タイ民主化と憲法改革

タイ民主化と憲法改革

出版社: 京都大学学術出版会
著者: 外山 文子
  • 立憲主義を謳って制定された憲法が強化した司法が,民衆の要求を抑え民主主義を破壊する。現代政治のパラドックスを鋭く抉り出す佳作
  • タイの近代政治は苦難の歴史であった。立憲革命以降,実にクーデターが13回,その都度憲法が破棄され新憲法が制定された。本来,立憲主義は民主主義の「質」を高めるために導入されるはずである。しかし新興国では,それが大衆による政治的要求を抑え込むために導入されている。大衆のパワーが既得権益層の危機感を煽り,「立憲主義」の名を借りて強化された司法が民主主義を脅かしているのである。立憲主義を謳って制定された憲法が民主主義を破壊する,現代政治のパラドックスを鋭く抉り出す。
  • プロローグ 民主主義への不信感は民主主義の限界なのか?
    序章 タイ民主化を問う意義
    1 なぜ今,民主化が問われるのか
    2 理論的視座―立憲主義への再注目と政治の司法化
    3 立憲主義と民主主義:タイ公法学者の論争
    第1部 1990年代以降の憲法改革:契機と意図
    第1章 二つの憲法―1997年憲法と2007年憲法―
    1 タイ民主化と憲法の歴史―1932年立憲革命から1991年クーデタ
    2 憲法改革の起点―争点の変化
    3 1997年“人民”憲法制定の背景と理念
    4 2006年クーデタと2007年憲法制定
    5 1997年憲法と2007年憲法―民主化と非民主化?
    第2章 政治改革運動再考―タイ「立憲主義」とは何か―
    1 アモーンの「立憲主義」
    2 民主主義発展委員会の構想
    3 1997年憲法起草委員会
    4 2007年憲法起草委員会
    5 大衆への恐怖と憲法擁護規定
    第2部 憲法改革と民選権力
    第3章 憲法改革と執政権
    ―タイ憲法における“国の基本政策方針”の政治的意味―
    1 タイ国内における「国の基本政策方針」に関する議論
    2 タイ憲法における「国の基本政策方針」の変遷
    3 内閣(執政権)への影響―施政方針演説の変化
    4 タイ憲法「国の基本政策方針」の特徴
    5 民主主義を抑え込むタイ立憲主義
    第4章 憲法改革と立法権
    ―抑え込まれるタイ立法権 選挙制度改革の分析―
    1 1991年憲法の改正:選挙制度改革の始まり
    2 1997年憲法・2007年憲法による選挙制度改革
    3 1998年政党法・2007年政党法の特徴
    4 1998年選挙法と2007年選挙法の特徴
    5 選挙制度改革がもたらした結果
    6 政党と選挙を破壊する法改正
    第3部 憲法改革と非民選権力
    第5章 憲法改革と汚職取締り
    ―汚職の創造:法規定と政治家批判―
    1 汚職の法的定義の変遷
    2 汚職取締り状況と問題点―資産負債虚偽報告
    3 汚職取締り状況と問題点―利益相反
    4 汚職の「可能性」による取締り
    第6章 憲法改革と司法権
    ―憲法裁判所と憲法に基づく独立機関の制度的問題―
    1 機関設立の経緯と制度改正
    2 1997年憲法―独立機関パッケージの登場
    3 2007年憲法―独立機関パッケージの強化・拡大
    4 憲法裁判所・独立機関に対する検査
    5 憲法裁判所・独立機関による取締り
    6 裁定の中立性・公正性
    7 独立機関パッケージと「法による独裁」
    第7章 憲法改革と「非民選」立法権
    ―2007年憲法と上院 その新たなる使命―
    1 上院議員の人選制度
    2 上院議員選挙および任命の結果分析
    3 上院の権限の変化
    4 憲法改正をめぐる争い
    5 憲法裁判所判決と2014年クーデタ
    終章 タイ民主化と憲法改革
    1 タイ国民に与えた影響
    2 二つの憲法への評価とタックシン
    3 タイ民主主義と国王
    4 得をしたのは誰か
    5 タイ「立憲主義」「法の支配」の民主化への影響
    エピローグ 2017年憲法を巡る攻防とタイ民主化の未来
    1 新憲法起草の目的
    2 二つの憲法草案の比較
    3 国民投票とワチラーロンコーン国王による修正指示
    あとがき
    初出一覧
    参考文献

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