古典の未来学

古典の未来学

出版社: 文学通信
著者: 荒木 浩
  • 古典研究にとって、いまは決定的なピンチか、千載一遇のチャンスか。
    古典研究の方向や古典性のありかを広く考察し、新しい古典学を提示しようとする書。
    全44名により、古典研究が近未来の人文学に提示すべき、学際的な意味や国際的可能性を追究した、刺激的で多角的な論集。
    いま誰が何を考え前に進んでいるのか。古典研究の最前線から今後の可能性を問いかけ広げようとする、ヒント満載の書です。
    古典と付き合う全ての人に。
    執筆は、荒木 浩、松平莉奈、中前正志、上野友愛、石上阿希、土田耕督、屋良健一郎、前島志保、グエン・ヴー・クイン・ニュー、平野多恵、山藤夏郎、野網摩利子、河東 仁、河野貴美子、岡田圭介、竹村信治、飯倉洋一、渡部泰明、渡辺麻里子、中野貴文、呉座勇一、山本陽子、楊 暁捷、深谷 大、齋藤真麻理、三戸信惠、前川志織、金容儀、ヴィーブケ・デーネーケ、河野至恩、ゴウランガ・チャラン・プラダン、李 愛淑、エドアルド・ジェルリーニ、アンダソヴァ・マラル、ダニエル・シュライ、和田琢磨、谷口雄太、亀田俊和、井上泰至、伊藤慎吾、合山林太郎、葛 継勇、稲賀繁美、ガリア・ペトコヴァ(執筆順)。
  • 序論 〈投企する古典性―Projecting Classicism〉から「古典の未来学」へ[荒木 浩]
    一、研究の現在と消えゆく未来─コロナ禍と『なぐさみ草』
    二、『なぐさみ草』の投企性から〈未来学〉へ
    三、〈投企=Projecting〉する古典性とは
    四、本論集の企画と構想 五、「古典の未来学」へ
    Ⅰ 投企する古典性
    第1部 古典を見せる/古典を活きる
    1—1 古典を見せる―展示という方法
    第1章 女子大で古典を展示するということ―実践報告とそれに基づく若干の考察[中前正志]
    一、はじめに
    二、古典籍展示履歴
    三、見られてなんぼの展示
    四、わたし、ふじのちゃん。
    五、京女に久米の仙人が落ちてきた!?
    六、あることないこと二人の会話をでっち上げる
    七、おわりに
    第2章 美術で楽しむ古典文学―「徒然草」展の事例報告[上野友愛]
    一、はじめに
    二、企画の経緯
    三、海北友雪筆「徒然草絵巻」の展示
    四、現代語訳の作成
    五、来館者からの声
    六、おわりに
    Column 1
    文化をつなげる場としての展覧会
    ―ロンドン大学SOAS大英博物館の国際共同研究プロジェクトを事例として[石上阿希]
    一、はじめに
    二、国際共同プロジェクト
    三、国際春画研究プロジェクトの場合
    四、大英博物館春画展のその後
    1—2 古典を活きる―韻文の創作とその展開
    第3章 即興と記憶—中世和歌連歌における「擬作」「本歌」「寄合」をめぐって[土田耕督]
    一、序
    二、「擬作」と本歌取─和歌における即興性:〈予見/準備〉としての記憶
    三、本歌取と「寄合」─連歌における即興性 ①:詞の〈自動補完〉プログラム
    四、「当座の感」と「心付」─連歌における即興性 ②:〈表現〉という反応
    五、結 〈随意〉創作の位置
    第4章 琉球における和歌の受容と展開[屋良健一郎]
    一、はじめに
    二、琉球人の和歌習得
    三、近世琉球人の作品
    四、和歌と琉歌
    五、琉球人と和歌
    六、おわりに
    第5章 世紀転換期日本および西洋における俳句の詩的可能性の拡大―出版、翻訳、再評価[前島志保]
    一、「俳句」理解への取り組みの世界同時性
    二、従来の俳句鑑賞の継承
    三、新しい俳句鑑賞傾向・1─デノテーションの復権
    四、新しい俳句鑑賞傾向・2―作者の感情表出として
    五、新しい俳句鑑賞傾向・3─コノテーションへの注目
    六、拡大される俳句の詩的可能性
    第6章 教科書から実践的な俳句学まで[グエン・ヴー・クイン・ニュー]
    一、はじめに
    二、古に学ぶから今を生けるまで
    三、豊かな言葉文化論の地位づけ
    四、新しく面白い俳句学
    五、まとめ
    Column 2
    時をかける和歌―おみくじと占い[平野多恵]
    一、はじまりは、短大の授業
    二、室町時代の和歌占い─阪本龍門文庫蔵『歌占』の実践
    三、江戸時代の和歌占い―『晴明歌占』の実践と展開
    四、「天祖神社歌占」―神社と大学の合同プロジェクト
    五、おわりに─和歌を生きる
    第2部 投企する古典性/古典との往還
    第7章 身を投げる/子を投げる―孝と捨身の投企性をめぐって[荒木 浩]
    一、捨身の投企性─清水の舞台を発端に
    二、薩埵王子「捨身飼虎」と雪山童子「施身聞偈」の類比とずれ
    三、『三宝絵』上巻の本生譚が描く生と死
    四、孝と捨身と死の描写
    五、「孝」思想と死なない子
    六、身を投げる?子を投げる?─仏陀の妻と一子
    七、『金光明最勝王経』の虎と義母
    第8章 透明な声、隔たりの消失―古典世界において〈一つ〉の世界はいかに想像されたか[山藤夏郎]
    一、序
    二、一つの声の分裂という歴史像
    三、文字以前の理想化─「太古」表象のパターン
    四、文字の原理─「分ける」ということ
    五、「太古」の世界では動物とも意思の疎通が可能だった?
    第9章 古代からの道行き―『行人』[野網摩利子]
    一、はじめに
    二、古代の悲恋をふまえて
    三、約束の再設定と違反
    四、嵌められた物語への抵抗
    五、古代歌謡による小説の加速
    第10章 『豊饒の海』縁起絵—『浜松中納言物語』、夢と転生、そして唯識思想[河東 仁]
    一、はじめに
    二、『春の雪』
    三、『奔馬』
    四、『暁の寺』
    五、『天人五衰』
    六、縁起論
    七、おわりに
    第11章 北京人文科学研究所の蔵書から考える「投企する古典性」[河野貴美子]
    一、はじめに
    二、『北京人文科学研究所蔵書目録』及び『続目』にみる古典籍の蒐集と研究
    三、『北京人文科学研究所蔵書目録 再続』にみる典籍の蒐集
    四、おわりに
    Column 3
    出版社の立ち上げと、これから[岡田圭介]
    一、二〇一七〜一八年
    二、二〇一九年
    三、二〇二〇年
    四、学術メディアとして
    【付】貸借対照表及び損益計算書
    第3部 古典を問う/古典を学ぶ
    第12章 「投企」のカタチ―教室の「古典」[竹村信治]
    一、はじめに
    二、「古典は本当に必要なのか」
    三、古典?
    四、「投企」のカタチ─その前に
    五、おわりに
    第13章 未来に活かす古典―「古典は本当に必要なのか」論争の総括と展望[飯倉洋一]
    一、はじめに
    二、古典不要派の主張
    三、古典不要派の主張1 優先度
    四、古典不要派の主張2 芸術科目
    五、古典不要派の主張3 現代語訳
    六、古典不要派の主張4 ポリティカルコレクトネス
    七、国語力の一部としての古文・漢文
    八、古典知の可能性
    九、資本としての古典
    一〇、おわりに─遺産としての古典 
    第14章 古典を必修にするために[渡部泰明]
    一、問題のありか
    二、基礎科目としての古典
    三、リテラシーを育成する科目としての古典
    第15章 くずし字を知ること―日本古典文学の基礎学を考える[渡辺麻里子]
    一、はじめに
    二、弘前におけるくずし字普及活動
    三、くずし字の伝え方
    四、古典文学の基礎学
    五、おわりに―現代人にとっての古典
    Column 4
    古典との出会い方[中野貴文]
    一、―月が綺麗ですね―
    二、―今、あなたと同じ月を見ている―
    三、―さらば愛しき古典よ―
    四、―古典文学を自由化する―
    Column 5
    宣伝される大衆僉議―中世一揆論の再構築[呉座勇一]
    一、はじめに
    二、強訴とは何か
    三、強訴の呪術性
    四、大衆僉議は神秘的か
    五、豪雲説話を読みなおす
    六、大衆僉議の宣伝性
    七、おわりに
    第4部 古典を観る/古典を描く
    第16章 筍と土蜘蛛―古典がジャンルを越えるとき[山本陽子]
    一、はじめに
    二、豊国祭礼図屛風のタケノコ
    三、孟宗はどこか
    四、さまざまな孟宗
    五、異色だらけの「土蜘蛛草紙絵巻」
    六、東博本の化物たち
    七、東博本の詞書
    八、東博本が典拠としたもの
    九、東博本の典拠の制約
    一〇、人形芝居ならば
    一一、人形芝居と東博本
    一二、ジャンルを越えて広がるとき
    第17章 頼光の杖―混沌にして豊穣な絵巻模写の世界へ[楊 暁捷]
    一、鬼が岩屋への道
    二、模写ということ
    三、諸本を探る
    四、模り写すことの限界
    五、多様な展開
    六、変化が物語るもの
    七、模写を読み解く
    第18章 語り物文芸の視覚化―説教源氏節の性格と意義[深谷 大]
    一、はじめに
    二、説教源氏節の名称
    三、説教源氏節の創設者
    四、新内節・説経節・説経祭文
    五、説経節の大衆化
    六、草創期の説教源氏節
    七、草創期の人形遣いと人形戯
    八、明治初頭の岡本諸座
    九、明治一五年頃の岡本諸座
    一〇、説教源氏節芝居
    一一、一座の構成と入場料 
    一二、説教源氏節(芝居)の伝播
    一三、説教源氏節の音曲としての性格
    一四、娘義太夫への対抗意識
    一五、明治三四、三五年頃の岡本諸座
    一六、結び
    第19章 故事を遊ぶ―「戯画図巻」という文芸[齋藤真麻理]
    一、「戯画図巻」の登場
    二、室町物語と「戯画図巻」―『富士の人穴の草子』
    三、当代性の反映―「戯画図巻」観音の射的
    四、明代版本の受容―張果老のすがた
    五、むすびに代えて
    第20章 風景を捉える川合玉堂の眼差し―大衆性と同時代性と[三戸信惠]
    一、 川合玉堂と「大衆性」
    二、 明治二八年の「鵜飼」─山水画の構図、名所絵版画の視点
    三、 明治三九年の「渓山秋趣」─『日本名山図会』の眼差しを求めて
    四、 大正三年の「駒ヶ岳」─『日本風景論』が提示した新たな眼差しの枠組み
    五、 昭和期の動向─写真との関わり
    第21章 洋画家・岸田劉生の初期の制作にみる古典性の投企―美術の複製メディアを手がかりに[前川志織]
    一、はじめに
    二、明治後半期から大正初期にかけての複製による美術の受容
    三、劉生の初期の制作と複製としての美術
    四、おわりに
    第22章 柳田國男『遠野物語』の「戦争物語」への変奏―村野鐵太郎監督の映画「遠野物語」を中心に[金 容儀]
    一、はじめに
    二、特化される「オシラサマ」伝承
    三、映画「遠野物語」の民俗世界
    四、娘と馬の幻想的な「悲恋物語」
    五、「遠野物語」から「戦争物語」への増幅と変奏
    六、おわりに
    第5部 古典を展く/古典を翻す
    第23章 「日本文学史」の今後一〇〇年―『日本「文」学史』から見通す[ヴィーブケ・デーネーケ×河野貴美子]
    一、「国文学」のパラダイムを問い直す
    二、『日本「文」学史』の構想と構造
    三、『日本「文」学史』第三冊「文」から「文学」へ─東アジアの文学を見直す The Path from “Letters” to “Literature” :A Comparative History of East Asian Literatures の挑戦
    四、『日本「文」学史』からの展望
    五、二一世紀の人文知とは─世界の古典学から考える The Humanities in the 21st Century: Classical Studies in and for the World
    Column 6
    投げ出された言葉を繋ぎ止めるために―翻訳の準備的作業としての「概念史」[河野至恩]
    一、「投企」と翻訳
    二、「投げ出された言葉」の翻訳論
    三、翻訳の方法と「概念史」
    四、翻訳の準備的作業としての概念史―二つのモデル
    第24章 投企された「英訳方丈記」―夏目漱石の「作家論」から「天才論」へ[ゴウランガ・チャラン・プラダン]
    一、はじめに
    二、「投企」という概念について
    三、「英訳方丈記」にみる漱石の作家論
    四、「英訳方丈記」の作家論の形成について
    五、投企された「英訳方丈記」の作家論
    六、終わりに向けて
    第25章 古典の翻訳―大衆性と視覚性を問う[李 愛淑]
    一、はじめに
    二、大衆性を問う
    三、視覚性を問う
    四、世界文学として
    Column 7
    投企する文学遺産―有形と無形を再考して[エドアルド・ジェルリーニ]
    一、古典性という「価値」
    二、文化遺産から文学遺産へ
    三、有形と無形の相互投企
    四、現代を相対化する文学遺産
    第6部 古典と神話/古典と宗教
    第26章 古事記の〈天皇像〉―「詔」の分析をとおして[アンダソヴァ・マラル]
    一、はじめに
    二、オホクメと神武の求婚
    三、天皇と出雲の神々
    四、気比大神
    五、景行天皇とヤマトタケル
    六、目弱王と忍歯王
    七、結論─「詔」からみる古事記の天皇像
    第27章 一三世紀の失敗した宗教議論―『広疑瑞決集』の政治議論を中心に[ダニエル・シュライ]
    一、『広疑瑞決集』 の議論はなぜ失敗したのか
    二、議論の失敗の原因は何か
    三、宗教的な議論
    四、政治論の背景
    五、政治の議論
    六、引用文の確認
    七、解決失敗の理由についての一考
    Ⅱ 特論―プロジェクティング・プロジェクト
    第1部 「投企する太平記―歴史・物語・思想」から
    第1章 点描 西源院本『太平記』の歴史―古写本から文庫本まで[和田琢磨]
    一、はじめに
    二、元禄二年─『参考太平記』の作成
    三、大正八年三月─〈影写本〉の作成
    四、昭和一〇年五月二五日─刀江書院本刊行の背景
    五、平成二六年─岩波文庫本刊行開始
    六、おわりに
    第2章 「太平記史観」をとらえる[谷口雄太]
    一、はじめに
    二、「太平記史観」を定義する
    三、それが「太平記史観」だと気付くまで
    四、「太平記史観」批判の現在
    五、「太平記史観」超克の未来
    六、おわりに
    第3章 『太平記』に見る中国故事の引用[亀田俊和]
    一、はじめに
    二、中国故事引用の頻度・分布
    三、大規模引用の意図
    四、観応の擾乱期における大規模引用の検討
    五、『太平記』の編纂過程と中国故事引用
    六、おわりに
    第4章 『太平記』の近世的派生/転生―後醍醐・楠像を軸に[井上泰至]
    一、はじめに─足利将軍木像の梟首
    二、歴史読み物としての『太平記』の派生書─その様式の変遷から
    三、後醍醐天皇像─失政者はいつ理想の天皇となったのか
    四、楠像の変遷─諫臣から忠臣へ
    五、史学とは「史料」を使った投企的読みではないのか?
    第5章 以津真天の変容―〈創作的解説〉の時代を中心に[伊藤慎吾]
    一、『太平記』中の妖怪記事
    二、前近代の以津真天
    三、現代の以津真天
    四、創作的解説
    五、いつまでんの誕生
    六、〈世界〉から乖離したキャラクター
    七、不必要な情報共有
    八、おわりに
    第2部 「日本漢文学プロジェクト」から
    第6章 「和漢」型の漢詩詞華集の流行と近代日本における古典の教養―結城蓄堂『和漢名詩鈔』と簡野道明『和漢名詩類選評釈』[合山林太郎]
    一、はじめに
    二、「和漢」型の漢詩詞華集の性質
    三、中国・日本の詩をともに載せることの意義と背景
    四、注解・訓読の付与と独自の書型
    五、前代の漢詩文化とのつながり
    六、勧学の詩の重視とその背景
    七、辺塞詩の収載と日露戦争の記憶
    八、おわりに
    第7章  元号「令和」—時間の表象と政治の隠喩[葛 継勇]
    一、はじめに
    二、「梅花の歌」序の出典
    三、元号の選定と出典
    四、『万葉集』の性格
    五、元号にみられる隠喩的な時間
    六、おわりに
    Ⅲ Projecting Classicism in Various Languages
    Chapter 1
    “Distance Reading, Migration of the meaning and Metempsychosis through Translation: Is “World Literature or Global Art” Possible? ―Comparative Literature and Art in the Context of the Globalization —”[稲賀繁美]
    Chapter 2
    “Projecting Classicism in Classical Kabuki Theatre ― A Gender Perspective”[ガリア・ペトコヴァ]
    あとがき
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