しかしこの小説の誕生は事件だ。
――金原ひとみ
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なにもかも守れていないから
私のところに来るんじゃないの。
「私」にはいくつか顔がある。マッチングアプリでノンケの男を釣って喰っては「たいちょー」として行為シーンを裏アカに上げ、平日昼間はSIer企業の院卒若手正社員「忠岡」として労働しながら、新宿区住まいの家賃のために「うたちょ」の姿で男の娘コンカフェのキャストとして立つ元“高専の姫”ポジション――ペルソナたちがハレーションする、どうしようもない人間のどうしようもない梅雨明けまでの一ヶ月。