日本の家族と戸籍

日本の家族と戸籍

出版社: 東京大学出版会
著者: 下夷 美幸
  • 戦後,家族単位(=「夫婦と未婚の子」)の戸籍制度が成立し,人びとは今もなお戸籍の制度と意識に振り回され続けている.制度導入に関わった法学者や法務官僚の「回顧談」,新聞の「身の上相談」の記事を通して,戸籍と家族から日本社会を再考する.
  • 第1章 戸籍の何が問題なのか
    1 戸籍とは――個人の生涯にわたる身分証明
     (1)戸籍・戸籍謄本・戸籍抄本
     (2)戸籍謄本の使いみち
     (3)戸籍の編製単位
    2 戸籍と家族の結びつき――明治から戦後までの戸籍法
     (1)明治政府と戸籍
     (2)身分登記制度の導入
     (3)身分登記制度の廃止
     (4)「家」制度の廃止と新戸籍法
     (5)親族単位の一貫性
    3 戸籍の単位をめぐって――家族単位か,個人単位か
     (1)家族単位と「婚姻家族」規範
     (2)家族単位の擁護論
     (3)個人単位の擁護論
     (4)個人単位の理想と現実
    4 家族単位の戸籍を問う――本書の課題
    第2章 「家族単位」という選択――民法・戸籍法改正案起草委員・幹事の「回顧談」から
    1 「夫婦と未婚の子」という妥協点――「家」と「個人」の中間
     (1)起草委員会案までの流れ
     (2)「家」単位の提案とその修正
     (3)個人カード方式の不採用
    2 民法学者・我妻栄の着眼点――公証ツールとしての機能性
     (1)戦後改革に対する自問
     (2)個人カード方式の可能性
    第3章 「家族単位」成立の時代性――法務官僚の「回顧談」から
    1 司法省事務官・青木義人のスタンス――最小限度の法改正
     (1)現場重視の考え方
     (2)当時の戸籍事務
    2 改正作業の過程――難題と緊急事態
     (1)心血を注いだ改正作業
     (2)民法応急措置法に伴う緊急対応
    3 GHQ提案に対する抵抗――家族単位の死守
     (1)東京一極管理の拒否
     (2)個人単位の拒否
    4 青木義人の戸籍観――人々の生活に直結する制度
    第4章 戸籍と格闘する人々――婚外子にまつわる「身の上相談」から
    1 虚偽の出生届――戸籍の「汚れ」という観念
     (1)配偶者の子としての届出
     (2)親族の子として届出
     (3)婚外子を産む女性のこだわり
    2 嫡出子にする手段の模索――戸籍に翻弄される女性たち
     (1)虚偽の婚姻届
     (2)特別養子縁組
     (3)子の父との婚姻
    3 認知がもたらす葛藤――妻および嫡出子の反発
     (1)戸籍に記載される認知の事実
     (2)認知された子の入籍
    第5章 戸籍の不条理――結婚・離婚・再婚にまつわる「身の上相談」から
    1 結婚と戸籍謄本――身元調査の時代性
     (1)結婚詐欺からの自己防衛
     (2)結婚の障害
    2 嫡出推定にかかる子の籍――現在に至る問題
     (1)離婚成立前の出生
     (2)離婚後300日以内の出生
    3 離婚・再婚と子の籍――家族と非家族の境界
     (1)離婚後の子の籍
     (2)再婚の障害
     (3)連れ子の入籍
     (4)前婚の子の除籍
    第6章 家族政策としての戸籍制度
    1 「家族単位」の選択と作用――意図せざる結果
     (1)公証ツールとしての選択
     (2)「婚姻家族」の規範化
    2 「婚姻家族」の規範化の背景――戸籍謄本の日常性
    3 個人単位へ向けて――失われた視点の回復
     (1)戦後改革の忘却
     (2)家族政策からの脱却
    Family and Family Registry in Japan
    Miyuki SHIMOEBISU

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