本の身の上ばなし
出版社: 筑摩書房
- 盗作騒動、脱走兵だった作家……。江戸の昔から昭和まで、数奇な運命をたどった書物と携わった人の知られざる逸話を紹介する。文庫オリジナル。
- 「有為転変は人の世の習いだが、書物にも数奇な運命がある。本の身の上は、本にかかわる人の物語でもある」(本書より)。
高倉健のご先祖様が書いた本、脱走兵だった作家・里村欣三、井上ひさしの父親が書いた小説、批評家も騙された贋作目録、偽書にのめり込む者……。意外な人の意外な本、1冊の本の陰に隠されたドラマなど、書物と人間とをめぐる56話。
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目利きの珍書屋 商売一徹転べど起き上がる
お記録本屋 江戸の出来事 細大漏らさず
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艶本出版王の別の顔 珍記事収集 民衆意識を探る
川路聖謨と柳虹 性の話題もおおらかに
奈良奉行と天才少女 大人あしらう才気 一同驚く
川路聖謨の妻さと 江戸一の美人 歌にも秀でる
発禁本と時勢の変化 権力者は加虐被虐を嫌う
多才な作家木村毅 旺盛な好奇心 軍隊生活描く
兵営から逃げた男たち 愛児を思い自首を決める
軍と歩いた作家里村欣三 戦争絵本手がけ比島に死す
反戦作家の遺書 親友に託した「軍隊日記」
書込みにそそられて 旧蔵者の率直な批評楽しむ
詩集を贈って征った人 「珠玉の歌」に込めた思い
戦友の歌を受け継ぐ 特攻隊員から中学生まで愛唱
雑誌付録繁盛記 アッと驚く厚さ豪華さ
薩摩の学生 辞書を編む 英語初心者向けの工夫満載
龍馬の密使 戯曲を執筆 フランスで上演 大評判に
すぐに出た関東大震災本 九死に一生の体験談
楚人冠全集の「きき目」 「稲むらの火」人物伝を収録
香典代わりのリレー小説 五十五人が連載、遺稿集の「付録」に
「事実は小説より」の出典 バイロンの言葉、明治期には紹介
愛すべき漫画の思い出 落丁騒ぎや作者との交流
「化け込み」の女性記者 奔放な恋愛、人生も七変化
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身近に感じられる