詩文集 独りの偵察隊
出版社: 書肆侃侃房
- ダライ・ラマ一四世と八万人の亡命から六十年
インド生まれの亡命チベット人二世が詠う魂の詩文
FREE TIBET
ラダックからは
チベットがチラッと見える
ドゥムツェの黒い丘が見えたら
そこからチベットだよ
初めて祖国を見たとき
大地の匂いを思いきり嗅いだ
土をしっかり握りしめた
編訳者覚書
詩
独りの偵察隊
ラダックからは
チベットがチラッと見える
人は言う
ドゥムツェの黒い丘が見えたら
そこからチベットだよ
初めてぼくが我が祖国チベットを見たときのこと
急がねばならぬ密かな旅の途中
その盛りあがった丘に立った
大地の匂いを思いきり嗅いだ
土をしっかり握りしめた
乾いた風と野生の老いた鶴の声に
耳を澄ませた
国境などどこにも見えない
誓って言うが、そこには何もない
変わったところなどないのだから
あそことここの違いなど
ぼくには分からないよ
人は言う
毎年、冬になると、キャン(野生のロバ)がやって来ると
人は言う
毎年、夏になると、キャンは戻っていくと - 序文 ツェリン・オーセル
I 詩篇
地平線
ロサル
独りの偵察隊
絶望の時代
ぼくのチベット人としての本懐
亡命者
ぼくはテロリスト
ムンバイのプゥパ
うんざりだ
ダラムサラに雨が降る時
ペドロの横笛
亡命者のわが家
ぼくのタマネギを探して
国境をくぐり抜ける
廃墟のつぼみ
まっ白に洗って
ぼくはどこかでぼくのロサルをなくした
激雷が大地を揺るがす
いかに歩いたか
蜘蛛の巣
芽生え
II 詩文
抵抗―違いを祝福しあう―
ぼくの美しき女神ゼデン・ラモ―想像と現実のチベット―
ぼくにとっての亡命
なぜ、ぼくはさらなる足場や塔に登ろうとするのか?
コルラ(右繞) ―生生不息―
ぼくのムンバイ・ストーリー
ギャミ―中国人のイメージ―
ぼくらのインドにおける実体験
ラマの民主主義
インドの警棒とインドのロティ―ぼくらのアクティビズムを評価する―
ぼくは生まれながらの亡命者―著者へのインタビュー―